9月の私と通院記録

1ヶ月プレドニン15mg生活。

それはかなり快調だった。眠れなくて眠たかった17.5mg/日の生活を考えると、それはそれは嘘みたいな日々だった。日中起きていられたし、家事をする元気もあったし、散歩にも出れた。ちょっとだけ普通の生活ができる状態に戻っていたことがうれしかった。

しかし、頭にはずっと漬物石のようなものが乗っかっていた。

職場復帰をどうするか。

それはすなわち、これからどうやって生きていこうか、どのくらいまでなら再燃せずに働けるか、それでいくら稼げるか、生活できるか、私は何がしたいのか、仕事よりなによりどうしたい、これら自分への問いかけだった。

私は深く考えるのが嫌いだ。その場の勢いと直感で進みたい。考え始めると、ついつい深く闇の奥深くまで自問自答してしまう癖がある。問い詰めると追い詰めてしまう。だからチャチャっと勢いで決断したい。そんなんだからこんな風になってしまったのかもしれないけど。でもやっぱりこの癖のせいで、深い深い闇へ突入してしまった1ヶ月だった。そしてやっぱりまだ結論は出ていない。

言わんこっちゃない。そう簡単に分かることではないし、でも職場復帰を考えたら、そろそろ答えが必要だ。きっと9月の通院で減薬となれば、復帰の目安となるプレドニン10mg/日が目前に迫ってくるだろうから。

2020年9月25日。

途端に秋らしく、むしろ寒いくらいの風が吹く中、病院へと向かう私。時計の針は9時を回るところだった。今日の予約は10時。診察前の採血を考えるとちょうどいい時間だ。

私は受付を済ませるといつも通り採血ルームへ向かう。前回は採血量が3本だったことを思い出す。検査結果にもIgGなどが記されておらず、治療が始まるとこんなもんなのかと思っていたら、今回は6本の血を採られた。時によって調べる項目を変えているのか、あの先生。抜かりない。

いつものルーティンではここで朝食タイムを迎えるわけだが、今日は病院に依頼している各種書類の確認作業が控えていたため、相談窓口へと向かい依頼などを済ませる。

先日審査を通過し発行された「特定医療費(指定難病)受給者証」の申請期間中の医療費請求や、傷病手当金の書類など、病気になると事務手続きがやたらと増える。(これらの詳細はまた後日別途記載します。)

ネットで情報を集めようとするにも、まとまったものがなかなかない。詳しい人もいなければ、誰も教えてくれないから自分で探さないといけない始末。1個1個は複雑だし、意識がはっきりしていたからいいものの、本当につらかった時、これをできる病人はいるのか。病人だからこそ、わかりやすくしてほしい。思わず目安箱に送りたくなる。

そんな事務手続きの相談を終えると、時計は9時50分だった。朝食の時間はない。

私は診察室の前へと足を運ぶことにした。

うーん。

やっぱり今日も予定時刻開始とはならなかった。待ちくたびれること1時間半。前回は眠気眼で入った診察室へ、今回は腹ペコ状態で入る。この部屋に絶好調で入るにはまだまだ修行が足りないらしい。

パソコンには検査結果が映っていた。

白血球数: 8.1
赤血球数: 4.47
ヘモグロビン: 13.7
ヘマトクリット: 42.1
MCV: 94.3
MCH: 30.8
MCHC: 32.6
血小板数: 208
PT: 92
PT-INR: 1.06
APTT: 30.1
APTT-Cont.: 30.5
フィブリノゲン定量: 184
総蛋白: 6.5
アルブミン: 4
総ビリルビン: 1
直接ビリルビン: 0.1
AST: 16
ALT: 18
乳酸脱水素酵素: 120
アルカリフォスファターゼ: 131
γ-GTP: 17
コリンエステラーゼ: 165
中性脂肪: 86
グルコース: 87
ヘモグロビンA1c: 5.7
CRP: <0.03
アンモニア: <17
IgA: 134
IgG: 1046
IgM: 179
TSH:
FT3:
FT4:
ALBIスコア: -2.59
ABI grade: 2a

想像通りの安心の結果だった。そりゃそうだろう。今日の体調はよかったし、自覚症状的には血液検査の結果に自信があったんだ。

「体調のほうはどうですか?」

「すっかり睡眠も改善されてとてもいいです。」

「それはよかった。睡眠の薬はもういらないかな?」

2種類もらっていたうちの片方をストップし、もうひとつのほうだけお願いする私。とてもいい流れで会話が進む。

「血糖も問題ないね。血糖値を上げる薬もいらないかもね。」

そうだろう。日常的に低血糖をよく感じていた私は、糖尿病にはならないタイプだと思う。ステロイド開始直後の夜の血糖値は信じられなかったし、とても悲しかった。なんとなく血糖値スパイクが食直後に起きているんじゃないかと思っていた。それを抑えるためのお薬ではあったが、これがどのくらい効果を発揮していたのかは、夕飯直後に血糖を測っていないので知る由もない。とはいえ、空腹状態の今回の数値を見てやめることになった。朝や空腹時の数値はずっと問題ないから、前回から改善されたわけでもないんだけどね。最近、夜の低血糖がつらい日が多かったから、なくなってくれてほっとした。

「先生、インフルエンザの予防接種はしたほうがいいですか?」

「したほうがいいね。」

「髪染めたらハゲますか?」

「えっ笑。それはないと思うけど、自覚症状内なら大丈夫だと…笑」

笑いも含めたいい会話。これは順調と言って間違いないだろう。

「じゃあ、あと1か月今の状態を続けて、次回問題なかったら12.5mg/日にしようか。」

えっ?ええええええ!?

きっと今日減薬するだろうと思っていた。そして、来月もう一度減薬して、11月に10mg/日になって職場復帰かと想像していた。この一か月ずっと考えていた自問自答への結論を10月に出すと心に決めて挑んだ今日。しかしそんな一筋縄ではいかなかった。減薬できなければ会社にも戻れない。一般的にも感染症への意識が高まっている中で、ステロイドによる免疫抑制中の身で、毎日の通勤電車に乗る勇気はない。まさかの15mg生活の継続。それは決断の先延ばし、社会復帰の延期とニアリーイコールだった。

プレドニン 25mg*7日 → 20mg*10日 → 17.5mg*28日 → 15mg*… ここに入る日付は、56日になるのだろうか、それとももっと…

減薬は慎重に。

改めてことの重大さ、この厄介な病気の現実を知る。あと5mgが遠い。会社が遠い。友達に会うのが遠い。社会との接点が遠い。

働きたいわけではないけど、色んなものから遠ざけられている感覚がとても寂しくなっていたから、遠く離れていく世界にショックが大きかった。

「with CORONA」と言われるようになった世の中での処世術。「with my OLD ENEMY」状態でのサバイバル。孤との闘い。これからへの不安。今だって楽しく笑いたいのに悩みが蓋をして笑えない葛藤。続く自問自答の日々。合間にステロイドなんて始めなければよかったかななんて軽いジョークも交えながら、増えすぎた規制事と病気でできなくなったこととあきらめたことに変わる何か模索してる。



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