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弊社openpageの創業期から懇意にして頂いている、ラクスルにてセールスマーケティング責任者を務める千葉さんがSaleszineにてインタビューされていました。

ラクスル千葉 祐輔さんはSaaS含むBtoBビジネスの立ち上げは10年以上の経験がある大ベテランで、私もよくSaaSビジネスの事業開発やマネジメントなどは千葉さんから教わっています。こちらの記事内容も大変参考になり、型化について読みながら思ったことや学んだことを私なりに整理していきたいと思います。

【営業型化をしないデメリット】型がないと独裁化する、チームの平均点が悪くなる、ストレスで離職する

型がないことのデメリットはなに?ということが整理出来たのですが、ずばり後から入るメンバーの立ち上がりの悪さなんだと学びました。

ただし、前からいるメンバーは型がなくても回せている状態になるので、後のメンバーの痛みになかなか気づけません。
記事にはありませんでしたが、型がないゆえに後発メンバーが立ち上がっていない、いづらいという状態は、実は前からいる社員が優越感を感じるものなんじゃないかと思いました。
後のメンバーのほうが経歴も良かったりします。そんなメンバーに先輩ぶれます。そこに先輩メンバーの優越感と後輩メンバーの劣等感という、独裁関係が生まれるわけです。

そうなればもちろん、嫌な上司、嫌な職場になります。後のメンバーは成績が出てないので何も言えない空気になります。それで離職する。そんな構造をこの記事を読みつつイメージしました。

【営業の型化 大手営業】エンダープライズ営業は商談深耕率が重要

エンタープライズで商談の深耕(深掘り)が大事であることが記事で述べられていて、どうしてなんだ?と立ち止まって考えました。私の考えは、大手になるほど顧客の組織を動かすのが難しいからです。

大手になるほど、価値観の異なる様々な人への社内説得のロジックやストーリーが必要になります。この社内説得を進めるには、ただ製品資料を投げても、その「武器」だけじゃ説得しきれないわけです。
「なんで今なの?うちならどう使えるの?似た事例は?誰がやるの?どんな数字が改善するの?今使ってるツールじゃダメなの?費用対効果は?これまでと何が違うの?現場の意見は聞いた?」など、普通は新しい取り組みの話は、上司や役職者にタコ殴りにされます。

なので、製品資料があるうえで、じゃあうちなら何故導入する必要がある?が言えないといけないわけです。だから後述の仮説の話が重要になると理解しました。

【営業の型化 SMB】SMBは営業人数と商談効率性の勝負

SMBの場合は、顧客組織内の人数が少なく、決裁者の判断で即契約が可能です。
ロジックもエンタープライズほど作り込まなくていいです。社長が気にいるかで受注が決まることもあり、ロジックよりも感情や関係性が重要なこともあります。
エンタープライズに比べて社数がかなり多いため、自社の製品説得ロジックに当てはまる顧客に当たり続けるという考え方があります。感覚的にはSMB向けの対応はセールスよりはマーケティングにも近くなるでしょう。
また、私はこの記事を読んだあとに千葉さんに、もう少し突っ込んでSMBのお話をヒアリングしたのてますが、SMBは顧客数が多い分、必要な営業人数も多くなるというお話をされていて、それは実はリスクになり得るという観点も触れていました。
優秀で文化に共感した営業人材を増やし続けることは困難で、SMB対応のために営業人数を増やしていったときの組織拡大失敗のリスクが孕んでいるというわけです。

とすると、優秀なメンバーのみで固めて営業一人当たり売上が大きいエンタープライズとの取引に営業のリソースを寄せる、という意思決定もあるでしょう。

【営業の型化 仮説提案】顧客仮説作りの徹底

千葉さんの話では仮説の重要性について触れられていますが、顧客仮説作りのレベルについてはかなり差が出るでしょう。
私の経験として、大手顧客は、自社と同じレベルで会話出来る営業じゃないと話したくないんだろうなと感じます。いや、規模は関係ないです。どんな人でも会話の中で自分らと同じレベルで話せる相手なのかは見極められてますし、厳しく見極めるつもりがなくても会話をするうちにわかるものです。

