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【#85】テスト勉強あるある

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

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2000年(平成12年)2月16日【水】
半蔵はんぞう 中学校1年生 13歳

 

学年末テストまで、あと1週間前だ。寄り道しないで帰って勉強しろよ。では、挨拶」

「きりーつ、気をつけ、礼!」



 

帰りの会が終わった。

教室を勢いよく飛び出し者もいれば、残っておしゃべりに興じる者もいる。

 

「おーい、半蔵!久しぶりにウチ来ないか?」

 

教室の入り口で、イイケンが手を挙げている。

普段はお互いに部活があるので、もう半年も遊びに行っていない。

学年末テストが大事なのはわかっているが・・・・・・

 

(まだ1週間もあるから、いいだろ)

 

鞄に教科書やノートを詰め込み、イイケンの元に向かった。

 

2000年(平成12年)2月17日【木】

 学校から帰り、1時間ほど勉強したところで、少年の日の思い出の復習が終わった。

 【※】
中学校1年生の国語の教科書に掲載されている小説。

「蝶集め」に夢中になっていた少年が、隣に住む『エーミール』が持つ、貴重なヤママユガの標本を握りつぶしてしまう話。

「そうか、そうか、つまり君はそういうやつなんだな」というエーミールの言葉が、主人公を含め読者に突き刺さる物語である。

 

『国語1』光村図書出版
(平成27年3月6日文部科学省検定済)
甲斐睦朗ほか


 

「息抜きも必要だな。よぉし・・・・・・」

 

僕は、ドキドキしながら、そのゲーム機・・・・・・の電源ボタンを押す。

 

 

「ビュゥーンビェェンン…シュワッ(テロッ)ポーーン……キラキラキラ」

 

不気味な起動音と共にゲームが立ち上がる。

 


 

イイケンから借りた、プレステである。

昨日遊びに行ったとき、

「前のテストでひどい点数取っちまってさ。親父が『俺もゲームを我慢するから、お前も我慢しろ』って言うんだよ」


とくやしそうに言いながら貸してくれたのだ。

 

(裏切るようで、ごめんな)

僕は、愛機セガサターンに謝りながらコントローラーを握る。

どうしてもやってみたいプレステのソフトがあるのだ。

 

 

出典:youtube(下記リンク)
モンスターファーム(PS1) RTA ティラノパープル 【1:28:07】 無編集
配信者:01かっこうさん

 

モンスターファームである。


【※】
 『あなたのCDから、モンスターが誕生する!!』それだけで、チビッコたちの心を鷲掴みにしたゲーム。1997年7月24日にテクモから発売された。

 手持ちの音楽CDやゲームのCD(サターンのCDでもOK)から、モンスターが生まれるのが、感動的だった。

 それだけでなく、モンスター育成も楽しかった。基本的に1体ずつ育てるので、キャラクターに愛着がわく。苦労して育てたモンスターで、大会を優勝する・・・・・・実に達成感があった。


 

 

息抜きに、15分だけプレイしたら勉強を再開しよう。

15分だけ。

15分だけ・・・・・・。

 

 

2000年(平成12年)2月18日【金】


制服を脱ぐと、僕はため息をつく。

 

プレステとモンスターファームは、カーチャンに取り上げられてしまった。

 

『15分だけ』と思って始めたのが、あまりにもおもしろくカーチャンが帰ってくるまでやり続けてしまったからだ。

 

(さすがに、今日から勉強しないと・・・・・・)

 

テストまで残り4日。

気持ちを切り替えて、勉強すればまだ大丈夫だ。

 

(それにしても、汚いな・・・・・・)

 

急に、部屋の散らかりっぷりが気になってしまう。

漫画が出しっぱなしで、脱いだ服や靴下がいたるところに散乱している。

 

(これじゃ集中できんな。そや、まずは掃除だ!)

