「分断」に向かう世界 Ⅱ。ー 「新・鉄のカーテン」とマーケットの「二重化」。
「分断」に向かう世界。 ー 為替レートが示唆する ”パラレルワールド” 。|損切丸|note の続編。
「ルーブルより安い円」
大分 "うまい話" には「裏」がある。ー「ルーブル高」の "カラクリ" 。|損切丸|note の理解が進んできたが、未だにこういう比較をする人がいる。実は対ドルの為替レートなら3月以降の ”最強通貨” はルーブル。開戦直後こそ@100を超えて暴落したが、今や開戦前より ”ルーブル高” の@57台。
疑問:誰がルーブルを買っているのか?
答え:ルーブル発行の中央銀行自身(自由価格設定)と国内企業
開戦後、実質対米の輸出入は止まっているのだから、対ドルの為替レートがいくらかなど何の意味もない。敢えて言えば ”ルーブル高” 演出は一種のプロバガンダ。まあハッタリが得意な彼の国らしい。日米欧にこんな「バカ高いルーブル」をドル、円、ユーロに換える国はない。
代わりにせっせとエネルギー資源取引を重ねているのが中国とインド。両国にとってはドルベースの原油価格より安く買えればいい訳で、ルーブルがいくらかは関係ない。エネルギー代金として払った人民元、ルピーはFX市場で売られてドルに換えられ、兵器購入などの戦費に充てられるのに対し、輸出で受け取る「バカ高いルーブル」は少額。ドルにも換えられないし、次の原油輸入の代金に充てているのだろう。
だから実質FXで取引されているのは対ドルの人民元+ルピー売りのみで、両国は「通貨安」という副作用も被っている。対ルーブルでは▼30%を上回る一方的「通貨安」、ルピーは対ドルでも@78を超えて安値を更新。「インフレ」に拍車がかかる結果に陥っている。
メカニズムとしてはルーブルは原油価格に連動していると想定される。
最近はルーブル、人民元、ルピーをWTIとセットで動向をチェックしており、対ドルのレートはあまり参考にしていない。この3国は「ドル経済圏」から離脱を図っていると考えて良い。
推論:マーケットの「二重化」が進んでいる。
コロナ後の世界 Ⅱ - これから起こりそうなこと。|損切丸|note で「コロナ後の断裂」は ↓ こんな感じか。
エネルギーも食糧も最大の需要国である欧米に輸出されず「レッドチーム」内で消化しようとするため「デフレ」圧力がかかる(但し "ルーブル方式" だと国内に「お金」が溢れ通貨価値は希薄化。結果、不足している日米欧の商品は極端に高くなる)。中国では「不良債権」も問題。*逆に「デモクラシーチーム」ではモノが足りず「インフレ」が加速。いわゆる「サプライチェーン再構築」だが、これはお題目で唱えるほど簡単ではない。
まあ事態は左右にきれいに分けるような単純なものではないが、ルーブルとドルの完全分断はもはや不可避。だが中国、インドはアメリカを無視する訳にはいかない。儲けるためにはアメリカに輸出を続けるしかなく、半導体などの戦略物資を止められるのもかなり痛い。
だが同時に日米欧も中国と完全に袂を分つのは無理。テスラもトヨタもフォルクスワーゲンも中国抜きでは商売が成り立たなくなっており、軍事・安全保障面でやり合っていても、ケンカ別れできない。
もっとも前稿 市場を支配する ”恐怖” 。ー 市場の歴史は "Bubble & Crash" の繰り返し。|損切丸|note でも触れたが、「共同富裕」がウォール街に立ちはだかり、「お金」の面では 続報:中国に異変? 着実に進む「お金」の「中国離れ」。|損切丸|note さすがの ”お金の権化” も商売拡大をあきらめた模様だ。
元々国家管理の色彩が濃かったが 「人民元」がおかしいⅢ。 ー 「利下げ」見送り、苦渋の選択。|損切丸|note はますます拍車がかかっており、対ドルの人民元レートも不規則な蛇行を繰り返している。
筆者も30年以上「アメリカ主義」のマーケットに従事してきたため、どうしてもドルを中心にマーケットを図る癖が付いている。だが、ルーブル同様、人民元も「二重マーケット」の観点から考察を加えなければなるまい。
これを機に世界の盟主がアメリカから中国に移るという論調もあるようだが、それはどうだろう。「中国恒大」を始めとした 「 "高金利" には気をつけろ」。ー 中国不動産と地方政府の「自転車操業」。|損切丸|note をみんなすっかり忘れている。特段の対策を打った痕跡もなく、時間の経過と共に事態は悪化しているはず。
戦争を始めた国も含め「レッドチーム」には余裕がないように「損切丸」には映る。「資金繰り」的にも国内政治的にもギリギリではないか。対外的 "強気" はその裏返しであろう。
この「二重マーケット」視点を加えると、今の「インフレ」にFRBの「利上げ」「QT」が正しい処方箋なのか、疑問も湧いてくる。もっと大きな構造問題であり、金融政策だけでなく本来政府がもっと主体的に関わるべき。だが、** ”マーケット音痴” のバイデン大統領では何とも心許ない。
「インフレに利下げ」のトルコを異質と断じていたが、「ドル」を気にしなければひょっとして成立? 実際CDSや「実質金利」などこれまでの「市場原理」が壊れた国が増えている。さんざん酷い目に遭わされたアルゼンチンなど南米諸国の「アメリカ離れ」も気になる。
日銀・財務省の政策は極めて「共産主義的」だが、まさか日本は「アメリカ離れ」で「レッドチーム」入りなどできまい。せめて全てをぶっ壊す「戦争」だけは止めて欲しいが、「通貨安」を "容認" している日本とトルコ以外の主要国債金利は凄まじ勢いで上昇しており、いずれにしろ大変な時代がやってくるのは間違いなさそうである。
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