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キッチン

吉本ばなな 1988年発行(2002年新潮文庫版)

・あらすじ
私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う----祖母の死、突然の奇妙な同居、不自然であり、自然な日常をまっすぐな感覚で受け止め、人が死ぬことそして生きることを、世界が不思議な調和にみちていることを、淋しさと優しさの交錯の中で、あなたに語り掛け、国境も時もこえて読みつがれるロング・ベストセラー、待望の定本決定版。<吉本ばなな>のすべてはここから始まった。

・感想
9月頃に読んだ「違うこと」をしないことの著者、吉本ばななさんのデビュー作です。1988年に発表されました。過去には映画化されたこともある作品のようで、書籍も文庫化されて、30年以上たった今も多くの人に読み継がれているそうです。「違うこと」をしないことを読み終えたときに、家族から「この人のデビュー作面白いよ」と言われました。そのことを、先日図書館に行ったときに思い出して、ちょっと探してみたら、エッセイコーナーにあったので、借りてきました。(小説なのに、何故か、エッセイコーナーから出てきました(笑))

作品集(なのかな?)のようで、2作品収録されていました。いずれも、大切な家族や友人、恋人を思いもよらなかった形で亡くし、深い悲しみに暮れている中で、新しく誰かに会い、そこから立ち直っていく姿が描かれていました。「キッチン」という題名から、「ほのぼのとした話なのかな?」とか「料理系の小説かな」とも読む前は思っていましたが、全然違いました。

今まで、一緒に暮らしてきたかけがえのない人たちとの、突然のお別れにより、心の行き所がない、主人公たちの様子は、読んでいる間ずっと、心に来るものでした。そこから、新しい誰かと出会って、新しい生活が始まり、立ち直って、新しい人生を送り始める姿は、とても頼もしく感じました。

前回と同じようなことを言ってしまうような気がしますが、大切な人は突然いなくなってしまうことがある、だからこそ、「今」を大事にすることが必要と感じたことと、落ち込んで、辛くなっていても、「それで終わりではないんだ。出口があるんだ。」と感じた作品でした。

・書籍情報
この本は1988年1月、福武書店(現ベネッセ)より刊行されたのち、2002年7月1日、新潮社より刊行されました。

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