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王神愁位伝 第2章【太陽の泉】 第4話
第4話 巨大な雪だるま
ーー前回ーー
ーーーーーー
「・・・お、なんやこれ。」
幸十たちは、降り立った真っ白な大地を10分程度歩いていると、徐々に目指す村がはっきりと見えてきていた。
ーと同時に何かが幸十たちの目の前に現れた。
「これは・・・雪だるまか?」
所々木々があるものの、雪のせいでやせ細っており、この真っ白な大地の視界を遮るほどのものはない。しかし、そんな場所にぽつりと、誰が作ったかもわからない巨大な雪だるまが現れた。
「おっきいなぁ。」
170半ばほどある洋一の背丈でも、見上げるほどの大きな雪だるまだ。幸十も吐き気が止まらない琥樹を支えながら巨大な雪だるまの前まで行くと、観察するようにじっと見つめ始めた。
”じーーーーーー”
「なんか・・・今にも動き出しそう。」
ボソッと呟く幸十。
「・・・ぅう。何言ってるのさっちゃん、雪だるまが動くわけ・・・」
琥樹が顔を真っ青にしながら幸十の呟きに反応した時ー
"ぱくっ!"
「え」
「なっ!?!」
一瞬だった。
巨大な雪だるまが、開くはずのない口を大きく開け、巨大な口で幸十と琥樹をパクリと口に含んだ。
動くはずのない雪だるまが、ひとりでに動いたことに開いた口が塞がらないココロと洋一。
2人が驚いている内に、幸十と琥樹を口に含んだ雪だるまは、ぽんぽんと跳ねながら村に向かって動き始めた。
"ぽんっぽんっぽんっ!"
「え・・・雪だるまが一人でに跳ねとるで。」
フカフカの雪の地面を上手くぽんぽん跳ねていく雪だるまの姿を洋一が呆然と眺めていると、ココロはハッと我に返った。
「っ、洋一!!追うぞ!!」
「え、ぁあ!!」
ココロの呼びかけに洋一も気を取り戻し、ぽんぽん跳ねる雪だるまを追う。
しかし、一面雪に覆われた大地は想像以上に走りづらい。
"ズブ・・ズブ・・・ズブブ・・"
「うわ!これ雪に足持ってかれるで!全然走れへん!」
雪に足が埋まり、中々走れない。
そんな2人を、巨大な雪だるまが振り・・・
"ぷっ"
雪に足をもってかれ苦戦している2人を見て、雪だるまは幸十と琥樹を口に含ませた状態で嘲笑った。
"カッチ―ン"
「きー!!!なんやあいつ!!あの雪だるま、俺ら見て笑ったで?!?なんやあの表情!!」
腹を立てる洋一をよそに、雪だるまはまた村に向かってぽんぽん跳ねていく。
"スッ"
「洋一、このまま走るんじゃ埒があかない。」
ココロも内心相当腹を立てているようだ。
身体中ドス黒いオーラを漂わせながら、コウモリの翼を広げ始めた。その様子に、洋一が表情を明るくした。
「なるほどな!追うのは地面からだけやないな。」
同じく洋一も翼を広げー
"ギュイン!!"
そして飛び出すと、一気に雪だるまに空中から近づく。
ぽんぽん跳ねながら逃げていた雪だるまは、ふと振り返ると怖い形相の2人が空から勢いよく近づいてきたのに気づき、驚きながらスピードを上げた。
”ぽんぽんぽんぽんぽんぽん!!!!”
「おいおいおい!!待ちいや!!逃さへんで!!」
逃げる雪だるまに一気に詰める洋一とココロ。
「コウモリの翼から、逃れられるわけないよ。」
先程まで余裕そうだった雪だるまは、威圧感がとてつもない2人から、半泣き状態で必死に逃げる。
洋一とココロの凄まじい追い上げで、あと少しで雪だるまに触れそうになった時ー
"ぴょこっ!ぴょこっ!ぴょこっ!"
「え」
「うわ!なんやこれ?!」
今度は手のひらサイズの雪だるまたちがどこからともなく発生してきて、巨大雪だるまに触れようとした洋一とココロに飛びついた。それも一体とかではない。
数十・・・いや数百だろうかー。
物凄い勢いで、大量のチビだるまたちが洋一とココロを襲う。
「ちょっ!重い!!」
小さくたって、みんなで集まれば怖くない・・・とでも言うように、どんどん洋一とココロに乗っかっていく。
コウモリの翼は120キロの重さまで耐えられる作りではあったが、どんどんチビ雪だるまたちが飛び乗り限界を超え始めた。
そしてー
"グラッ"
「うわっ!!」
「わわわっ!!あかんでーー!!」
"ドスっ!"
耐えきれず、落下する2人。
不幸中の幸い、大量の雪がクッションになり、衝撃から2人を守った。
2人が落ちた場所は、もう村の目の前。落ちた場所から、チビだるまたちがちょこまかと退散していく。
「いてて・・・」
「ーっ何が・・・」
てんやわんやな2人は、埋もれた雪の中から起き上がると、村の方から何やらくすくす笑う声が聞こえてきた。
「クスクスクスー」
2人が顔を上げると、そこには依然幸十と琥樹を口に咥えた雪だるまが、洋一とココロの方に顔を向け、その周りにチビだるまたちが集まっていた。
しかし、笑い声は雪だるまたちからではない。何やら雪だるまたちの背後から聞こえる。
訳がわからず洋一とココロがじっと見つめているとー
"チラッ"
「?」
巨大雪だるまの背後から、何やら数人の子供たちが悪戯っ子な表情を浮かべ、チラチラと頭をのぞかせていた。
「子供・・・?」
そんな子供たちの頭の中で一つ、どう考えても子供ではない頭がー。
後頭部がつるんと禿げた頭に、目と口の周りと鼻の頭が赤く塗りつぶされた、なんとも異様な形相の男が混ざっていた。禿げた頭に乗せた小さなボールが、なんとも滑稽にみせる。
その赤っ鼻の男は、暫くすると隠れることをやめ、洋一とココロの前に出てきた。
首元はひらひらのレース、お腹を大きく見せるピンクの衣装はより滑稽さを増長させた。
「な・・・なんや・・・?こいつ・・・」
目の前にいる赤っ鼻の男は、驚く2人に何も喋らずニカッと笑顔を見せた。
ーー次回ーー
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