厩戸皇子【うまやとのみこ】読本
厩戸皇子【うまやとのみこ】とは、聖徳太子のことですね。
本書は、聖徳太子に関する伝説を集めた本です。
聖徳太子は、死後、早いうちから、伝説的な人物となりました。そもそも、聖徳太子という呼び名が、普通の人っぽくありませんよね。聖人の呼び名ですよね。
本書は、「聖人としての厩戸皇子」を取り上げています。史実としての厩戸皇子を、扱っているわけではありません。そこに御留意下さい。
厩戸皇子について、明らかになっている史実は、非常に少ないです。それよりは、伝説の部分が、とても多いです。
伝説が膨らんで、太子信仰というものまであります。古代から現代に至るまで、厩戸皇子は、信仰の対象となってきました。
一例を挙げれば、法隆寺―厩戸皇子の住まい跡地に建てたといいますね―は、いまだに、法灯を守っていますよね。
空海や親鸞【しんらん】など、著名な宗教者たちのうちにも、太子信仰の持ち主がいます。
そのわりに、聖徳太子の伝説をまとめた本は、ほとんどありません。
本書は、貴重な例です。
本書は、聖徳太子伝説の決定版といえる『聖徳太子伝暦【しょうとくたいしでんりゃく】』の現代語訳と、その解説からなっています。
山岸涼子さんの漫画『日出処の天子【ひいづるところのてんし】』がお好きな方は、ぜひ、本書をお読み下さい(^^)
『聖徳太子伝暦』は、『日出処の天子』の元ネタというべき書ですから。
以下に、本書の目次を書いておきますね。
はじめに――本書の構成
一章 超人太子の誕生
『聖徳太子伝暦』――
●金色僧の霊夢
●救世【ぐぜ】の菩薩の出産
●南無仏ととなえる
など
解説――
●太子の胎内説法
●なぜ八カ月で発語できたのか?
●十二カ月の在胎の秘密
など
二章 仏法興隆のあけぼの
『聖徳太子伝暦』――
●日本最初の仏寺と仏舎利
●仏の祟り
●父の天皇の即位と崩御
解説――
●奇跡を起こす舎利
●釈迦の眼球
●拳舎利【けんしゃり】のありか
など
三章 崇仏派と排仏派の戦い
『聖徳太子伝暦』――
●物部守屋【もののべのもりや】の滅亡
●崇峻【すしゅん】天皇の即位
●太子、天皇の相を占う
など
解説――
●太子とヴァジラヤーナ
●太子の六神通【ろくじんつう】
●守屋を菩薩とする秘説
など
四章 推古女帝と摂政太子
『聖徳太子伝暦』――
●太子、摂政に立つ
●『本願縁起』に記された太子の遺命
●漂着した霊木
など
解説――
●前世経の欠字の秘伝
●高句麗に伝わった幻の『法華経』
●帝釈天の化身・驪駒【くろこま】
など
五章 予見された日本の未来記
『聖徳太子伝暦』――
●平安京の予言
●太子、斑鳩宮【いかるがのみや】に遷【うつ】る
●『勝鬘経【しょうまんぎょう】』と『法華経』の講義
解説――
●秦河勝【はたのかわかつ】の謎
●太子と歴代天皇の秘儀
●斑鳩宮と「三経義疏【さんぎょうぎしょ】」
六章 霊魂が運んだ『法華経』
『聖徳太子伝暦』――
●遣隋使【けんずいし】と前世経の将来
●妹子【いもこ】の帰国
●隋国皇帝への国書
など
解説――
●慧思【えし】と太子
●なぜ『法華経』なのか?
●「太子の玄孫」と称した最澄と『法華経』
など
七章 死出の旅への準備
『聖徳太子伝暦』――
●片岡山の飢人【きじん】
●犬と鹿の怪異
●恵慈【えじ】との別れ
など
解説――
●如来の通力
●勝鬘【しょうまん】太子と観音太子
●空海は太子の生まれ変わり
など
八章 聖徳太子の遷化【せんげ】
『聖徳太子伝暦』――
●子孫滅亡の秘儀
●人魚の凶兆
●太子の四つの遺願
など
解説――
●三骨一廟【さんこついちびょう】
●御記文【ごきもん】
●空海の見た太子廟
など
九章 上宮一族の滅亡
『聖徳太子伝暦』――
●太子の創建寺院のこと
●太子の死後の出来事
●蘇我馬子と推古天皇の死
など
解説――
●太子の寺院
●上宮王家滅亡の背景と夢殿本尊
●救世観音像と梅原怨霊説
など
聖徳太子の伝記と注釈書