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王神愁位伝 第2章【太陽の泉】 第14話

第14話 参謀本部所属 地方庁

ーー前回ーー

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太陽族は巨大な3つの組織で成り立っている。

戦争の戦力。武力を司るセカンドの集団、軍部ぐんぶ
医療や武器、ことわりの追及。太陽族が誇る技術者集団、研究部けんきゅうぶ
そして、太陽族全体の統括・統制。太陽族の頭脳となるエリート集団、参謀本部さんぼうほんぶ

太陽族組織図



参謀本部はプライマルの中でも、一握りの選ばれし者・・・・・・・・・が所属する組織である。
”能力・人脈・財力”
この3つが揃っていなければ、この組織に属することは到底難しい。

その参謀本部の傘下に所属するのが、中央庁・地方庁・学部庁の3つの機関だ。
その中の地方庁・・・は、シャムス・ソール・アテン・タイヤンの各地方ごとに拠点を構える組織だ。この広大な太陽族領地を治めるため、地方ごとに分かれ、統括している。
そして、各地方庁を取り纏めていくのがその上の中央庁である。
中央庁は太陽城を拠点とし、各地方庁から上がってくる報告などを参考に、太陽族全体に関わる重要事項を判断・決定していく。

各地方庁は、そんな中央庁と地方の円滑なコミュニケーションを行うための重要な役割も担っているのだ。

その地方庁のトップが地方庁長
庁長は勿論、参謀本部の人間である。
能力・人脈・財力を兼ね備えた優秀な人材が選ばれる・・・はずである。

「「あなた/あんさんがシャムス地方庁の庁長?!?」」
「あはは・・・うん。まあ、一応。」
いたるがシャムスの地方庁長と聞いて、驚くココロと洋一。
あまりの驚きように、いたるは恥ずかしそうに骨が浮き出ている頬をぽりぽりかいた。

「なんでそんなに驚いてるの?」
あまりの驚きように、毛布に包まった琥樹こたつの背中をさすりながら幸十が聞いた。

「いや、だって!知ってるかサチ!地方庁って、あのドロドロギッドギドの参部さんぶ所属なんやで!?そこにいる奴らはな、そりゃ自分の利益ばっか考えとるしょうもない奴らばっかりなんや!こんな郊外で皆笑わせるために馬鹿げた格好したおじはんが、その地方庁、ましてや庁長って。似合わなすぎやろ!突然変異か!?」
幸十に熱弁する洋一の言葉に、那智が思いっきり笑った。

「がっはっはっはっ!!!なんだお前ら。本部で参謀本部 やつらに虐められたくちか?」
那智の言葉に、ココロは何やら視線をそらした。

「いいかサチ。本部に帰っても、参部さんぶの奴らだけは目を合わせたらあかん。口も聞いたらあかん。サチは空気よめんたちやから、関わったら面倒になるだけや!」
「おいおいオレンジの坊主、貶されてるぞ。」
洋一が必死に幸十に言い聞かせると、よく理解していないまま幸十は素直に頷いた。

「お前たちは何で首都に行きたいんだ?本部の人間なんだろう?」
荷物整理をしていた風季が手を休め聞いた。

「まぁ、シャムスに来たのはまた別の理由があるんですが・・・シャムス軍の軍隊長に渡す物があって首都に寄りたいんです。」
「えっと・・・君たちは本部から来たんだよね?琥樹も?」
奥でうなされている琥樹こたつを見ながら、いたるが聞いた。

「そやで?」
洋一の回答に腑に落ちない様子のいたるに、風季が口を開いた。

「本部はいつの間にセカンドを置くようになったんだ?太陽城は安全だからセカンドは必要ないと、あれほど参謀本部が主張していたじゃないか。」
「あれ、あんさんら知らんのか?俺たちは新しく新設された太陽族本部の調査部隊や!」
「調査部隊?」
眉をひそめるいたるを、ココロは何やら探るように見た。

「・・・はい。セカンド数人と元研究部の戦術班・・・・・・・・を組み合わせた太陽王直下の新組織です。まぁ・・・もう出来て3年くらいは経ちますけどね。」
その言葉に、いたるは何やら思い出したように両手を叩いた。

