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「まじめ」過ぎるのはどうなのか? スピノザを半端に理解してみた

日頃から、日本人はまじめすぎると言われ、事実、まじめな人の方がうつになりやすいなどとも言ったりもします。「まじめ」とは何なのか、それがまず問題になるかと思いますが、責任感があるとか、他人の期待に応えようとするとか、やるべきことやきっちりやり遂げるとか、ルーズなところがない、といった感じでしょうか。職場では重用されるものの、自分でストレス管理などをしないと、疲弊しやすいようなタイプかと思います。反対で言えばちゃらんぽらん、いい加減といった特性があるでしょうか。

突然専門的な用語を使えば、こういう人は精神分析学で言う「超自我」が強い人かと思います。超自我が厳しい(過酷)と言ってもいいかもしれません。精神分析学の創始者、フロイトはこころ全体を3つ(自我、超自我、エス)に分割したモデルを提唱し、こころの障害を理論化したり、治療をしたりしましたが、「超自我」は行動や考え方の規範となるものです。育ってくる際に主に親や周りの大人(先生など)、学校等々で「こうあるべき」というところを言われたり、示されたりします。それがこころの内に取り込まれた(内在化された)ものが超自我であると言えます。

遺伝的な性格などもないとは言えませんが、幼少時の親とのやり取りは大きいと考えます。往々にして、「遺伝性」「生まれつき」などと言われているものの中に、記憶に残る以前の(2,3歳以前の)育ちに由来しているかもしれないというものの片鱗を見ることがあります。最近とみに注目を浴びている、「非言語」「非認知」と言われているようなものです。(「非認知」というのも変な言葉で、認知=言語ではないので、たとえ非言語的なものでも「認知」ではあるのですが・・・)

たとえば、「勉強しなさい」と言われた記憶はないけれど、勉強をするようになっていたというのは、そのように態度で示されたとか、他人に対し批判や賞賛をしていたとか、大人の言うこと(価値を置くこと)には従うべきだといったことを、早い内に学んだ、ということになります。

ひどい場合はこうした早期に習得された「学び」の融通が利かず、がんじがらめになって、もっと自由でなければならないときにも身動きが取れなくなっている場合もあります。会社や職場の状況もあるとは言え、疲労が蓄積しているのにそこから自分を解放して回復を図るということがなかなかできないとしたら、そこには超自我も絡んでいるのではないかと思われます。

さて、哲学はなんとなく難しいな・・・と思いつつ、最近ちょっとしたきっかけでスピノザについて読もうとしています。スピノザは16世紀? オランダのユダヤ人ですが、「神」(超自我の権化みたいなものです)から人間は良心というものを与えられ、「良心の呵責」というものがあるがために、より自由になれるはずのためのところを制限されてしまっている、と考えたようです(半端な理解なので間違っているかもしれません)。

これには当時もその後も賛否両論あるようで、「より自由に」と言ってもそれでは人を傷つけたり人を騙したりして良いのか、という話になっていきます。しかし心理臨床をしてきたものとしては、ふつうの人たち(いわゆる私たちが「神経症圏」と呼んでいる、それより深刻なレベルの障害に陥ることはなく、通常悩みなどはあれど職業生活や家庭生活などが送れる人たちを指します)は「もっと自由」「もうちょっと自由」であれるところから、少し、あるいはだいぶ「内側」に制限されてしまっていることが多いのです。これをスピノザは言いたかったのではないかと、私が勝手に解釈しているわけです💦

「まじめ」過ぎるのは、人生のどこかで人から与えられた規範に従いつづけているからかもしれません。また、それを与えてくる(場合によっては強制してくる)人や組織などが入れ替わっていくだけで、自分の態度や状態としては変わっていないのかもしれません。

仕事を変えるのも自由、仕事のやり方を変えるのも自由、休みの日になにをするのも自由、疲れたら休むのも自由、人とどうつきあうのかも自由・・・のようにしていくと、自由が多すぎて溺れるような感覚はあるかもしれません。が、それだけ決まり切った、多くは受身で考えていないやり方・生き方をしてしまっている場合も、多いのだと思います。

スピノザは悲しみという感情を、「小さな完全性」に移行する動きの中で感じられるものと考えた、とありましたが、今ある自分より少しだけ自由に、少しだけ制限を緩めていくようにしていくことが可能であり、自己実現への道なのではないかと思います。

参考文献: 浅野俊哉・著『スピノザ 〈触発の思考〉』(2019年、明石書店)

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