のあ

大切に思ってた人を自死で亡くした人間が、その気持ちを忘れたくない一心で綴ったノンフィク…

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大切に思ってた人を自死で亡くした人間が、その気持ちを忘れたくない一心で綴ったノンフィクション。 ※ただし、名前は全て仮名に書き換えています。 ヘッダー写真は、この記事では"エミちゃん"という名前で登場する亡き親友本人。

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00:前書き

2023年1月、とても身近でとても親しかった人を自死という形で亡くした。 内容が内容だけに、身近な人達は皆、その話題に対しては遠慮勝ちで、触れてはいけない事はないにしても、どことなく避けている風にすら感じられた。 そうこうしているうちに、いつしか時間は経ち、自然と立ち直っていった(様に見える)人、そうではなく今でもモヤモヤを抱えている(だろう)人に分かれ、ますます話題を口にする事が難しい空気になっていった。 自分は後者。 モヤモヤは溜まる一方で、どこかに吐き出したい気持

    • 37:夢

      ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 今朝方、夢を見た。 すぐに夢とわかった。そこにいる筈がないエミちゃんがいたから。 長閑な場所にいた。 と言っても、絵画の中や旅行番組に出てくる様な、日常離れした長閑さではなく、観光などで普通に行きそうな、生活感がある長閑さだった。 周りにも人がいて、二人きりという状況ではなかった。 何をする訳でもなく、エミちゃんと喋っていた。 大まかにそれは、オレとエミちゃんの関係が特に濃かった、2022年という1年間を振

      • 36:とうとう消えてしまった

        ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 久し振りにクボさんに声を掛け、一緒にイナダさんが経営する"あの"Barに顔を出した。 ヒロやノリさんなど、久し振りに顔を合わせるイツメン達。 当日スタッフで入っていたメグミちゃんとも久し振りだった印象。 元々、酒が弱いくせに酒飲みで"やらかし"が多いヒロが、この日も上機嫌で大声を出していたのだが、ちょっと中抜けで他の店に行き、そこで大迷惑を掛けてきたらしく、戻って来たヒロに対し、クボさんが強めの説教をしたのだが…

        • 35:やはりあなたは…

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 前回の記事で、オレの周りからどんどんエミちゃんの名残が消えて行っていると書いた。 その中に、エミちゃんの親友だったヨシノさんも自身のSNSの記事を全て消してしまった、とある。 昨年のエミちゃんの誕生日当日には、たくさんのエミちゃんとの写真と共に、お誕生日おめでとうと書かれた、その中に少しのごめんなさいが隠れていたポストをアップしていた。 そのポストを含めた全てを消してしまい、その後活動をしている様子もなかった、と

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        00:前書き

          34:それから

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 四年に一度の2月29日だし、折角だから何か書いておこう。 エミちゃんが亡くなって随分と経ってしまった。 一周忌を迎え、そして更に2ヶ月くらい経った。 一周忌の時こそ、自分を含めた極少数の人が、SNS上でその件に触れたが、あれからエミちゃんの名前を口にする人は誰もいなくなった。 メグミちゃんとも、ヨーコちゃんとも、ヒロとも、誰と会っても、何度会っても、エミちゃんの話題を出す人はいなかった。 そして、オレ自身の周

          34:それから

          33:遺書

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 遺書とはどの様なものだろう、想像した事はある。 あさのますみさんの著書【逝ってしまった君へ】を読んだ時 作中に、遺書という物の存在を具体的に表現されているのを読んで、遺書というものがどんな物なのか、自分の想像とやや違う事を知り、そしてエミちゃんの遺書はどんな物だったんだろう?と想像した。 とても細かいところまで気を配るエミちゃん、とても字が綺麗だったエミちゃん、恐らくは何枚かの便箋の様なものに謝罪と感謝を綴ってい

          32:ヨシノさんの本音は

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 先日、エミちゃんの44回目の誕生日だった。 と言っても、エミちゃんはもう歳を重ねる事はない。 オレは、今となってはもう見る人もほとんどいないであろう、昔は招待制だった、いにしえのSNSの彼女のページで、こっそりお祝いをした。 そこに書かれたメッセージから、彼女の死を未だ知らない人達に、"察してください"という裏のメッセージをお節介から込めたつもりでもいた。 事実、別のSNSではオレのポストがキッカケでエミちゃん

          32:ヨシノさんの本音は

          31:二年目の誕生日プレゼント

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 ここまでは過去の話を書いてきた。 記事の内容が現実の時間に追いついた為、ここから先は現在進行系、起きた事を起きた時に書いていくので、更新ペースは不定期に、また遅くなる。 つい、今しがたの話である。 探し物をしていた。 それはなかなか見付からず、普段は開けない場所も探した。 しかし探し物は見付からなかった、が。 代わりに、未開封の何かを見付けた。 綺麗に包装紙で包まれた箱、更には外側の袋まで綺麗に折り目を付けら