 

漫画を本棚に戻していると、とある漫画が目につく。

小学生の頃は夜に読めなかったけど、さすがに今は平気だな。

 

そう思って適当な巻を抜き出した。






 

『地獄先生ぬ~べ~』2巻
原作:真倉翔・作画:岡野剛


『やっぱぬ~べ~は怖い!!』


【※】
 『地獄先生ぬ~べ~』は、1993年から1999年まで『週刊少年ジャンプ』で連載されていた漫画。

 基本的に一話完結タイプの話で、毎回必ず『怖い絵』が出てくる。ジャンプを買った時は、『ぬ~べ~』を読み飛ばすことなくきちんと読めるかどうかで勇気の度合いがわかる。

 あなたのトラウマ回は、何ですか??😈


気が付けば、僕は『ぬ~べ~』に、のめり込んでいた・・・・・・。

 



2000年(平成12年)2月19日【土】

 

「ここなら、安心だ」

 

平日、僕が勉強できなかったのは環境のせいでもある。

自宅だと、『甘え』が出る。

 

自らを厳しい環境に追い込むため、僕は図書館に来ていた。

 

駐輪場は、『長良川中学校』のシールが貼られた自転車であふれていた。

(みんな、頑張ってるんだな)

 

3階に設置された学習室に入ると、思わぬ人物に出会った。

 

「あ、半蔵じゃん。久しぶり」

 

美緒である。


中学校の校舎は広い。

同じ小学校出身でも、クラスも部活も違えば、顔を合わすことは少なかった。

 

 

 

「元気にしてるか?」

「元気に決まってるじゃない」

 

そう言って、美緒は笑う。

ショートカットの美緒を見るのは、新鮮だった。
特徴だったポニーテールをバッサリ切ったのは、テニス部に入ったからだと誰かに聞いた。


 

「半蔵も勉強しに来たの?」

「あ、あぁ。そうだ」


 

小学校の頃は、普通に話せたのに。

ちょっと緊張するのは、なぜだろう。

ショートカットの美緒に慣れないからか・・・・・・?

 

「君って、4組の服部くん?」



美緒の隣にいた男子が聞いてきた。

 

「俺は2組の清水。バスケ部なんだよね?練習がんばってるってクラスの奴が言ってたよ」

 

清水君が笑顔で言うと、白い歯が見えた。
黒ぶちの眼鏡をかけており、とても頭が良さそうだ。
2組ということは、美緒と同じクラスか。

 

美緒が、周りをキョロキョロ見回したあと、小声で言った。

 


「あのね、私たち・・・・・・付き合っているの」

 

2000年(平成12年)2月22日【火】

 

「テストが終わって最初の部活だ。気合入れろよ」

「はいっ!!」

 

テストの結果は、散々だった。

結局、土曜日の図書館でも集中できなかった。

 

日曜日には「一日30時間勉強する」というジャックハンマーみたいな目標を立てたが、そんなことができるわけもない。

 

板垣恵介『グラップラー刃牙』
42巻

【※】
 『週刊少年チャンピオン』で連載されていた『グラップラー刃牙』(板垣恵介)に出てくる登場人物。
 ある目的のために、過度なトレーニングを己に課す。その結果、一日に30時間も鍛錬することに成功する。(←私も書いていて意味不明)

 『週刊少年チャンピオン』は『週刊少年ジャンプ』に比べマイナーだが、中学生になると読み始める者があらわれ始めた。

 私が初めて『刃牙』を読んだのは、病院の待合室でのことだった。『チャンピオン』を開くと、このジャックハンマーが訳の分からないセリフを言っていて衝撃を受けた。


「半蔵くん、大丈夫?」

 

ボール出しの準備をしていると、姫川先輩に心配された。

よほどひどい表情をしていたらしい。

 

「だ、だいじょうぶです!」

「テスト明けは、ケガのリスク高いからね。集中するんだよ」

 

そうだ、久しぶりに運動するんだから、いつも以上に気をつけないと。
 

「西中に、絶対リベンジするぞ」

「あぁ」

 

たった2人の2年生である鬼木先輩と、櫛田先輩が話している。

 

そうだ、勝つんだ。

 

「私たち、付き合っているの」

 

あの言葉を思い出してる場合じゃない。
なぜ、僕はこんなに動揺しているんだろう。



(つづく)

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