大手企業の場合は、付き合うと年単位になりますし、関係者も多くなります。となると、年単位で複数人(役職者など責任ある立場の人もいる)に会わせても良いと思える営業なのか、という目線になるでしょう。
だから、大手企業の自社用語、自社戦略、自社事情に精通してる必要があるんだと思います。これらざわかっていないと、提案がトンチンカンで方向性がズレます。

外部情報でわかる限り調査して、それでも内部事情は分かりきれないのでヒアリングで補足する。千葉さんは顧客に関する検索できる情報は全部調べてインストールするのが当たり前、と記事の後に私に話しくれました。
この努力をしているかどうかで成約率や成約金額が変わってくるものです。
※たまたまちょうど同日に、書籍「仮説起点の営業論」の著者の鈴木眞理さんとお話ししてたのですが、鈴木眞理さんもおそらくSAP時代に大手営業で相当この仮説作りについては上司に厳しく指導されていたんだと想像できます。

【営業の型化 型化しないもの】 40%の遊び

千葉さんは記事の中で、40%は遊び(余裕)を入れるという話をされています。型はそもそも、すべてのケースを想定して作りきることは出来ないものです。
というのも、顧客の会社を動かすために必要となるタスクや観点は多くあります。全てが同じ通りの型で上手くいくものではありせん。
ただし、基本を押さえていないと、そもそも商談の土台にも乗りません。大手企業は大手企業と同じレベルの仕事水準を求めるのです。基本の型を押さえつつ、型のアレンジや、型からの思考やアクションに個々のオリジナルを入れる。それは許容するというのが、千葉さんの考える型理論で、これは私も完全に同意です。

例えば大手企業向けの営業であれば、調査項目や、仮説検証のためのヒアリング項目などは型化出来るでしょう。ただ、そのヒアリング項目を時にまたアレンジしたり、集めた情報をどう解釈するかは、オリジナルで進められる。型というのは、すべてを縛るものではなく、50〜60%程度の完成度で、残り半分は自分で考えられるくらいの設計がほど良いというわけです。

【営業型化 マネジメント】 マネージャーによるやりきり

千葉さんの記事を読んでいてわかったことは、型というのは「当たり前基準」なんだということです。
組織のメンバーが、当たり前基準に達していない=当たり前に出来ていない場合に、敏感にセンサーが反応して、型通りやろうと指摘し合う必要がある。そんな当たり前センサーが機能してる状態が、型化ということなんだと。
そしてこれは、マネージャーこそがその規範を見せなければならないんだと千葉さんの話から学びました。

マネージャー自体が型通りやっている。当たり前基準を高く貫いている。そして型から外れている場合は指摘する。型化とは、噛み砕いていえば当たり前基準の底上げで、これはマネージャーの徹底が鍵になります。
そのうえでは、型作りとはマネージャー研修が実は重要です。マネージャーがやらなければメンバーもまずやりません。ですので、型=当たり前基準をマネージャー全員が実践出来ており、メンバーが出来ていないとマネージャーのセンサーが働く状態。これが営業組織の型化なんだ、と私も納得しました。

【営業の型化 型と組織】型作りは実は組織論

そして、そもそもマネージャーが指摘する当たり前基準にメンバーが従うには、マネージャーとメンバーの信頼関係が重要だと思いました。
マネージャーのように振る舞おう、とメンバーが敬意を抱いている組織力。メンバーは皆、マネージャーの話は腹落ちしている、という組織になってること。実は型化とは組織論なんだとも言えそうです。
とするの、採用や人事評価の戦略とも型化の話は絡んできます。マネージャーへの敬意がない組織は、型が機能しません。

優秀なマネージャー採用をするのは当然として、マネージャー自体が会社の文化を体現している、高い当たり前基準を持っている、価値観や仕事の水準が高い人こそ、高い評価をしてマネジメントレイヤーに引き上げる。
この組織作りを厳格に行うことで、マネージャーへの敬意あるチームに変わり、その結果として型=当たり前水準の高い営業組織になるのです。

【営業の型化 PDCA】 強い個によるブラッシュアップ

これも千葉さんの話から学んだのは、型というのは当たり前基準なので、その当たり前基準にするべきなのは、結果が出てて優秀な人が一番いいという考え方です。
優秀な人は当たり前の基準も高いもので、成功のための因果論やルールを持っています。
その成功のルールを言語化し、型にして、マネージャー全員が実践し、メンバーもマネジメントのうえ型通りに乗っかっている状態。これが型化です。
型が磨かれるほど組織全体のレベルが上がるので、型にもPDCAがあるわけです。

