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大宮見取図#1 大宮で育てた地元愛たっぷりのクラフトビールが、人と人との交流を生み出す!

●氷川ブリュワリー
菊池 俊秀(きくち としひで)さん

大宮の名産品といえば?
今はなかなか思い当たらないかもしれません。
でも近い将来、誰もが「クラフトビール氷川の杜!」と、口を揃えるようになる日が来る……そんな予感がビシビシです!


元エンジニアの探究心が生んだ、こだわりの味。

今回取材したのは「氷川ブリュワリー」の店主菊池さん。
醸造所を併設したパブで、何種類もの新鮮なクラフトビールが味わえます。冒頭ご紹介の「氷川の杜」は、ここの看板ブランド商品。さいたま市初のクラフトビールとしても知られています。
持ち帰りはもちろんですが、どうせなら店内で生をいただきたいところ。お店には10ものタップ(ビールの注ぎ口)があり、選択肢が多いのもうれしいポイントです。
 
菊池さん「お店を開くまでにこっちの醸造所で何度も醸造を体験して、相談して、試行錯誤して……やっとの思いで完成させました。醸造はホップやモルトの種類から配合する素材、タイミングまで、どれも細部までこだわって作っています。
ただ、ビールは嗜好品。自分がおいしいと思っても、他人がおいしいと思うかはわかりません。そんな味の違いを楽しみながら、ぜひここで自分のお気に入りの味を見つけてほしいですね」
元カメラメーカーのエンジニアである菊池さん。同じホップやモルトでも毎年微妙に味が変わるそうで、その選定に加え、どのように味を安定させるかにもとことん追求したのだとか。それに加えて長年ものづくりに携わってきた人ならではの探究心ですね。
 
お店の特徴を続けてもらうと、味だけではない魅力が見えてきました。
 
菊池さん「ビールを作っている本人が店に立っているので、味のことを話せるし、質問にも答えられます。すると店内での会話が自然と増えていくので、そのうちお客さん同士でも交流が始まるんです。名刺交換なんかはもう日常の光景ですね」
 
日頃からコミュニケーションの場として賑わっており、お客さんの要望から新メニューが生まれることもあるそうです。
一方で、なんと菊池さんはお酒が弱く、1杯で顔が真っ赤になるんだとか。だからこそクラフトビールで最高の1杯を追求できたのかもしれませんね!

大宮の持ついろんな顔~都市と田園風景の共存~

なんと菊池さんは、地元さいたまで、麦づくり・ホップ栽培にもチャレンジされているとのこと。そこから、大宮の特殊な構造、都市農業の片鱗が見えてきました。
 
菊池さん「大宮の街のつくりは面白いんです。氷川神社があって氷川参道があって、商業エリアがあって。その周りを住居、その周りを見沼田んぼが囲っている。街から少し行けばわっーと広がる田園風景なんです。全国的にもこの街のつくりは珍しいと聞いています。その見沼田んぼでクラフトビールの原料になる大麦、小麦を作ってるんですよ。」
 
6月は麦秋。畑が黄金色になるそうです。見沼田んぼの麦畑は緑色でスッーと空に向かって伸びていて、その中に埋もれる菊池さんはイキイキしていました。

大宮のお土産は「東京ばな奈」だった。

そもそもなぜこの場所でクラフトビールだったのか。ビール醸造が20年来の趣味だったという菊池さんに、その経緯やきっかけを聞きました。
 
菊池さん「このままサラリーマン人生でいいのかと、55歳あたりでいろいろと考えて。地元地域が気になり出したのもこの頃。そこでさいたま市のビジネスコンテストを知って、趣味のクラフトビールで地域を盛り上げられるかもと思ったんです。多くの方々の協力もあって入賞し、まわりからの期待も大きかったので、独立開業せざるを得ない雰囲気になっちゃいました(笑)」
 
 
ただ、実際に開業までに苦労したことも多かったようです。
 
菊池さん「店名にも商品名にも『氷川』を入れているのは、やっぱり大宮のシンボルだし、地元愛を込めたかった。だからこそお店は氷川神社の近くにすることは譲れませんでした。
なんとか不動産屋さんが見つけてきてくれたのが今の場所です。でも当初は飲食業が入るのはNGの物件でした。そこでその物件のオーナーに『大宮を一生懸命盛り上げてくれようとしている人だから』と、不動産屋さんが直接掛け合ってくれて。なんとか出店できることになったんです」
 
 
大宮を盛り上げたいという熱い思いの源には、こんな体験がありました。
 菊池さん「大阪の親戚のところに行くときには、大宮ではなく東京駅でよく『東京ばな奈』なんかを買っていました。大宮においしいお土産があればなぁと、ずっと思っていたんですよ」
そのおいしいお土産を自分で作ることになるのですから、人生わからないものですね!

地元愛が生み出す名産品が生まれ始めている。

大宮に住む人たちにとっても、氷川ブリュワリーや氷川の杜の誕生は大きな喜びになっているようです。
 
菊池さん「おかげさまでお店は順調ですし、氷川の杜も小さくない話題になっていて、生産体制を拡大しようとしているところです。オープン当初、近所のおじさんから『よく作ってくれた、こういうのを待ってたんだよ!』と声をかけられ、作ってよかったなとしみじみ感じました」
 
 
菊池さんいわく、昔から大宮には地元愛はある人が多い。でも、それを表す名産品がなかっただけ。だからこそ、氷川の杜が大宮の地元愛そのものを象徴する名産品へと育ってほしいと願っているそう。

名産品を通じて大宮に興味を持ってもらえたら

菊池さん「名産品を通じて、もっとたくさんの人に大宮に興味をもってもらえたらうれしいですね。大宮は昔から比べたらチェーン店は増えたけど、それでも地場のいいお店は路地の中にまだまだたくさんあります。もし大宮に遊びに来てもらえるとしたら、やっぱり大宮の持つ様々な顔を色々見て楽しんでいってほしいです。路地裏のお店、街並み、見沼田んぼなど。そこから生まれる名産品もチェックしてほしいですね。その中で氷川ブリュワリーにも立ち寄ってもらえたら光栄です」


氷川参道二の鳥居から徒歩2分と、ほろ酔い気分で街を散策するのにぴったりなお店です! 機会があれば、ぜひ“飲み過ぎ注意”でお楽しみください。
もちろん、お土産には氷川の杜をお忘れなく!!

MAP OMIYA 2023 発行:アーツカウンシルさいたま (公益財団法人さいたま市文化振興事業団)さいたま市南区根岸1-7-1-4階 編集・制作:株式会社Funwacca  2023年8月発行


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