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【気候変動・エネルギー政策 連載】 第2回:そもそも気候変動の原因は何か?

 こんにちは、ぴよすきです。
 第1回の記事に対して、コメントやLikeをいただき、ありがとうございました。

 前回、今回は「なぜ気候変動対策は進まないのか?」の記事を書くとお伝えしていましたが、対策の問題点について書く前には、そもそもの問題の原因や現状について書くことが必要かなと思いなおしました。
 そこで第2回目の今回は、「気候変動の原因は何か?」という観点で記事を書いてみたいと思います。

 なお、ここで記載する内容はあくまで個人の意見、所見です。
 私が現在所属しているシンクタンクや過去勤務していた企業・機関の影響は当然受けているとは思いますが、彼らの意見を代表するものではないことをご承知おきください。

今回の記事の重要な要素は以下の2点です。

  • 経済が発展して便利な社会になったことで、気候変動は急激に進んだ。

  • 温室効果ガスが大量に発生して、地球は地表から十分に熱を放出できなくなってしまったことが、気温が急激に上昇した背景である。

1. 気候変動の原因は、「便利な社会」?

 まず大前提として、気候が変動すること自体は、何らおかしい現象ではありません。
 長い歴史を見ても、寒い時期が続く氷河期があったり、逆に温暖な時期が続く温暖期(間氷期)があったりと、46億年の地球の歴史の中で、気候は変わり続けてきました。

恐竜が絶滅したのも、氷河期の到来が原因の一つと言われていますね。

 ではなぜ今、気候変動は問題視されているのでしょうか?
 それは、過去200年間で発生した気温上昇は人類史上、類を見ないほど急激であるから、そして、今後さらに気温上昇の度合いは強まると予測されているからです。

 ここ最近の気温上昇がいかに異常なものなのか、わかりやすく図で見てみましょう。
 下の左の図は過去10000年間の、右の図は過去2000年間の気温の推移を示したものです。最後の約200年間でわかりやすく気温が急激に上昇しているのがわかりますね。

これが株価の動きだったら、大儲けできたかもしれないのに・・(IPCC AR6 WG1(2021)、Marcott(2013)より一部加工)

 ご覧のとおり、この急激な上昇は1850年ごろから始まっています。
 1850年代といえば、日本ではちょうど江戸時代と明治時代の境目、世界でいえば産業革命が本格化した時代。つまり、人間の生活が急激に便利になり始めた時代です。ここから2度の世界大戦や東西冷戦の時期を経て、国際社会は急速に技術発展、経済発展を続けます。
こうして経済が発展して、我々の生活が便利になっていくのと比例して、気温も急激に上昇していったのです。

 そして、私たちが気候変動対策に相当の努力をしない限り、今後もこの傾向は続くと予測されています。

 つまり、誤解を恐れずに言い換えるならば、企業や政府、我々1人が目先の利益や便利さに甘んじて、片手間で対策をしている限り、我々やその子供・孫世代は、自然災害や医療・経済・ビジネス等における甚大な被害が発生しまくる悲惨な未来に、必ずや直面することになるのです。

気温は上昇するのは簡単。でも上昇を抑えることはとても難しいのです。(IPCC AR6 WG1(2021)より一部加工)

 以上を踏まえると、本稿の主題「気候変動の原因は何か?」に対しては、「経済が発展し、便利な社会を享受しているからこそ、気候変動は急激に進んだ」と答えを出すことができるのではないでしょうか。

2. 今さら確認!気温上昇と温室効果ガスの関係性

 もう少し昨今の気候変動の背景をみていきましょう。

 ところで、なぜ便利な社会になると、気温は上昇するのでしょうか。 皆さん説明できますか?

ドラえもんが来たら世の中が便利になりすぎて、気温が暑くなりすぎてしまったりするかも?

 多くの方が「二酸化炭素が増えるからでしょ!」とお答えになると思います。お見事、正解です。
 ただし、その答えでは満点ではありません。模範解答は、「温室効果ガスの排出量が増加するから」です。

 「温室効果ガス」。聞きなれたワードだと思います。
 でも名前だけが先行しすぎて、それが何を指しているか?そしてそもそもなぜ「温室効果」って何か? しっかり理解している方は、意外と少ないのではないでしょうか。
(正直に申し上げると、私も最近までよくわかっていませんでしした・・・ こういう「そもそも」を説明できない人が多いことが、日本の教育の問題点かもしれませんね。)

「温室効果ガス」というと、こういうイメージを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?

