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諦めるな! その一言で、音を上げる人の口を封じられますか? 振り返るな! その一言で…
明かりをすべて消した薄暗い部屋の隅で、ヤマハの黒いアコースティックギターがほこりを被っ…
「僕は緋色が一等好きなんだ」 そんな謎めいた、不思議な短い言葉をあなたは発した。 まど…
ほんの数分ほどの通り雨が去ったあと、色濃く濡れたアスファルトは翼を広げたカラスの模様を…
ふと、あなたの顔が浮かんできました。あなたに会える(といっても、名も知らぬ他人同士です…
零れ落ちるは重い音。 瞬く間、剣を横一線に一振り。刃を交えることなく、あっけなく目の…
夕方、いつも世話をしている、狭い庭に咲く、大切に育てた薔薇たちの中で一輪が欠けていることに男は気が付いた。何者かに手折られたに違いない。刹那に男の目は血走った。 男は視野がひどく狭かった。ところが、怒りの矛先は犯人へと向かわなかった。やぶれかぶれになって誰でもいいから殺してやろうと思った。稀代の殺人犯になって名を残してやる。 ただ、そうしたとき、犯罪者となった自分の両親が不憫でならないと思った男は、まず先に両親を殺すことにした。だが、その前にやることがある。 ありった
ピンヒール、ロングブーツ、サンダル、スニーカー、ミュール、果てはロッキンホース等々。靴…
歌が聞こえる。 ――甘い 甘い ハチミツ とろけるような ハチミツ 夕焼けを映して わ…
わたしは毎晩、形のない睡眠と格闘している。 というのも、毎日仕事に疲れ果ててすとんと…
雨の数だけ恋したうさぎ。緑の草原を走り、大地に十色の虹を架ける。駆け抜けた先で疲れた体…
そう遠くはない、向こうの電線の上でカラスがカァと高く鳴く。わたしと同じカラスなのに言葉…
彼女は涙を流した。 この恋はけっして成就しないとわかってしまったから。 それは、遠…
まだ逢えないあなたへ。 今日もまた失礼します。 あなたのことを知れば知るほど、「知らない」が増殖します。それは勢いのよい長大な滝のごとく、まるで底が見えません。 あなたの手紙を読めば未だ知らぬ顔を見て、あなたの写真を見れば未だ知らぬ声を聴く。わたしが想像力をたくましくすればするほど、「知らない」が尽きません。 そうやって少しずつ欠片を拾っても、完成に近づくどころか遠のいていくようです。まるで終わりの無いパズル。否、何世紀にもわたってずっと建築中のサグラダ・ファミリア