26:結局、お別れさせてもらえなかった

※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。

この記事には一度も『お葬式』や『お墓参り』というワードが出ていない事に気付いただろうか。

そう、我々は誰も"お別れ"をさせて貰えてないのだ。

我々は誰も、エミちゃんのご家族と交流が無く、もちろん連絡先も知らなかった。

だから、行方がわからなかった時も捜索願を出せず、亡くなってしまった後もご家族の連絡は警察に任せた。

我々身近な友人たちに遅れる事1日、エミちゃんの自死が報告されたご家族は大変なショックを受けられたと言う。それはそうだろう。

その為警察から、こちらからの接触を試みるのは好ましくない、とされた。

こちら側は、代表者としてユミコさんの連絡先を警察に伝えてある。
だからこそ、訃報の一報がユミコさんに来たのだ。

なので、ご家族には『前日にお友達が、ずっと連絡が取れないと警察に相談してきた』という"事の経緯"の説明と共に、ユミコさんの連絡先が伝わっていると思われる。

実はエミちゃんの遺書があった、葬式は無事に済んだ、どうやら自宅の遺品整理が始まったようだ、と、小耳に挟んだ程度に聞き及んだが、それは自分の手が届かない遥か遠いところで起きた出来事だった。

葬式が終わり、四十九日が終わり、そして初盆が過ぎた。

結局、誰もご家族から連絡を貰う事は出来ず、誰もお別れをさせてもらえなかった。

我々のグループだけではない、エミちゃんが過去に付き合っていた"元カレ達"や、とても仲が良かったとされる元親友のヨシノさんすら、お別れをさせてもらえなかったそうだ。

オレは、きっとご家族からの連絡はもらえないと予想していた。

それはそうだろう。

我々から見てエミちゃんは、とても大切な仲間だ。

しかし、ご家族から見れば我々は、娘を死に追いやった憎むべき相手、だからだ。

その事は、比較的早い段階にユミコさんやクボさんに発言している。

しかし、現実にそうなってしまうと、やはり寂しいしモヤモヤも晴れない。

今でこそオレは、とある方法(もちろん合法)により、エミちゃんのご実家の住所も電話番号も知っているが、だからと言ってご家族の誰かと接した事があるわけではないし、今更こちらからアクションを起こすなんて到底出来ない。

今日も、きっとどこかにある"タケダ姓"のお墓に眠る"ササキ姓"のエミちゃんを想う。

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