35:やはりあなたは…

※登場人物は全て仮名です。また一部詳細を変えています。

前回の記事で、オレの周りからどんどんエミちゃんの名残が消えて行っていると書いた。

その中に、エミちゃんの親友だったヨシノさんも自身のSNSの記事を全て消してしまった、とある。

昨年のエミちゃんの誕生日当日には、たくさんのエミちゃんとの写真と共に、お誕生日おめでとうと書かれた、その中に少しのごめんなさいが隠れていたポストをアップしていた。

そのポストを含めた全てを消してしまい、その後活動をしている様子もなかった、と書いた。

昨夜、久し振りにヨシノさんのポストが上がっているのを見掛け、活動を再開したのか?と思って見てみた。
何の取り留めもないポストだったが、フッと思い立って過去を遡ってみた。

沢山のポストがあった…。
そんな…ヨシノさんのポストは全て消えている事は何度も確認した。
しかし、それらのポストには全て、それ相当数のリアクションやコメントが付いていた。
つまり、急にアップしたモノではなく、きちんと書き溜めて行ったポストだという事。

もうしばらく遡ると、自分でも見覚えがある、エミちゃんのバースデイのポストを含んだ沢山のポストがあった。

ヨシノさんがポストを消したのではなく、オレ自身がヨシノさんのポストの公開範囲から外されていた…?

それを昨日だか一昨日だかに公開範囲に含められたという事になる。

何故?
オレがヨシノさんに嫌われる様な事でもしたのか?と思って、試しにポストの一つにコメントを入れてみたら、ちゃんとコメントがリアクション付きで返って来た。

何故だろうか?そこは疑問が残るとして、エミちゃんの一周忌の日に書かれたポストがあるのを見付けた。

そこには、職場でメンタルが不安定な人がいて、その人の異変に気付いたヨシノさんが1年間掛けて向き合い、やっとの事でその人の本心を引き出す事が出来た、とあった。

ヨシノさん自身も衝撃だったと書いているのが、追い詰められて自ら死を選ぶ直前まで行っていただろうその人は、まるでその自覚が無かったんだそうである。

きっとエミちゃんも同じ状態だったんだろうという事に初めて気付かされた、本人に自覚がない場合があるという事を知ることが出来た…そう書かれた文章の結びに、少し遅かった、ごめんなさい、と書かれていた。

誕生日の日に書かれたポストでは、遠回しに書かれていたごめんなさいだったが、今回はストレートにエミちゃんに対してだとわかるごめんなさいだった。

界隈の人達の間では、エミちゃんとヨシノさんが大親友だった、しかし仲違いしてしまい、修復不可能な程険悪な関係になってしまった、とされていた。みんなが知っている事だった。

しかしヨシノさんという人物を知らなかったオレは、初めてヨシノさんと面識を持ち、亡きエミちゃんの事を語り合った時に、この人がエミちゃんに対してそんなに悪い感情を持っている人とはとても思えない、と思った。

やはり…今尚、ヨシノさんも様々な後悔に苛まれている。
喧嘩したまま、仲直り出来ないまま終わってしまった事を悔いている。

身近な人が自死という結果を迎えてしまった場合、周りの人達は"亡くなってしまって初めて知る事になった今の知識と感情"を、それを知らなかった頃の自分に当てはめ"あの時こうしてれば…あの時に何故気付けなかったのか…"と悔いるという。
自分自身も例に漏れず、そういう後悔が沢山ある。

ヨシノさんも、そういう後悔を抱いている。
我々と同じ気持ちでいる。
エミちゃんの事を大嫌いなんかじゃないんだ。

そう確信したのと同時に、未だに"あの二人は犬猿の仲になってしまった"と思われ続けるのは不憫だと思った。

また、ひょっとしたらこのポストを書くために、オレを一時的に公開範囲から除外したのかも…とも。

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