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魔法少女の系譜、その87~『明日への追跡』~


 今回も、『NHK少年ドラマシリーズ』を、取り上げます。ヒロインというより、敵役で、魔法少女が登場する話です。

 『明日への追跡』は、昭和五十一年(一九七六年)に、全十二回で、放映されました。このテレビドラマには、原作の小説があります。光瀬龍さんのSF小説『明日への追跡』です。
 光瀬さんは、『夕ばえ作戦』や『暁はただ銀色』の原作小説を書いた方でもありますね。『明日への追跡』の小説は、テレビドラマの放映と同じ、昭和五十一年(一九七六年)に、初版が出ています。
 テレビドラマ放映の直前―約一か月前―に、小説が出ているところからすれば、原作小説というより、テレビの企画と、同時進行だったのかも知れませんね。二〇一八年現在で言う、メディアミックスです。昭和五十年代前半(一九七〇年代後半)には、まだ、そんな言葉はありませんでした。

 『明日への追跡』に登場する魔法少女は、浦川礼子という名で、中学二年生です。彼女は、ヒロインの一人であり、敵役でもあります。はっきり敵だとわかるのは、だいぶ物語が進んだ後です。
 先にばらしてしまうと、彼女は、「宇宙人に憑依された人間」でした。いろいろ突っ込みたくなる設定ですが、本当にこうなんです(^^;
 「憑依型」は、これまでになかった魔法少女ですね。

 礼子は、主人公の少年、落合基【おちあい もとい】と同じ中学で、同じクラスの生徒です。美人で、かつ、成績優秀です。彼女は、中学一年の三学期に、他の学校から転校してきました。

 主人公の基たちの中学は、東京の郊外にあります。基は、ごく普通の中学生男子です。彼には、椿芙由子【つばき ふゆこ】という、仲の良いクラスメートがいます。芙由子も、普通の中学生女子です。まったく、魔法少女ではありません。
 基と芙由子とは、お互いに好きなのは間違いありません。でも、はっきり付き合っている、という状態ではありません。

 ここまで書いてくれば、おわかりでしょう。『明日への追跡』は、芙由子と礼子との、ダブルヒロイン制です。主人公の基をめぐって、二人の少女が対立します。『まぼろしのペンフレンド』を思い出しますね。

 基と芙由子とが歩いていると、礼子の家の近くまで来ます。二人は、そこで、礼子の家をうかがう怪しい少年を発見します。基は、その少年を捕まえようとしますが、逃げられてしまいます。その時に、その少年は、なんと、テレパシーで、基に話しかけます。

 翌日、その少年が、基と芙由子とのクラスに転校してきます。そのクラスには、礼子もいます。
 少年は、竹下清治と名乗り、基や芙由子や礼子のクラスメートとなります。

 清治が来てから、基の周囲で、次々に奇妙な事件が起こります。クラスメートの男子二人が、突然、記憶喪失になってしまいます。何もかも忘れた二人は、学校へ行くこともできず、入院することになります。
 二人の記憶喪失には、明らかに、清治がからんでいるふしがありました。基は、芙由子と共に、事件の謎を探ろうとします。他のクラスメートにも、協力を要請しますが、なぜか、礼子だけが反対します。

 同じ頃、礼子は、基に急接近していました。テストのヤマを教える代わりに、彼女になりたいと言うのです。仕方なく、基は受け入れます。芙由子がそれを知って、大いにむくれます(笑)

 しかし、礼子の目的は、基と付き合うことではありませんでした。礼子は、基が持っているはずの「何か」を探すために、彼女になったのでした。

 清治は、基に問い詰められて、自分がテレパシーを使えることを認めます。話しているうちに、基は、「清治は悪いやつではない」と気づき、親しくなります。

 そのあとも、学校で火事が起こったり、芙由子が原因不明の頭痛になったりと、怪事件が続きます。そこには、常に、清治と礼子の影がありました。

 清治と礼子とは、基たちの中学に転校する前、同じ鎌倉の中学に通っていたことを、基が突き止めます。基と芙由子とは、さまざまな謎を解明するために、鎌倉へ行きます。そこで、芙由子が行方不明になってしまいます。
 芙由子は、礼子にさらわれていたのでした。礼子は、芙由子を人質に、基のペンダントをよこすように要求します。

 そこへ清治が現われ、清治と礼子とで争いになります。超能力を使った戦闘の末、清治が勝って、礼子に取りついていた宇宙人が離れます。
 清治も、正体は宇宙人なのでした。ただし、礼子の場合とは違って、肉体まるごと宇宙人です。礼子と同じ星出身の宇宙人ですが、礼子に憑依していたのとは、違う種族です。

 清治の種族と、礼子(に憑依していた)種族とは、対立していたようです。彼らの星は、破滅寸前だったため、清治の種族も礼子の種族も、他の星へ移住しようとしていました。その態度に、清治の種族と礼子の種族とでは、違いがありました。
 清治の種族は、先住者の意見を尊重しようとしていました。礼子の種族は、先住者に構わず、一方的に移住を進めようとしていました。
 清治の種族と礼子の種族とが移住しようとしていたのは、もちろん、地球です。

 じつは、地球には、清治の父親が、早くから調査に来ていました。父親は亡くなってしまいましたが、地球の調査報告書を残していました。その報告書は、めぐりめぐって、基のペンダントになっていたのです。礼子が探していたものは、これでした。

 清治がその報告書を開いてみると、「地球はすでに汚染されているので、移住先には適さない」とありました。清治は、「移住先には、他の星を探す」と言い残して、基たちの前から消えます。
 宇宙人が離れた礼子は、すっかり明るくなって、クラスに溶け込みました。平穏な日々が、戻ってきました。

 全体的に、『暁はただ銀色』と、『まぼろしのペンフレンド』とを、足して二で割らなかったような話ですね(笑) 『なぞの転校生』にも、似ています。

 長くなったので、今回は、ここまでとします。
 次回も、『明日への追跡』を取り上げる予定です。



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