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なぜ今、Adobe XDが必要なのか?

このnoteは、2021.3.31に開催された「出版記念セミナー『豊富な作例で学ぶ Adobe XD Webデザイン入門』」にて、私がLTで発表した内容を記事化したものです。

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何を伝えたくて書いたか

「Adobe XDって、使ってる人増えてきたけど、本当に必要なの?」
「今までのデザインツールじゃダメなの?」

そんな、Adobe XDを使うことにいまいち価値を見い出せていない方や、Adobe XD初心者の方に、Adobe XDが誕生した背景を知っていただき、その利用価値に確信をもってもらうための話をしようと思います。そのため、Adobe XDの「具体的な使い方」には触れていませんので、ご了承ください。

Adobe XDの誕生

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では早速、Adobe XDの誕生について。
Adobe XDは、Adobe初のUI/UX系ツールとして、2015年10月のAdobe MAXで「Project "Comet"」という名前で、発表されました。

なぜ、Adobe XDが開発されたのか?

ではなぜ、Project "Comet"=Adobe XDが開発されたのでしょう?

アドビ シニアUXリードデザイナー/Adobe XD リードプロダクトデザイナーのTalin Wadsworth氏は、日本に来日した際のインタビューで、開発に至った背景をこのように述べています。

『デザイナーが日常的に使用していたツールにおいて、パフォーマンスや用途の面で、デザイナーとしての目的を果たすために不十分な面があると気づきました。』

アドビ シニアUXリードデザイナー/Adobe XD リードプロダクトデザイナー
Talin Wadsworth氏

つまり「今のツールではやりたいことができない」という課題を感じていたようです。彼の「やりたいこと」とは、何だったのでしょう?

アドビはXDを開発する際に、アメリカ:サンフランシスコの複数のデザイン会社をリサーチして「働き方」や「ツールの使い方」を観察しました。

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そこで分かったのは、デザイナーは、依頼者との間にディレクターなどを挟まずに「自分で説明している」こと。デザインの進め方が、作って直してを何度も繰り返す「アジャイル式」だったこと。すなわち「素早く作って、みんなで会話しましょう」という環境を求めていました。

つまり、ツールに必要なことは、以下の2つでした。

・アイディアを形にするスピード
・素早い共有でコミュニケーションできること

先ほどのタリン氏の「やりたかったこと」もこれだったのでしょう。

Adobe XDの開発理念「DESIGN AT THE SPEED OF THOUGHT:思考の速度でデザインする」というのは、こういった背景から唱えられているんですね。

誰とどんな議論をする?

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さて、「素早く作って、みんなで会話すること」が必要になり、そこでいったい「誰とどんな議論」をしなければならないのでしょうか?いろんな文脈がありますし、置かれている環境によって話は変わってくるので、全ては語れませんが、今日はその中から1つだけピックアップして『デザイン経営」宣言』を例にお話ししたいと思います。

「デザイン経営」宣言とは、2018年に経産省が宣言したもので、「企業価値を高めるために、「デザインを経営資源」として経営や事業戦略に活用しましょう」という考え方です。

この文脈から「デザインを依頼する人たち」が「デザインに期待すること」は「見た目のデザイン」だけじゃないってことですね。クリエイターも
「広い視野でビジネス成果を考える議論」が必要になってきたんです。

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でも、デザイナーからすると「いや、経営とか事業とかわかんないし…」ってなりますよね。

だから、マーケティングとか営業とか「チームの力」が必要になってくるんです。つまり、デザイナーは、ディレクターやコーダーだけでなく営業やマーケター、時には経営者などの「ビジネスレイヤー」と一緒に「ビジネス成果の創出」について会話することが求められているといえるでしょう。

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何を説明するのか?