 地球は太陽の光を大気や雲、地面が吸収することによって暖められています。しかしながら、太陽光はいったんは吸収されますが、その後すぐに赤外線として再び宇宙に向けて放射されてしまいます。
 ですが、地球の大気の中には放出された赤外線を吸収して、地球の表面に熱を戻す効果を持つ物質が含まれています。これらの物質があるおかげで、地球の表面付近の大気は暖められ、生物が暮らしやすい気温が保たれているのです。

 この「放出された赤外線を吸収して地球の表面に熱を戻す」効果を温室効果と呼び、大気中に含まれる温室効果を持つガス、すなわち二酸化炭素やメタン、フロンなどをまとめて、「温室効果ガス」と呼ぶのです。

適量の温室効果ガスは、生態系に最適な環境を与えてくれる大事な物質です。(資料出典:気象庁

 このように、本来、温室効果ガスは生物にとって必要不可欠な物質です。大気中にこれらの物質がなければ、地球の気温は急激に下がってしまい、人間はもとより、生物にとって非常に厳しい環境になってしまうと言われています。

 ところが、ここ150年の間に人間は自分たちの生活を向上させるため、そしてお金儲けのために、資源を使って大量の製品やサービスを作り出しては使い、そしてその過程でたくさんの温室効果ガスを排出してきました。

 このように人間の勝手な事情によって、大気中に温室効果ガスが過剰に排出し続けられたことで、地球の気候システムもついに限界を迎えます。
 空気中にあまりに大量に温室効果ガスが発生したことで、今までのように地表から熱を放出できなくなってしまったのです。

熱が十分に放出されない今の地球は、まさに「サウナ状態」になってしまっているのです。

 こうしてどんどん気温が上昇してしまっているのが、今の急激な気候変動の背景です。
 そして人間が排出している温室効果ガスの9割近くを占める物質こそ、他でもない二酸化炭素なのです。

3. 次回、温室効果ガスを発生させているのは誰か!犯人判明!

 ここまでの話の中で、人間の生活が便利になったことで温室効果ガスが大量に発生するようになり、気候変動が急激に進んだという話をしました。
 したがってご理解のとおり、一義的には、気候変動の犯人は「人間全員」です。

そこのお前も、私も、みんなみんな犯人!人間全員死刑!

 でもこの答えではあまりにも概略的過ぎて、どこに原因があるのかがわかりませんね。
そこで次回の記事では、日本の社会を分野別に見た時に、誰が温室効果ガスを多く排出しているか、を調べることで、より具体的に犯人を炙りだしていきましょう。

 上で書いた通り、温室効果ガスには様々な物質が含まれますが、ずばり、温室効果ガスの9割近くは二酸化炭素です。残り1割はメタンやフロンガス等が占めています。

古今東西、温室効果ガス界の王者は「二酸化炭素」!(国立環境研究所 2020年度温室効果ガスインベントリより一部加工)

 二酸化炭素が排出される原因はざっくりと分けると、① 化石燃料をたくさん使っているから、② 森林が減っているからの2つです。 
 つまり、次回ご紹介する「温室効果ガスを多く排出している分野」は、この2つの行動をたくさんしている分野、ということになります。

 このヒントを基に、是非誰が化石燃料をたくさん使っていそうか、誰が木をたくさん切っていそうか、予想してみてください。
 次回の記事がより楽しく読めるかと思います。

ちなみに、CO2以外の温室効果ガスの一つ、メタンの主な発生源はなんと牛のゲップ!過剰な畜産の実施がメタン増加の原因です。

4. まとめ

 というわけで今回の記事のまとめを再掲すると、以下のようになります。

  • 経済が発展して便利な社会になったことで、気候変動は急激に進んだ。

  • 温室効果ガスが大量に発生して、地球は地表から十分に熱を放出できなくなってしまったことが、気温が急激に上昇した背景である。

 最後までお読みいただきありがとうございました。
 次回はお伝えした通り「誰が温室効果ガスをたくさん排出しているのか?」という観点で記事を書いてみたいと思います。

 感想、批評、ご指導大歓迎ですので、コメント欄にお願いいたします。(そしてつフォローもしていただけると嬉しいです!)

 ぴよすき


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