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劣等感が消えない。

SNSをしていると、劣等感と承認欲求と無縁というわけにはいかない。

それらは太陽の周りを回る星々のように、ぐるぐると僕の周りを巡っては顔を出す。

いや、そんなにロマンチックなものでもないか。

ついこのあいだも、とある人に劣等感を抱いて苛立ちが止まらなかった。

「どうして僕はあの人みたいになれないんだ」と唇を噛んだ。


その人物はみんなから『親愛なる隣人』と呼ばれている。

その人は手首から強靭な糸が出せるのだが、それを駆使して建物という建物を自在に飛び回ったり、悪人を拘束したりする。

まるで蜘蛛のようだった。

僕はそんなもの出せなかった。

指や手のひらをいろんな形に曲げたり伸ばしたりしてみたが、ダメだった。

友人にチェックしてもらい、その人のポーズと比べてもらったりもした。

しかし依然として、僕の手首は沈黙をつらぬくばかりだった。


それにその人の稀有な能力は糸だけにとどまらない。

その人はなんのとっかかりもない壁を、まるで重力の向く方向が変わったようにすいすいと移動できる。

それくらいなら僕でもなんとかなりそうな気がした。

自室の壁に半日足をつけたり離したりを繰り返した。

結果。腹筋がちょっと鍛えられただけだった。

外でなくてはいけないのだろうか、と思い、近所のビルの壁にしがみついていると、警察がやってきたので逃げた。

他にもいろいろと試してみたが、重力はずっと下向き。僕は地面に縛りつけられたままだった。

しかたないので、次は色々な蜘蛛に噛まれる方法を試してみようと思う。


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