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アジア遊学 (No.52) 徐福 アジア二〇〇〇年の青い鳥


アジア遊学 (No.52) 徐福 アジア二〇〇〇年の青い鳥

 勉誠出版から出ているムック『アジア遊学』の第52号です。徐福【じょふく】の特集号です。

 徐福は、伝説の方士【ほうし】ですね。秦の時代の中国にいた人です。秦の始皇帝との逸話で、知られています。
 中国を統一した後、始皇帝は、不老不死を強く求めるようになりました。そんな始皇帝に、不老不死の術を知っていると称する方士たちが、接近します。徐福は、その一人でした。

 徐福は、始皇帝の命を受けて、不老不死の薬を入手するため、東の海へと船出します。その時の彼は、一人ではありませんでした。数百人単位の若い男女を、一緒に船に乗せていました。
 結局、徐福も、一緒に行った人々も、船出したまま、秦へは帰りませんでした。

 徐福がどこへ行き着いたのか、確かな証拠は、何もありません。
 しかし、「東の海」という点からして、「日本に行き着いたのでは?」という伝承が、古くからあります。

 本書は、徐福にまつわる伝承を追った本です。
 日本の各地に、「徐福が来た」という伝承があります。中国には、「ここから、徐福が船出した」という伝承の地が、あちこちにあります。また、韓国には、「中国から来た徐福が、東へ行く途中、立ち寄った」という伝承の地があります。

 日中韓三国に、共通して徐福の伝承があるのは、興味深いですね。

 前記のとおり、徐福の到着地について、確かな物証は、挙げられていません。本書に載るのは、すべて、伝承ばかりです。『徐福 アジア二〇〇〇年の青い鳥』という本書の副題が、ふさわしい状態です(^^;
 その点が、隔靴掻痒【かっかそうよう】で、もの足りません。

 とはいえ、日中韓三国にまたがる徐福の伝承をまとめただけでも、大いに価値があります。
 日中韓三国の方々の論説が載っているため、広い地域に目配りされているのも、良いですね(^^)

 本書全体を通しての結論は、ありません。個々の人が、自分の意見を述べています。現段階では、意見をまとめられるほどの証拠がないため、これは仕方のないことでしょう。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

徐福国際フォーラム開催とその成果
徐福国際フォーラム北京開催を祝う
徐福アジア地図
新宮【しんぐう】の徐福さん
日本でも徐福を「歴史の人物」に
佐賀に息づく徐福
徐福を顕彰し、その基地を作る
方士・徐福と宮崎の芳士
八女【やめ】の徐福伝説
新大明神口碑記【にいだいみょうじんこうひき】を読む
富士山の伝説「ツルになった徐福」
八丈島の徐福伝説
徐福と青森の小泊【こどまり】
新徐福考
日本における徐福伝説研究のこれから
アジアの交流発展のために今、私ができること
徐福記念館館長としての私
徐福は始皇帝が命じた倭の王であった

十九世紀以前の徐福研究
徐福の歴史的定位と研究について
塩山は東渡した千童の故郷
琅琊台【ろうやだい】と徐福の東渡
徐福の東渡と呉地【ごち】の関係について
徐福断想
始皇帝の入海求仙で碣石【けっせき】が選ばれた理由
徐福文化の源流を探る
徐福研究ブーム再来のために
徐福の冠岳【かんむりだけ】封禅【ほうぜん】が意味するもの
徐福文化の研究について
宋明の遺民の詩にみる徐福

済州島の徐福伝説について
韓国南海島を通過した徐福に関する考察

ブックレポート
 儒教に学ぶことはまだまだある
 知られざる戦後の真実

連載
 日本近代文学のアジア 第六回 張赫宙の朝鮮と日本
 本朝文粋抄 第十回 弁官 左右衛門【さゆうえもん】権佐【ごんのすけ】大学頭【だいがくのかみ】等を申す奏状
 ユーラシアの祭り・村の土埃【つちぼこ】り 第三回 中国雲南・松明【たいまつ】祭りの村



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