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「重たい」はあるのに「軽たい」はない。なぜ?
日本語を扱う人の99%が気にしないであろうことを、真剣に考察します。
今回のテーマは、「重たい」と「軽たい」。
「このリュック、重たい!」
とは言いますが、
「このリュック、軽たい!」
とは言いません。
なぜなのでしょうか?
これを考えることで「重い」「重たい」「軽い」の三者における、複雑で濃厚な関係が明らかになりますよ。
1.「重い」の前提とは?
「重い」という言葉を使うときには、”動かしうる”という前提があります。
例文を挙げましょう。
⭕重い米俵を買って帰る
⭕小学生は重いランドセルを背負っている
❌ピラミッドは重い
❌富士山は重い
建造物や山など、固定されたものなどに、ふつう「重い」は使いません。
「重い」は、【重力に逆らうときにかかる強い圧力】に感じるものです。よって、持ち上げられる物(≒動かしうるもの)にしか、使えないのです。
![画像3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39462325/picture_pc_ade5af919aa7f9e6bad48ac5c245f94e.jpg?width=800)
私は『天下一品』というお店のラーメンが大好きです。
しかし、どんなにこの店のラーメンが好きでも、この建物を動かすことはできません。
「天下一品の店舗、重い!!」
とは言えないわけです。
「重い」という言葉を使う際、私たちは、無意識下で”動かせるか”・”動かせないか”を判断しているのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1657704069577-HnyPJUBT8L.png?width=800)
2.「重い」と「重たい」の違い
次に「重い」と「重たい」の違いの分析です。
例文をいくつか挙げて、考えましょう。
⭕このリュックは、重い
⭕このリュックは、重たい
⭕その罪は、重い
❌その罪は、重たい
⭕彼は重い役職についている
❌彼は重たい役職についている
⭕地球は月より、重い
❌地球は月より、重たい
「罪」、「役職」、「月」については、「重たい」が使用できません。
ここから導き出されるのは、
――――――――――――
◆重い・・・・・・”持つ・持たない”は、不問!
◆重たい・・・・”実際に持って”、そう感じる!
――――――――――――
ということです。
「重い」は、たとえば、赤ちゃんを体重計で計ったときに、
この赤ちゃんは、重い
というように、【実際に持っていないとき】にも使えます。
![画像1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39457858/picture_pc_5c0aeae6165d3e11b4663d342918473c.jpg)
「重い」は、【実際に持っていないとき】にも使える。
そしてこのときの「重い」の意味は、
体重計で赤ちゃんの重さを計ったら、平均より重かった
という客観的な評価です。
このことから、次のことが言えます。
――――――――――――
◆重い・・・・・・【客観性】のある言葉
――――――――――――
それに対し、「重たい」は【実際に持ってみて感じる具体的な重さ】を言い表す場合に使います。
したがって、”具体的な重さ”がない「罪」「役職」には使えません。
「月」も実際に持つことはできませんから、使えません。
さらに、【実際に持ってみて感じる具体的な重さ】を詳しく説明すると【対象物の重みを、ずっしりと手・腕・肩などに直接感じている】と表現できます。
2Lのペットボトルを6本も買ったので、買い物袋が重たい
という文を読めば、腕、手、指にかかった負担感が想像できるのではないでしょうか。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39459284/picture_pc_fb2211e7b942f924a33d134bc2a16fee.jpg?width=800)
この【重みを直接感じている】が重要です。
「重たい」というのは、【重みを感じている】という主観的な意味を持つのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1657704057977-9CFHK15GoB.png?width=800)
3.「重たい」の主観性
”主観性がある”ということは、”人が評価する”ということです。
同じ物を持っても、人によって評価は変わります。
――――――――――――
◆力が強い人は、10kgのダンベルを「軽い」と評価します。
◆力が弱い人は、10kgのダンベルを「重たい」と評価します。
――――――――――――
そして、「重たい」の場合、この”評価”とは【不快だ、苦しい、負担だ】というマイナスの評価です。
例文を挙げましょう。
⭕私だけ、重たい荷物を持たされている。
⭕布団が重たくて、寝付けない。
⭕この扉は重たいです。
どれもマイナスの評価(不快)が表されています。
理解を深めるために、例文を追加しますね。
⭕五百円硬貨は、一円硬貨より重い
❌五百円硬貨は、一円硬貨より重たい
五百円硬貨について、一円硬貨と比較しても「重たい」とは言いません。
「五百円硬貨が重くて不快だ!」という人は、いないからです。
また、さきほど、《1.「重い」の前提》の項目で、
「重い」という言葉を使う際、私たちは、無意識下で”動かせるか”、”動かせないか”を判断しているのです。
と書きました。
「重たい」を使うときの意識としては、【無意識下では”動かせる”と思ったが、持ってみると意外に重くて不快だ】というものがあると考えられます。
![画像4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/39943483/picture_pc_281a484134755f1d424a937f169e294e.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1657704026649-LOeU3vLiOW.png?width=800)
ここから、次のように言えます。
―――――――――――
◆重たい=「重い」+「マイナスの評価」
―――――――――――
4.結論:「軽たい」がない理由
「軽い」にマイナスの評価を加えることはできません。
なぜか?
――――――――――――
◆「軽い」ということに苦痛を感じることはないからです。
――――――――――――
「軽くて負担を感じる!!」ということは、ないですよね?
「新しい靴は軽いなぁ」
「今日の荷物は軽いよ」
どちらの例文も、負担を感じていません。
よって、
「重たい」はあるのに「軽たい」はない。なぜ?
の答えは、
![](https://assets.st-note.com/img/1657703967236-S19UOYBBUA.jpg?width=800)
です!
![](https://assets.st-note.com/img/1657703992575-3SiF0H6BEJ.jpg)
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