心霊写真 不思議をめぐる事件史
うわー、うっかりして、連続投稿記録を途切れさせてしまいました。悔しいです……。
それはともかく、今回も、読んだ本の書評を投稿します。
題名と、表紙の感じからすると、「怖い『心霊写真』を集めて、人を怖がらせようとしている本」に見えますね。
ところがどっこい、この本は、そんなものではありません。
この本の内容は、硬派です。学術派、と言ったほうがいいかも知れません。
日本の「心霊写真」というものの歴史を、たどった本です。
二〇一一年現在、「心霊写真」と言われて、何のことか、まったくわからない日本人は、皆無に近いでしょう。
「霊が写っている(とされる)写真」が、「心霊写真」ですね。
これは、不思議なことだと思いませんか?
あるかどうかもわからない、目に見えない、「霊」というものが、写真に写るだなんて?
私たちは、いつから、「霊が写真に写ることがある」と、普通に思うようになったのでしょうか?
普通にそう思うのでなければ、世の中に、こんなにたくさん、「心霊写真」と呼ばれるものが、あるはずはないでしょう。
本書の著者、小池壮彦【こいけ たけひこ】さんは、霊が実在するかどうかについては、ひとまず保留されているようです。どちらかといえば、霊の実在には、懐疑的ですね。
霊の実在には、はっきりした証拠がありませんので、賢明な立場だと思います。
「霊は絶対にいる! 心霊写真には本物もある!」と信じ切っている方は、本書を、つまらないと感じるでしょう。
霊が存在するかどうかは、ひとまず保留して、冷静に「心霊写真」を考えてみたい方に、お勧めです。
もしかしたら、それは、ただのピンぼけ写真かも知れません。
なのに、ある人たちにとっては、それは、「霊が写ったもの」となります。
問題は、写真そのものではなくて、それを見る私たちの側にあります。視線の問題、と言いましょうか。
「心霊写真」は、確かに、日本文化の一部です。「そう言われるものがある」と、大部分の人が認識しているのですから。
日本人の精神史の一部を、垣間見せてくれる本です。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
まえがき
序章 幕末日本に「心霊写真」はあったか
写真術の輸入 写真に死装束が写る
第一章 日本最古の「心霊写真」
国産初の「心霊写真」はどこで撮影されたか 三田弥一が撮った「心霊写真」
事件の年月を特定する
第二章 明治の日本と「心霊写真」
「重ね撮り」の技術開発 「心霊写真」を修整する
第三章 「幽霊写真」VS「念写」
「心霊」という語 「心霊写真」は「念写」か
第四章 「心霊+写真」の成立
大正初期の心霊事情 「霊写」VS「念写」 「心霊写真」VS「幽霊写真」
「心霊写真」という語の定着
第五章 エロ・グロ・心霊
大正の「心霊写真」事件簿 「心霊写真」とモダニズム 国家が邪教を育てる
石川雅章VS心霊科学 浅野和三郎と福来友吉
第六章 「心霊写真」のポスト・モダン
魔術眼論争 徳島発・競艇写真の怪 写らない兵士の悲劇
跋扈する反動的心霊主義 「心霊写真」のポスト・モダン
第七章 亡者たちの宴の始末
手軽に撮れる亡者たち 「心霊写真」の俗語化 石碑に浮かぶ幽霊
テレビに映る亡者たち 怪談を零落させたもの
終章 世紀末の「心霊ビデオ」
「念写」研究のその後 霊能者の罪障 世紀末の心霊ビデオ
逸脱する亡者の映像
補章 新世紀の「心霊写真」
デジタル時代の”ゴースト” ある写真の逸話 母の声
幕末日本の心霊写真
註
あとがき
文庫版のためのあとがき
参考資料(1)ビデオリスト
参考資料(2)DVDマガジンリスト
参考資料(3)文献リスト
参考資料(4)年表
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