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魔法少女の系譜、その178~『花の子ルンルン』と先行作品~


 今回も、前回に続き、『花の子ルンルン』を取り上げます。

 『花の子ルンルン』は、魔法少女ものの中に、ロードムービーの要素を、本格的に取り入れた作品です。ロードアニメですね。
  前回の『魔法少女の系譜』では、伝統的な口承文芸に、このような「旅をする少女」の物語があるかどうか、考察しましたね。結果、「旅をする少女」はいるけれど、自分の意志ではなく、何かに追われて、やむを得ず旅をする少女がほとんどだとわかりました。『花の子ルンルン』のヒロインは、自分の意志で旅をする、現代的な少女でした。

 では、『花の子ルンルン』以前の創作物語の魔法少女には、「旅をする」要素があったのでしょうか?

 なかったわけではありません。これまで、『魔法少女の系譜』シリーズで取り上げた中では、『エコエコアザラク』と、『七瀬ふたたび』に、旅の要素があります。

 『エコエコアザラク』では、ヒロインの黒井ミサが、転校を繰り返します。次々に違う中学校へ行って、怪奇な事件を起こしたり、事件に巻き込まれたりします。
 確かに、旅の要素はあるのですが、『エコエコアザラク』の場合は、他に、いろいろ特殊な要素があり過ぎます。ヒロインが黒魔術の使い手で、毎回のように殺人をする、恐ろしい存在ですからね。二〇二二年の今でも、日本漫画界に燦然【さんぜん】と屹立するダークヒロインです。
 以下に、『エコエコアザラク』を取り上げた『魔法少女の系譜』シリーズを、貼っておきますね。

2.53)魔法少女の系譜、その53~『エコエコアザラク』~(2022年6月23日)
https://note.com/otogiri_chihaya/n/n3da471581002

 『花の子ルンルン』と比べてみると、『エコエコアザラク』のあり方は、まるで真逆です。
 『エコエコアザラク』は、漫画の連載当時の一九七〇年代には、アニメ化できないほど、ヤバい作品でした。対して、『花の子ルンルン』は、最初から、テレビアニメの企画として始まりました。残虐描写も性的描写もなく、ヒロインは良い子で、老若男女が安心して見られる作品です。

 黒井ミサは、転校していった先々に、災厄を振りまく存在でした。ルンルンは、逆に、行く先々で、良いことをします。ミサが災厄の神なら、ルンルンは福の神です。

 ミサやルンルンを、人間だと考えれば、『エコエコアザラク』も『花の子ルンルン』も、現代的な、新しい物語です。
 けれども、ミサもルンルンも、「人間の皮をかぶった神」だと考えれば、伝統的な口承文芸に登場する、災厄や福を振りまく神の物語と、同じですね。最も基本的な物語の骨組みは、遥かな過去から受け継いでいます。

 『七瀬ふたたび』のヒロインは、伝統的な口承文芸そのままに、「追われて、やむを得ず旅をする少女」ですね。
 『七瀬ふたたび』は、放映されたのが、『花の子ルンルン』と同じ昭和五十四年(一九七九年)です。この年には、『さすらいの少女ネル』も放映されましたね。テレビでのロードムービーが流行った年といえるかも知れません。
 以下に、『七瀬ふたたび』を取り上げた『魔法少女の系譜』シリーズを置いておきます。

2.148)魔法少女の系譜、その148~『七瀬ふたたび』~(2022年8月9日)
https://note.com/otogiri_chihaya/n/n1f1e8d9e3f13

 あまりに特殊な『エコエコアザラク』は別として、魔法少女ものの中に、本格的にロードムービーの要素が入ったのは、昭和五十四年(一九七九年)からだといえるでしょう。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『花の子ルンルン』を取り上げます。



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