32:ヨシノさんの本音は
※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。
先日、エミちゃんの44回目の誕生日だった。
と言っても、エミちゃんはもう歳を重ねる事はない。
オレは、今となってはもう見る人もほとんどいないであろう、昔は招待制だった、いにしえのSNSの彼女のページで、こっそりお祝いをした。
そこに書かれたメッセージから、彼女の死を未だ知らない人達に、"察してください"という裏のメッセージをお節介から込めたつもりでもいた。
事実、別のSNSではオレのポストがキッカケでエミちゃんの死を知った人が一定数いる。
別のSNSを眺めていた時に、とあるポストが目に入った。
ヨシノさんのポストだった。
そこには、エミちゃんの名前こそ書かれていなかったながらに、ヨシノさんとエミちゃんが一緒に写ったたくさんの写真と共に、"お誕生日おめでとう"と書かれていた。
そして、多分リアルではこんな感じのキャラで話していたんだろうな、と感じる少々上から目線な文面で、色々とクドクド書いている風な文章の中に、エミちゃんに向けられた"ごめんなさい"という言葉が隠されているのを見つけた。
その文章から、やっぱりヨシノさんはエミちゃんを本気で嫌っていたわけでは無かった事、仲直りしないまま終わってしまった事を悔いる気持ちが滲み出ていた。
いにしえのSNSとは違い、大勢の仲間が今でも活動しているこっちのSNSでは、これまでの雰囲気も考えてエミちゃんの誕生日に触れるポストをするのはやめておこう、そう思っていたのだが、ヨシノさんのポストに触発されて、やっぱり書くことにした。
エミちゃんとオレの共通の仲間達から、たくさんのリアクションがあった。
オレが知っている人の中で、こうしてSNSでエミちゃんの誕生日をきちんと記事にしてポストしたのはオレとヨシノさんの二人だけだったが、みんなの気持ちの中に、ちゃんとエミちゃんがいる事がわかった出来事だった。
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