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バカボンの兄 詩集

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詩の末尾に初稿を書いた年月を付していますが、note投稿にあたり加筆しています。投稿後の加筆もあり得るので、ご了承ください。
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#神

詩/対立

対立

上限は神で、下限も神で
神だけが現前していた
沈黙とは常に神の沈黙だった

この意識が、神そのものだった
この世界が神だったのだ

世界は色づいておらず
白黒かどうか
明暗があるのかどうかさえ分からない
そもそも色彩の概念がない
目を持つものを通して初めて
そこに
着色されたクオリアが浮かび上がる

だからと言って、僕らは
むき出しの世界には触れられぬのだと嘆くな
この肉感こそが
僕らにと

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詩/生きているということ

生きているということ

そばにいる者のために
少しだけ私を残して
じわり
私ではないものの温もりに包まれる
水溜まりに波が届く

蔑まれても
もう微笑み返すことぐらいか
誰の視線を気にとめるでもなく
ただ
名はそばにいる者のために。
低ければ低いほど
海が近い

私は誰か
この肉体を借りて
世界の片隅を覗いている
引き潮からはぐれた水溜まりを見守っている

人は困難によって海までの距離を測る
無私

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詩/荷



このまま狂ってしまうのではないか。
途中下車してうずくまり
その強い恐れが去るのを待った
脳をわしづかみにしてくる、
鈍重な違和感の塊とともに。
まだ中学生だったがその苦しみを担った

もうすぐアラ還世代だが
人生は棒に振ってしまった
抑うつも相まって
いまだに時折あの恐れが来る
じっとして、
それが去るのを待った

園児の頃も毎朝吐いていたから
そのように生まれついていたのだ
たいがいは絶

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詩/無力ということ

無力ということ

あなたが仏教徒なら
それを仏性と呼ぶのでしょうか
あなたがクリスチャンなら
それをみ心と呼ぶのでしょうか
私はそれを命と呼んでいます

あなたが泣いているなら
命が泣いているのです

あなたが苦しんでいるなら
命が苦しんでいるのです

あなたが驕って(おごって)いるなら
命が驕っているのです

暗い道で
あなたが誰かを刺したなら
命がその人を刺したのです

あなたが悔いているなら

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