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ではそのチームで、デザイナーは「何を説明すればいい」のでしょうか?デザイナーが「デザイン経営」の文脈で役に立てることは何か?を考えてみましょう。

デザイナーの強み
デザイナーにはこんな強みがあると思います。
「デザイン経営宣言」にも記されていますが、デザイナーは以下に長けていると思います。

・課題やニーズを見つけること
・アイディアを視覚化すること

つまり「クリエイティブを模索するシーン」でその力を発揮できます。

ビジネスサイドとの共有
例えば、「こう考えている」という思考やアイディアを形にすること
チームの目線を合わせやすくなり、議論を加速することができますし、インタラクションやアニメーションのように「動き」のあるものは「シュッと」や「フワッと」では伝わらない曖昧なイメージを正確なものにしてくれます。

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開発メンバーとの共有
一方で、実制作においては、開発メンバーとのコミュニケーションも重要です。しかし、クリエイティブにおいて複数のクリエイターが関わると一貫性を保つのが難しくなります。そこで、「スタイルガイド」などでクリエイティブを明文化し、再利用可能な要素を作ることで、反復作業や、やり直しに強くすることもブランドの世界観を保つためには重要なことです。

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このように「なぜ、この形になったのか」「なぜ、このクリエイティブが良いのか」という、デザイナーの頭の中を明文化することで、デザインが正しく伝わり、ビジネスのイノベーションに貢献できるんではないでしょうか。

Adobe XDは、こういったシーンで力を発揮できるように、機能を開発し取り入れているんですね。

さて、ここまでの話で「今、どんなシーンでXDが必要とされているのか」が、ご理解いただけたと思います。では「これから先」はどうでしょう?少しだけご紹介しようと思います。

これから先、Adobe XDの利用価値は?

先の読めない時代への適応
 2021年現在、世界状況的にも先の読めない時代です。対応していくには、XDのように、開発スタイルがアジャイル式のツールを利用し、常に最新の環境を整えることが望ましいでしょう。

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IoTの進化への対応
IoTの進化により、デバイスの多様化が加速しています。PC、タブレット、スマホ。VRやAR、スマートスピーカーなど。すでに市場に出回っているものも増えてきましたが、Adobe XDはこれらに向けた最新機能も揃えています。

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デバイズの多様化に合わせた最新機能
・レスポンシブリサイズ
・3D変形
・音声コントロール、など

次世代の教育
また、制作やビジネスとは別の話ですが「次世代の教育」から1つ紹介します。

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【高等学校情報科「情報Ⅰ」教員研修用教材(本編)】第2章より抜粋

文科省は「情報活用能力」を育てる一環で、2022年度から:高等学校 情報科 に「情報1」を必修科目として新設します。カリキュラムには「プロトタイプの作成」も含まれていて、「課題を見つけてみんなで議論し、プロトタイピングをする」ということを学びます。その流れに備えて、Adobeも活動を進めています

次の世代が、どのツールで学ぶかはわかりませんが、こういった課題への取り組み方を教育課程で学んでから社会に入ってきます。私たちは、そんな彼らと一緒に仕事をする日が、いずれ来ることになるかもしれません。

こういった、次世代の動きを考えると「Adobe XDのようなツールを習得しておく」ことは「この先にも利用価値がある」と考えています。

ここまでで、なぜ、開発理念として「思考の速度でデザインする」を掲げているのか?そして『”今”と”これから”のワークフローに必要なツール』ということが、ご理解いただけたんではないでしょうか。

デザインはデザイナーだけの仕事か?

最後に「デザインはデザイナーだけの仕事か?」という話をして終わりたいと思います。

今日の話をまとめると「誰もがデザインに関わりましょう」という側面があります。でも「誰もがデザインに」って言われると、違和感がありませんか?

それは、「デザイン=専門職だけのもの」という認識があるからではないでしょうか。これまでデザイナーといえば「知識や経験をもった、一般人から遠い存在ほど価値が上がる」という「デザイナーを特別なものとするアプローチ」があったので「誰もがデザインに関わる」というのに違和感を覚えたんだと思います。

でも、今日の話から「特別な1人が必要なのではなく、みんなで作ることが大切」ってことが理解できたと思います。
「誰もがデザインに関わり、デザインをプロジェクトメンバーみんなの活動にする」今求められているのは、そんな『デザインの民主化』ではないかと思っています。

いかがでしたでしょうか?
Adobe XDが「今」と「これから」に必要だということが、少しでも届けば幸いです。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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