「ドストエフスキー 地下室の手記④ たいやきくん」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日 夜
スナックふかよみ
「ひいらぎ」でも「わかば」でも、どっちでもいいでしょう。
大のオトナが、好みの鯛焼きでケンカなんて、ホントみっともないと思います。
じゃあアンタ、歌いなさいよ。
え?
歌を聴けばアタシたち、気が済むから。
歌、ですか? 何の?
タイヤキの歌っていったら『およげ!たいやきくん』に決まってるじゃない!
このバチカンがァ!
バカチンですよね…
『およげ!たいやきくん』は、アタシたちが初めて買ってもらった思い出のレコードなの…
アンタみたいな若い子にはわからないだろうけど、文字通り「すりきれるまで」聞いたのよ…
早く… 歌ってくれない…?
は、はい… わかりました…
では…
ウッウッウッ…
お母さん…
この歌詞…
さてと、話を進めましょ。
ドストエフスキー『地下室の手記』第1部の第2章からだったわよね…
・・・・・
岡江クン? どうしたの?
フフフ…
ブツブツブツブツ…
ど、どうしたのよ!?
岡江クン!しっかりして!
ハッ…
教官… 大丈夫ですか…?
今、白目むいてましたけど…
あ、ああ… 何でもない…
ちょっと… ビジョンが見えただけ…
ビジョン?
パトモス島のヨハネみたいにですか?
『パトモス島の福音書記者ヨハネ』
ドメニキーノ
もう、ビックリさせないでよ!
で、ビジョンって何? いったい何が見えたってわけ?
たいやきの… ビジョン…
たいやき?
見えたんだ…
『およげ!たいやきくん』の「たいやきくん」は…
「たいやき」ではなく「ある人物」だった…
ある人物? 人間なの? 誰?
シモン・ペトロだ…
『使徒ペテロ』ルーベンス
ハァ?
何言っちゃってるの?
まさか「子門だからシモン」とかゆうオヤジギャグだったら張り倒すわよ。
そうじゃない。本当に「たいやきくん」はシモン・ペトロなんだよ。
もうっ!冗談は顔だけにしてよね!
キィーーーーーッ!
ちょっとケツヤ、落ち着いて。
寝てる人がいるんだから気をつかいなさいよ…
よろしく。
あ、ごめん良ちゃん… つい…
ねえ? 「たいやきのビジョン」って何?
気になるから、ちょっと聞かせて頂戴よ。
アンタたちも聞きたいでしょ?
うふふ。そうね。
「NO」って言っても、話が始まるんだろうし(笑)
では、僕が見た「たいやきのビジョン」を聴いてくれ…
まず歌の冒頭…
毎日毎日ぼくらは鉄板の
上で焼かれて嫌になっちゃうよ
多くの人は、こんな風景を思い浮かべるだろう…
当たり前でしょ。
でも違うんだ…
僕が見たビジョンでは、こんな風景だった…
『使徒ヨハネの受難』フランス・フランケン
なんですか、これ!?
棄教させるための拷問よ。
イエスの弟子たちは、イエスの死後、ローマ帝国の各地で布教活動をしてたんだけど、行く先々で弾圧され、こんなふうに熱せられた鉄釜の中で拷問を受けたの。
そして最後は磔刑になるパターンね。
ぐ、偶然でしょ?
そして歌はこう続く…
ある朝ぼくは店のおじさんと
ケンカして海に逃げ込んだのさ
さすがに「店のおじさん」はシモン・ペトロと関係無いわよね。
関係ありまくりだよ。
僕が見た「みせのおじさん」は、こんな人だった…
『復活したイエスと使徒ペトロ』
イエス?
なんで「みせのおじさん」なの?
「みせ」とは「mise」なんだよ。
ラテン語の「mittere」が由来のフランス語で…
「何かをするために、ある場所や状況にもっていく」という意味だ…
だからなんでそれがイエスなのよ。
復活したイエスは、ペトロにこう言った。
『ヨハネによる福音書』
21:18 よくよくあなたに言っておく。あなたが若かった時には、自分で帯をしめて、思いのままに歩きまわっていた。しかし年をとってからは、自分の手をのばすことになろう。そして、ほかの人があなたに帯を結びつけ、行きたくない所へ連れて行くであろう」
21:19 これは、ペテロがどんな死に方で、神の栄光をあらわすかを示すために、お話しになったのである。こう話してから、「わたしに従ってきなさい」と言われた。
これはイエスがペトロに対してローマで殉教することを予言したもの…
いくら逃げても、必ずローマへ連れて行かれると…
そして予言通りにペトロはローマで処刑され、墓の上にサン・ピエトロ大聖堂が建てられた…
だから「たいやきくん」は「mise のおじさん」から逃げたのね。
ちなみにローマから逃走したペトロは、アッピア街道から港に出て、海を渡る計画だった(笑)
こじつけよ、こ・じ・つ・け!
そうかな?
歌詞はこう続く…
初めて泳いだ海の底
とっても気持ちがいいもんだ
おなかのアンコが重いけど
海は広いぜ 心がはずむ
これは無理よ。
ペトロのおなかにはアンコ入ってないでしょ?
僕が見たビジョンでは、ペトロは「アンコスティック」だった。
あんこスティック?
ローソンで売ってるやつ?
あれ、アタシも好き!
うふふ。食いしん坊さんね。
でもその「アンコスティック」じゃないんだけど(笑)
では「アンコスティック」とは、いったい…
これが「アンコスティック」だ。
世界で最も有名な「アンコスティック」だよ…
『使徒ペテロ画』
え? ペトロ?
「アンコスティック(encaustique)」とは「蝋画(ろうが)」のことで、着色した蜜蝋を溶融し、表面に焼き付ける絵画技法…
美術史上最古の絵画技法のひとつで、英語では「エンコスティック」、ドイツ語では「エンカウスティーク」と呼ばれる…
その代表作が、シナイ山の麓にある聖カタリナ修道院の『使徒ペトロ画』なんだよね…
なによコレ…
そして1番のラストの歌詞はこう…
ももいろサンゴが手を振って
ぼくの泳ぎを眺めていたよ
さ、さすがに「ももいろサンゴ」は聖書に出て来ないわよね…
しかも「手を振る」ももいろサンゴだし…
どうかな…
僕には、こんなビジョンが見えたんだ…
ゆ、U2の『JOSHUA TREE(ヨシュア・ツリー)』じゃないですか!
「ヨシュア」が「手を振る ももいろサンゴ」の正体だったんだよ。
何言ってるの? 意味わかんない…
「ヨシュア・ツリー」というのは、木の形が「天に向かって手を掲げるヨシュア」の姿に似ているから、名付けられたものなの。
ヨシュアはモーセの後継者よね。
モーセが果たせなかった「約束の地」入りを成し遂げ、神のお告げを受けて土地をイスラエル12部族に分け与えた指導者よ。
だから「人々を安住の地まで導く存在」として敬われている…
『神のお告げを授かるヨシュア』
ワカメが生えてるの?
なんだか、この絵…
「手を振る ももいろサンゴ」っぽいです…
でしょ?(笑)
アタシ、この歌を何百回と聴いたけど、全然気がつかなかった…
いったいこれはどういうことなの?
もしかして2番もビジョンで何か見えちゃったわけ?
ええ…
そうなんです…
つづく
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