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女という人#3「私は彼女を美人さんだと思う。鏡を見た彼女は自分の顔を嫌だと思う」


2021年、事実婚の彼と終わった。
いや、終えたのだ。やっと、別れた。
20年連れそった彼との別れは、こんなにスッキリするものかと思う位にスッキリした。

そう話す彼女は多摩川の近くで二匹の猫と暮らしている。

猫はとても凶暴らしく彼女にも懐いてないと聞いて驚いた。しょっちゅう引っ掻かれたりして大変らしい。

懐いていないなんてお世話するの嫌にならないかなあ?とか、そんな警戒心MAXな猫をかわいいって思えるのだろうか?とか、色んな疑問を浮かべつつ猫を探したけど、猫はよそ者には姿すら見せてくれないようだ。猫さん、すみません、お邪魔して…。猫のテリトリーに侵入したことが申し訳なくなった。

おいしいプリンとおいしいコーヒーをごちそうになる。

ちょっと前まで二人暮らしだった部屋は、1人暮らしにはほんの少し広いような気もする。彼が出て行ったあと部屋は模様替えをしたのだと言う。確かに、男性の気配は無かった。

話を聞くまで一人暮らしの長い女性の部屋の感覚でお邪魔していた私は、2人暮らし時代の面影が感じとれる何かを探したけれど、全く何も無かった。見事に何にも。

うん、すごーくスッキリしたんだろうなと納得する。

彼女は料理好きだ。キッチンがありとあらゆる調理道具や食材であふれていた。
広いシステムキッチンではないが、彼女が使いやすいように工夫されたキッチンは生き生きとしていた。
小柄な彼女がそこで動きまわり調理をする姿が目に浮かぶ。

このあたりの農家さんで採れた野菜を使うのが彼女の好きなことなんだそうだ。

いい暮らしだと思った。

"都心に務めてる彼女のテリトリー"
この部屋は彼女が長年かけて作ったテリトリーなんだ。

自分の顔、好きになれない。
ふいに彼女が言った。

昔から好きになれないのだと言う。
写真に写るのは嫌いなんだって。

私は彼女を美人さんだって思う。
写真に写った自分を見て、ああ嫌だなぁって彼女は思う。

自分の顔が嫌だって気持ちを彼女はスッキリ片付けることが出来るだろうか。

私は自分の顔の父親に似てるような所は嫌いかもしれない。父親がどーしよーもない父親だから、似てると言われるのが嫌って理由なのだけど。

顔って、そういうところがある。

器量の良し悪しより、家族のキャラクターに左右されてしまうようなとこが。

女という人:りか
撮影.文:SAKI OTSUKA

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