「ぁあ!コウモリと呼ばれてる謎の部隊か!いやぁ、参部からは、洞窟のコウモリみたいにぶら下がってるだけの部隊ってことしか聞いてなかったから・・・君たちだったか!」
その言葉に、思いっきり笑い出す那智や風季。
ペポとラビも、ケタケタお腹を抱えて笑った。

「ぇえ、はい。コウモリでいいです。はい。」
「なんや!!コウモリも飛べるんやで!!?」
言い返す洋一の隣で、慣れたのか言葉を返すことも面倒そうにするココロ。

「いやぁ、ごめんごめん。別に馬鹿にしようと・・・くくっ・・・ゴフォっ!」
「笑うんだか、血を吐くんだか、どっちかにしてください!!」
「い・・いや・・・すまないね。ゴフッ・・・」
弱々しく血を拭くいたる
依然笑っているサーカス団員たちを見て、ココロはふと聞いた。

「貴方たちは・・・何の集まりなんですか?色々な事情を抱えていることは分かりましたが。何故シャムス地方庁長の貴方がここに?みなさん地方庁の人々には見えませんが・・・」
ココロの問いにいたるがクスッと笑った。

「そうだね。少なくともここには地方庁の職員はいないよ。僕だけだ。皆んなはイタルアサーカス団の団員だ。」
「サーカス?」
「・・・こんな世の中だろう?しかもこのシャムス地方は曇りが多く、僕らの根源でもある太陽に顔を合わせることも少ない。結構気持ちが塞がりやすい土地だ。」
いたるはソリから雪景色が続く外の風景を見た。

「食物とかも取れにくい。皆んなこのシャムスに住む誇りが少ないんだ。だから、少しでも気持ちを晴らしてほしくてね。僕らは娯楽を提供する集団ってところさ。・・・あと、ちょっと探しもの・・・・があってね。」
弱々しく微笑むいたる
骨張った頬は何とも痛々しかった。

「団員は、風季、那智、榛名。あと、ペポ、ラビ。そして、この間入ったアカリ。動物たちを含めて十数ってくらいの規模の集まりだ。」
「そや、そのアカリってフード被った子もセカンドか?なんや、不思議な黒い霧みたいなもん出してたやろ?」
「あ・・・ぁあ、それは・・・」
いたるは立ち上がり、箱をゴソゴソとなにか探し始めた。

「あ、あったあった。」
取り出したのはー
"プシュッ"

手のひらサイズの霧吹きだった。
その霧吹きから、黒い霧のようなものが出てきた。

「え、霧吹き?」
「うん。水に黒インクを仕込んだただの霧吹き。アカリはセカンドではないから。ちょっとした仕掛けだよ。あ、これ口外しないでよ?面白みがなくなっちゃうから。」
「へー!色々やりようあるんやなぁ~?すっかり騙されたで。」

洋一が感心していると、その霧吹きを何やらじっと見つめるココロ。
すると、いつの間にかいたるの隣で同じく霧吹きをじっと見るめる幸十がいた。
霧吹きこれ、皆んなを眠くさせるの?

無邪気な瞳で聞く幸十に、ココロは何かを考え始めた。
「なんやサチ、こんなんで眠くなるわけないやろ。」

洋一に言われるも、どこか腑に落ちない様子の幸十。
再び口を開こうとした時ー
"むぎゅっ"
「んん・・・」

「首都はまだですか?」
突然ココロが幸十の口を塞ぎ、会話の内容を変えた。

「え・・・ぁあ。もうすぐだ・・・ほら、もう見えてきた。」
いたるは、ソリの走っている坂道の下を指した。
丸一日、ソリをかなりのスピードで走らせたためか、首都は目前だった。

「うわぁ!!!きらきらや!!」
あたりは短い夜を迎えて暗くなっていたが、首都は多数の明かりで光り、余計にきらびやかに輝いて見える。
首都に近づいても相変わらず雪が積もっていたが、密集した沢山の建物が見えてきた。

あれがこの地方の首都、シャムスだよ。」

周りが豪雪地帯で薄暗い中、色とりどりの光りで輝く首都シャムスは、周りの白い景色と相まって、まるで宝石が沢山積み重なった箱のようだった。


ーー次回ーー

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