P: 当たり前水準を言語化する →D: 型としてマネージャー中心に実践する →C: メンバー浸透、追加で求められる当たり前水準を整理 →A: 型をさらにブラッシュアップ の「型のPDCA」が型化のさらに先にある理想系だとわかりました。

【営業の型化 型化のタイミング】 事業スタートは属人化から

事業スタート段階ではどんなに優秀な人でも結果が出なくて、何故ならそもそもプロダクトや提供価値が正しいかわかってないからです。
千葉さんの記事にもありましたが、PMF前状態で型化しても、そもそもの成功の因果律がないので型自体が機能してないし信じられないので型化が失敗する、つまり型化には然るべきタイミングがあるのだと理解できました。

型作りとは、それ以前に売れる、売れて満足している状態がまず先にあって、そこから逆算してポイントやプロセスを押さえるべきなのでしょう。
私もよくopenpageの経営で外資系や有名企業出身者のノウハウ注入でうまくいかなかったことを経験しているのですが、自社事業の成功体験を固まることなしに外部のフレームワーク、外部の成功体験をそのまま導入しても上手くいかないという話なのだと思います。

【営業の型化 顧客対話数】 人や組織の解像度

千葉さんの視点でなるほどと思ったのは、人や組織の変数が多いので、重要なポイントを押さえている人は、シンプルに顧客対話数が多いんだということです。顧客対話数が多い人の話を型のベースにすることが変数の抜けを防ぐことが出来そうです。

藤島の営業の型化に対しての整理

なぜ型化に失敗するか、千葉さんの話を整理しつつ、自分なりの異なる観点も加えて考えてみました。自分の整理は下記になります。
通常業務のひっ迫
②PMF前、揺れ幅の大きさ
③言語化のスキル不足
④マネージャー不在
⑤顧客対話量の不足
⑥強い個、強い成功体験がない
⑦型不在のデメリットの許容(縄張りは気持ちいい)

①特に事業スタート時期は通常業務自体が人が足りずにひっ迫しています。目の前の業務を回すので手一杯だと、+αで型を作ったり、型を意識して業務をしたり、型をメンバーに教え込むという余裕がありません。

②PMFしている前だと、顧客ニーズや提供価値の振れ幅が大きく安定していません。どの価値を元に型化するかで成果が変わるため、型化の判断がつきません。

③型というのは言語化、明文化とイコールです。
そもそも言語化が出来ないと型になりません。
言語化はロジカルシンキングや慣れが必要で、一朝一夕では身に付かず、これが出来る人材なしに型は作れません。

④マネージャーが不在だと型も機能しにくいです。
牽制機能が働きません。型から外れても無法地帯になります。

⑤顧客対話量が不足していると、型にするべき正しい情報量が足りなくなる。成功するかわからないので型自体の信用に乏しく、型になりえません。

⑥そもそも成功している強い個人がいないと、型の元ネタがなくなるので型作りができません。

⑦型不在のほうが一部の先輩社員が縄張りを作れるので、正直気持ちいいものです。人の承認欲求を満たします。人は上に立ちたいという欲求は強いものです。出世したい、役員になりたいなど誰もが考えます。
承認欲求が悪い方向にいくと、自分以外の人を落とすことで自分の欲求を満たすことになり、個人の欲求満足(支配力や優越感、先輩風)のため型作りが後回しになるわけです。

営業の型化への対策と条件

とすると、型化が出来る状況、条件は下記になります。
①通常業務+αをやり切れるよう、外部のサポートも借りる
②PMFのスピードを早める
③言語化やロジカルシンキングが得意なメンバーを採用する
④マネージャー採用・育成の徹底
⑤トップ営業の採用
⑥承認欲求は縄張りやマネジメント人数ではなく、奉仕やナレッジ共有で満たす文化とする

これら型化の対応は言葉にするのは簡単ですが、実践はなかなか大変です。弊社もopenpageを活用した営業の型化やデジタル化の支援を行っております。
もし営業の型化にお困りの企業の方はopenpageにご相談ください。ご一緒に改善に向けて考えます。