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こころの状態で物語が変わる

こんなことを経験したことはないだろうか。

同じ本を読んでいるのに、昔と今で感じ方が変わった。10代のころに興奮して観た映画を、10年後に観たら、ずいぶんつまらない…。

触れるタイミングで「物語」が変わってしまう現象である

こういうことは頻繁に起こりうる。そして、昨日もまた起こった。

Netflixで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』というアニメを見終えたのだが…

なんじゃこら。目から水滴がとまらない;;

部屋でひとりで視聴を終えて、なんだかしんみりしてしまった。

このアニメ。実のところ、半年前にも一度観ていた。後輩に「絶対に見てください。泣けます。」とゴリ押しされて観始めたが、3話くらいで離脱してしまっていた。


幼い頃から殺人マシーンの軍人として育てられた少女のお話である。人のこころがわからない、任務だけが生きがい、ひたすら戦いに明け暮れる。そんな日々。

戦争が終わると同時に、生きる目的を失った彼女。ひょんなキッカケから、手紙の代筆サービスの会社で働きはじめる。お客さんのいろいろな想いがのった手紙を書くうちに、人のこころを学んでいく…。

僕「たしかにいい話だけど、なんか辛気臭い感じやな。」
後輩「マジすか…。せめて5話くらいまで観て欲しいっす。」

こんな会話を今年の3月頃にしていた。当時は、あんまり刺さらなかったのだ。


そして、いま。

絶賛涙腺が崩壊中。公開中の劇場版まで観に行ってしまった。


頭の中が戦闘モード

3月は仕事が忙しかった。半年前のことだ。

頭のなかか完全な戦闘モード。たぶんアドレナリンがドパドパと出まくっていた。

こういうほっこりと、心に訴えかけてくる作品を受け入れられる余裕は、どこにもなかった気がする。

作品のなかの戦争は終わったが、僕の頭の中は戦争中。そんな感じだ。

この作品は「ヒューマンもの」だから、アニメのなかでは、純文学みたいなカテゴリだと思う。京アニさん制作のこの手の作品は本当にこころに沁み入る。

しかし、心が忙しくしているときに、純文学はキツい。とにかく急いでいるから。心理描写だけで、数十、数百ページ使っている場合ではない。

で!それでどうなったの?!結論はよ…!

うん。ぜんぜん楽しめない…。

こういうときは、とにかく展開が早くてわかりやすい物語に傾倒することになる。異世界転生やら、アクションものやら。

個性的なキャラとダイナミックなストーリーで、脳を異世界に飛ばさないといけない。〇〇ランドのアトラクションみたいに、強烈な現実逃避体験が必要なのだ。

こころの状態で物語が変わる

頭のなかが忙しい戦争状態を終えて、いまはとてもこころが穏やかだ。

勤めている職場を退職するまでの有給消化中の身。いわば、社会人の夏休み期間。大人になってからに限れば、最高レベルにこころが安定している。

こんな穏やかな状態で、再びアニメを観る。そしたら、染みこむように、物語がこころの中に入ってきた。映画館では、ハンカチどころかタオルで目をぬぐう羽目に。

しかしだ。アニメそのものは、半年前と何ひとつ変わっていない。変わったのは、自分のこころの状態。つまりは主観である。

当然と言えば当然かもしれないが、僕たちは主観的なフィルタをとおして、物語を消費している。そして、そのフィルタは、いま置かれている状況や過去の経験、蓄積された知識などによって形成されるのだと思う。

同一人物であっても持っているフィルタは刻一刻と変化していっている。だから、タイミングで、物語が変わってしまう現象が起きるのだろう。

そりゃあ、人によって作品の好みが違って当然だわ…。みんなそれぞれの背景に裏付けれれた、主観を持っているのだから。

みんなが大好きな『鬼滅の刃』や『君の名は』のような万人受けするコンテンツは、間口が広すぎて恐ろしい。日本中、いや世界中の人の主観を受容できる懐の広さなのだ。

こころの状態で、作るモノも変わるのか

ここまでは物語の受け手としての、感じ取り方を書いてきた。

逆に、作り手としてはどうだろうか。

たとえば、いまこのnoteは、とてもとても心穏やかな状態で書いている。だから、こういうゆる〜い内容の記事を書くことができている。役に立つのかわかりゃあしない。

これが新しい職場で、忙しくなったらどう変わっていくのか。ものすごくマッチョな内容に様変わり…なんてこともありうるのか。

ローマ時代には、奴隷が労働を担うことで貴族達に余暇が生まれた。その余暇にさまざまな芸術が花開いたそうだ。

時間、お金、精神…。これらの余裕と作るモノは明らかに密接に関わっていそうである。

自分としては、仕事で十分マッチョをやっているのだから、記事のなかくらいは、ゆる〜くありたいものだが。


最後に。noteにいるクリエイターさんには、ヴァイオレット・エヴァーガーデンを気にいる人が多いんじゃないかなあ、と思ったりしています。

手紙という文字媒体で、人と人との気持ちを繋いでいく。直接言葉にすることが恥ずかしくても文字なら伝えられる。

そういう文章を書くということについても考えさせられる号泣必死なお話なので、おすすめとして置いておきたい。

※こころの状態で感じ方が変わります。


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なんかをしていければなあ、と思っています。

よければ、覗いてってください〜!


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