マガジンのカバー画像

視覚に囁く『小ご絵』

1,340
いつも大きくて立派な扉ばかり見せられてきたように思う。 深く考えることなく、大きくて立派な扉ばかり追いかけてきたように思う。 だけどいつもうまく開けられるわけじゃない。 ある… もっと読む
運営しているクリエイター

2023年8月の記事一覧

旅行雑誌編集者−1 プロローグ

 社会人になって、旅行雑誌の編集業という職に就いた。今でこそアーカイブと現地の臨時スタッ…

貴女は何を見ているの?

 意中の人が気になる。まだ告白してはいないけど、このドギマギの意味を察してくれたら、もし…

無償でいいのかボランディア。

 労働力確保には2つの側面がある。一つは企業活動の維持、発展。もう一つは経済循環の維持、…

「買って済ます」から「工夫して使う」へ。

「飽食の時代を経験してきたからね」  心底、泡が体の隅々まで行き渡った時代を経験しておい…

僕らは生きているんじゃなく、生かされているってことをうっかり忘れていたよ。

 反対、抗議も何のその、薄めて流しちゃうし。虚勢張って爪先立ちで発射しちゃうし、失敗した…

イマジネーションの混迷ループが見据える日曜日夜8時。

「捨てたものじゃない」  あれだけ真剣にIターンを考えていた小田允が、移住のために溜め込ん…

秋よ、来い。

 空腹も満たせば次に新しくしたいことを好奇心が探し始める。今年は特段、刻まれる夏だった。灼熱で膨らむだけ膨らんだ夏は、ことごとくのあれこれが四肢の隅々にまで行き渡り、満身創痍、満腹感は半端ない。だからか、気持ちはすでに次の季節に向いた。  早く沈むようになった陽も、急いた気の迷いなんかじゃない。着実に、確実に、季節の歯車がかちりと心の中で秒針を進めたのだ。  それは冷気を含んだ一陣の荒風だった。夏の熱気に迷い込んだ一筋の冷気は、幻のように現実味を欠いてはいたけれど、夢ではなく

策士と男心。

 うちのクロだったら、あんなことはしない。できない。ずっとシンプルで純粋だ。  まさかあ…

人生だねえ、楽しもうと思うと雨が降る。

 お楽しみの直前に急な雨が降ろうとも、しょげてはいられない。心が弱いと、甘く見られる。 …

誤算。

 人見知りな私でも挨拶以上の会話を交わせるようになったこの街を去ることに躊躇いはあった。…

夢の睡眠。

 睡眠の質が語られるようになった。乳酸菌が効くだの、マットレスが関係するだの、枕を替える…

背筋も凍る夏の夜咄。

 使いまわされるネタでチャチャッと作られる怪談番組、そのマンネリ具合の極みといったら。 …

それぞれに少し不幸だけど、幸せに見えなくもないあの人たちが気に掛かって仕方ない。

 秀一の父・建造は、真里亞を妻に取ったが仲違いで袂を分かち、秀一は同級生の健人に思いを寄…

喜劇役者の生きた道。

 長年溜めてきた疲れは腰に出る、足に出る。 「よっこらしょ」  たいした所作ではないのに、栄作さんは立ち上がるたびに一山超えてきたような難儀の吐息で喉が震える。 「あー」 「栄作さん、その仕事を終えた後みたいな達成感まがいのあー、やめてもらえません? 本番はこれからなんすから、気が抜けるったらありゃしない。これから始まるんですよ。わかってます?」 「嗚呼、ああ」  別にボケたわけじゃないことはわかっている。これまで何度も飽きることなくやってきたのだ。オレに指図されるまでもなく