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新版 ロシアの神話


新版 ロシアの神話

 題名は、『ロシアの神話』ですが、ロシア以外の神話も紹介されています。ロシアの周辺国の神話です。
 より正確には、スラブ民族(ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランド、セルビアなど)の神話と、リトアニアの神話と、フィンランドの神話とが、紹介されています。

 注:本書では、ベラルーシが白ロシア、リトアニアがリトワニアと表記されています。

 これら三つの神話は、日本で紹介されることが少ないです。
 つい最近まで、日本語で読めるものとしては、本書が唯一の手引書、と言ってよい状態でした。

 二〇一〇年現在でも、その状態は、あまり変わっていません。
 前記の三つの神話を知りたいなら、本書は、決して無視してはいけない本です。

 にもかかわらず、評価の星を付けるとしたら、満点にはできません。その理由は、以下のとおりです。
 互いに関係が薄い―まったくない、とは、言えません―三つの神話を、一冊にまとめたために、個々の神話については、掘り下げが足りません。
 少なくとも、私は、もの足りなく感じました。

 ただ、これは、厳しすぎる評価かも知れません。
 スラブ民族の神話と、リトアニアの神話とは、原型がほとんど残っていないからです。のちに入ったキリスト教により、かなり徹底的に、破壊されてしまいました。
 本書にまとめただけの内容でも、「よくぞ集めた」という感じです。

 フィンランドの神話については、スラブ神話に比べれば、よく残っています。民族叙事詩『カレワラ』―本書の表記では、カレヴァラ―があるおかげです。

 前記のとおり、スラブ民族の神話と、リトアニアの神話と、フィンランドの神話とは、それぞれ、起源も系統も違います。
 本書を読めば、まったく違う神々が登場することが、わかります。

 なお、フィンランドの神話に付随して、フィンランドの少数民族サーミの神話についても、ほんの少し、触れられています。
 本書では、サーミは、旧称のラップ族で呼ばれています。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

スラヴの神話
 序論
 神々の誕生、原始的二元論
  ≪ベロボーグ≫と≪チェルノボーグ≫(≪白い神≫と≪黒い神≫)
 自然崇拝、田園の神々、「天」とその子供たち
 マーチ=スィラ=ゼムリャー(母なる湿潤の大地)
 田園の小神格たち
  ドモヴォーイ
 人家に住む他の精霊たち
 レーシィ
 ポレヴィーク
 水の精霊、ヴォジャノーイ
 ルサールカ
 都市と戦争の神々
 歓喜の神々
 キリスト教時代におけるスラヴの異教神話

リトワニアの神話
 序論
 自然崇拝
  聖なる森
  樹木崇拝
  動物崇拝
  死者たちの魂
  火への崇拝
  天体
 リトワニアの主要な神々
 二次的な神格
  小神格たち

ウグロ=フィンの神話
 序論
 ≪カレヴァラ≫
 魔術とシャーマニズム(巫術)
  ≪カレヴァラ≫に現われた魔術
 ≪カレヴァラ≫の神々
  天上の神々
  世界の誕生
  大地と水の神格たち
  ≪カレヴァラ≫の地獄
  ≪カレヴァラ≫の神話的価値
 ウグロ=フィン族のアニミズム
  物の持つ魂
  神々の群
  水の精霊たち
  神話
  ラップ族のセイダ
 結論

訳者あとがき
索引



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