          31:二年目の誕生日プレゼント

          30:ねぇ、エミちゃん

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 あなたが亡くなって、もう随分と時間が経ってしまいました。 でも、実はまだ1年も経ってません。 一年って本当に早いよね、なんて言います。 実際、本当に早いんだと思います。 でも、今のオレに取っては、あなたを亡くしてからの時間はとても早く感じるけど、あなたがいない時間はそれほど早く感じません。 あなたとの約束を心待ちに毎日を過ごしてた時は、本当に毎日が早かった。 あなたと過ごしてた時間は、もっと早かった。 今

          30:ねぇ、エミちゃん

          29:手作りのケーキ

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 その後もヨシノさんは本当に色々な話をしてくれた。 エミちゃんは本当に秘密主義な子で、ヨシノさんでも知らない事が多かった事。 ヨシノさんが病気になった時にわざわざ家まで来て色々とお世話をしてくれた事。 なのに、エミちゃんが病気になった時は、お礼にと思ってお世話に行ったのに、家に入れてくれなかった事。 職場に安否確認に行った時に、在籍無しって言われた理由。 エミちゃんが亡くなって、エミちゃんの元彼が頭を丸めてご両

          29:手作りのケーキ

          28:ヨシノさんとの会話

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 結果的にヨシノさんの方からオレに接点を持って来た。 いや、オレも接点を持とうとしていたのかも知れない。 オレがヨシノさんがいた輪に、オープンスペースな酒の場特有の「どう?飲んでる?」というノリで乱入したのだ。 それを機会と見たかの様に、ヨシノさんはオレに話し掛けてきた。 恐らく、メグミちゃんがヨシノさんにオレの事を説明してくれてたんだろう。 二人が同じタイミングでオレの方を見た、あの時に。 のあさんですか?私

          28:ヨシノさんとの会話

          27:ヨシノさんとの出会い

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 夏、イナダさんのお店である"あの"Bar主催でバーベキューが行われた。 "あの"Barに通って8年になるが、この様なイベントを主催しているとは知らなかった。 Barのスタッフであるメグミちゃんが声を掛けてくれたものに、二つ返事で参加を決めたものだった。 のちにメグミちゃんから、こんな連絡があった。 このバーベキューに、ヨシノちゃんも来るんだって。 もう、コガくんやマイちゃん、ヨーコちゃんやユミコさん、クボさん

          27:ヨシノさんとの出会い

          26:結局、お別れさせてもらえなかった

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 この記事には一度も『お葬式』や『お墓参り』というワードが出ていない事に気付いただろうか。 そう、我々は誰も"お別れ"をさせて貰えてないのだ。 我々は誰も、エミちゃんのご家族と交流が無く、もちろん連絡先も知らなかった。 だから、行方がわからなかった時も捜索願を出せず、亡くなってしまった後もご家族の連絡は警察に任せた。 我々身近な友人たちに遅れる事1日、エミちゃんの自死が報告されたご家族は大変なショックを受けられた

          26:結局、お別れさせてもらえなかった

          25:君の名は…?

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 エミちゃんはバツイチだ。 これはエミちゃん本人も隠さず言っていたし、みんなが知っていた。 じゃあ、エミちゃんの苗字は、離婚した元旦那の苗字か?それとも出生時の苗字か? そんな事は一度たりとも考えた事はなかった。 エミちゃんの苗字はササキだった。 ササキエミ、それが彼女の名前だった。 本人もあっちこっちでその名前を名乗っていたし、彼女のSNSもそうなっていた。 ビジネスの場では名刺というものが存在するし、そこ

          25:君の名は…?

          24:逝ってしまった君へ

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 あさのますみさんという方の著書に【逝ってしまった君へ】という書籍がある。 2021年6月に出版されたこの本を知る切っ掛けになったのは、あさのさんのnoteであるが、何故か興味を持ったオレは2021年秋頃に購入した。 あさのさんが学生時代に付き合っていた元恋人で、特別な友人だった男性が突然自死を選んでしまった、そんなノンフィクション作品であるが、結局自分の悪い癖で、途中まで読んで投げ出してしまった。 縊死という形で

          24:逝ってしまった君へ

          23:虫の知らせか?

          ※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。 最初の月命日を終え、エミちゃんが亡くなってから1ヶ月を過ぎた事をきっかけに、オレはそれまでこの事について全く触れなかったSNS上で、公開範囲を絞った上で少しずつエミちゃんが亡くなった事について触れ始めた。 そのポストを読んだだろう人達から、連絡が相次いだ。 エミちゃんが亡くなった当日、もしくは翌日くらいまでに"情報の第一波"で知った人達、それに漏れた人達に伝える"情報の第二波"に、オレのポストが成った様だった。

          23:虫の知らせか?