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OKOPEOPLE - お香とわたしの物語

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OKOCROSSING が運営する、香りにまつわる「わたしの物語」を編み集めるプロジェクトです。https://oko-crossing.net/okolife
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2021年1月の記事一覧

絶滅危惧種としての香道具~香道具ファンドNo.5「空女作の聞香炉」~

絶滅危惧種としての香道具~香道具ファンドNo.5「空女作の聞香炉」~

香道の神髄と言えるものが存在するとすれば、それは流派の御家元・御宗家の中にのみ在って、余人がその境地に至ることは、長い道のりを辿ってもなお困難を極めるものと想像します。
一方で、存じ上げる限りにおいては、志野流香道ご当代御家元も御家流香道先々代御宗家も同様に「香道は聞香(香木の香気を深く味わうこと)が出発点であり、到達点でもある」というような意味合いの解説をなされたと記憶しています。
香を聞くとい

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ものを作る家族と、喪失の香り

ものを作る家族と、喪失の香り

編集部より:シンガーソングライターのしずくだうみさんにエッセイを寄稿いただきました。もの作りの家に育ち、やがて表現活動へと導かれていったしずくださん。お香のかおりは、そんな家族を喪う記憶とともにありました。お香にふたたび出会い、自身のもの作りと家族の関係を振り返った記録。

お香の匂いが苦手だった。

私が産まれた時、曽祖母二人が生きていた。どちらも父方で、頻繁に顔を合わせるわけではなかったが、曽

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“香木としての白檀の香り”を気軽に楽しむには?──天の海シリーズ「星の林」

“香木としての白檀の香り”を気軽に楽しむには?──天の海シリーズ「星の林」

こんにちは、京都より200年の系譜をもつ香木・香道具店 「麻布 香雅堂」 代表の山田悠介と申します。「オープン・フェア・スロー」をキーワードにお香の世界に関わっています。

先日店頭でお客様から「白檀のお線香の香りと、日用品にある“白檀の香り”は印象が異なりますね」という言葉をいただきました。ときどき聞いてくださる方がいるので、今日はこの言葉を踏まえて香雅堂のお線香を紹介したいと思います。

いろ

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「Scents of Heaven」 ~ 今ここの記

「Scents of Heaven」 ~ 今ここの記

「三渓園、行ってみたいですね」
「それならぜひ「観蓮会」に。早朝のハスの開花は本当に見事、こんなに香り高い花だったのかと驚きますよ」

──真夏の日本庭園を思い浮かべながら、ワインバーのカウンターで今年最後のボトルを空ける。店に年末の挨拶をと半年ぶりに自粛を押してやって来たのだ。せめてもう一本頼んで店主を喜ばせたいところだが、22時の閉店時間が切ない。

三渓園は以前に一度行ったことがある。本牧に

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