「深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)&読みたいことを、書けばいい。」志賀直哉『小僧の神様』篇⑥(第273話)
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2019年9月20日 朝
スナックふかよみ
だけど、なぜそれが「磔刑図」なのよ?
「かんぴょう巻」と「磔刑図」に何の関係があるの?
これを見てもらえば、わかると思う…
え?
何ですかこれは?
「かんぴょう」と言えば、この絵よね。
「かんぴょう」を描いた絵の中で、最も有名な絵。
これのどこが「かんぴょう」の絵なの?
「かんぴょう」は漢字で「干瓢」と書くように、瓢箪(ヒョウタン)を食用化した品種ユウガオの実から作られる。
ユウガオの実を細く紐状に剥き、それを乾燥させたものが「かんぴょう」だ。
なるほど…
この絵の中で女性たちが干している白い細長いものが「かんぴょう」なのね…
しかしなぜ「瓢箪」なのに「夕顔」なのでしょう?
朝顔や昼顔とは全然関係ない植物じゃないですか。
確かにそうね…
もしかしたら、紫式部の『源氏物語』に出てくる「夕顔」のことじゃない?
は? 光源氏が愛した、あの謎めいた薄命の女性?
そう。
あの夕顔の顔が、瓢箪みたいに瓜実顔(うりざねがお)だったから、とか…
「源氏夕顔巻」(月岡芳年『月百姿』)
瓢箪みたいな瓜実顔って、いくらなんでも長過ぎやしませんか?
もはやウリを越えてウマづらですよ。
うふふ。
あの植物が「ユウガオ」という名前になったのは、花が夕方に咲いて、次の日の昼に萎れてしまうからよ。
なるほど…
夕方から夜通し咲き続け、翌日の日中には儚く消える花だから、紫式部は薄命の謎めいた女性の名に選んだわけですね…
ん?
どうしました?
ううん。何でもない…
たぶんあたしの考え過ぎ…
それにしても教官…
なぜこの「かんぴょうの絵」が「磔刑図」なのですか?
なぜって、どう見ても「そのもの」だろう?
は?
見比べてみると、それがよくわかる。
まずは元ネタであるマンテーニャの絵…
『磔刑図』アンドレア・マンテーニャ
あれ? なぜだろう?
さっきの絵がダブって見える…
あたしも!
こ、これは…
で、改めてもう一度この絵を見てみよう…
「かんぴょう」を描いた最も有名な絵、歌川広重の『名物干瓢』を…
「名物干瓢」(東海道五十三次 水口宿)
歌川広重
やっぱりそうだ…
この2つの絵は、よく似ている…
左下エリアに描かれた、かんぴょうを干す女性たち…
「磔刑図」の同じ場所に描かれた、イエスゆかりの人たちそっくり…
真ん中の木に一番近いのは、青い服の女…
集団の中央には、下を向いて倒れ込む黒い服の女…
そして、絵の一番左端の人には、襟首から「つるつる頭」が出ているように見える…
「ユウガオの実」と「まな板」は…
十字架の下に置かれた「頭蓋骨」と「石板」じゃな…
槍まで再現されている…
槍といえば…
イエスの十字架のそばにいる2人のローマ兵を足すと、あの旅人になります…
それじゃあ、広重が絵の中央に描いた木は…
主役である「かんぴょう」よりも目立つ木を、わざわざド真ん中に描いた理由は1つ…
イエスの十字架だ。
どうなってるんですか、これは…
そういえば…
「干瓢」の「干」って…
イエスの十字架の上には罪状の書かれた板がついている。
まさに「干」という字にそっくり。
「名物干瓢」というタイトルも狙ったものだと思うわ…
名物というのは、西洋の名物「干」のこと…
「瓢」は「瓢箪」のことだから「瓢箪から駒」を連想させる…
「ありえないことが起こる」という意味ね。
まさか「INRI」も再現されてるとか?
さすがにそれはないでしょう…
それがあるんだな。
えっ?
天才絵師 歌川広重が、そんな大事なものをスルーするわけがない。
「磔刑図」にとって欠かせないものだからね…
いったいどこに?
浮世絵の中にアルファベットなんて描いたら、絶対にバレるじゃないですか!
その通り。
「INRI」の4文字全部を描いたら、さすがにバレる。
だから広重は「描く途中」を描くことにした…
描く途中を描いた?
ほら、あの女性…
干瓢で「INRI」を作ろうと考えてるでしょ?
げえっ!
なんと…
INRIのすぐ下にある、いばらの冠のトゲトゲまで再現されとるわい。
そんな馬鹿な…
うふふ。
広重は、イエスの顔も、描いてる…
ええっ!?
嘘でしょ?
さすがにそんなこと…
見てごらん…
木の幹の一番上の部分を…
「それ」が見えるだろう?
・・・・・
見えた…
火星の人面岩よりもハッキリと…
こ、これはいったい…
何も驚くことはないでしょう…
歌川広重は、ゴッホやモネなど、ヨーロッパの画家たちに大きな影響を与えた…
それならヨーロッパの画家に歌川広重が影響を受けていてもおかしくはない…
だけど江戸時代は鎖国してたんでしょ?
広重が「磔刑図」を知ってるはずないじゃん…
西洋画家や蘭学者は、長崎の出島でオランダ人から様々な西洋文化を学んでいた。
模写して出島の外に持ち出されたり、江戸や大阪の豪商が裏ルートで仕入れたりした書物や絵もあっただろう。
広重ほどの人物なら交友関係も広いから、それらを目にする機会はいくらでもあったはずだ…
「海苔巻」で「かんぴょう」を暗示させた志賀直哉も、広重の「名物干瓢」が「磔刑図」であることに気付いてたってわけ?
だろうね。
志賀ほどの観察眼の持ち主なら気付かないはずがない。
僕みたいに言わないだけだよ。
まさか、日本人なら誰でも知ってる『東海道五十三次』の中に、イエスの十字架刑が再現されていたなんて…
信じられません…
そうかしら?
え?
他にもいろいろあるでしょ?
誰でも知ってる有名な古典的作品の中にイエス・キリストが隠されてるものが…
ほ、他にもあるんですか!?
例えば、この歌とか…
かごめかごめ?
これは確か、歌詞がヘブライ語になっていて…
どこかに隠された聖櫃(アーク)の中の至宝が…
そんなのは、こじつけ…
ただの都市伝説だよ。
え?
なぜ、わざわざ難しく読もうとするんだろうね…
シンプルに考えればわかることなのに。
あの話は違うの? どういうこと?
「かごめかごめ」はイエス・キリストの復活を歌ったものだ。
「かご」とはイエスの遺体が納められた石室のことだね。
パイの実家の動物園にもあった石の洞穴…
じゃあ「鳥」がキリスト?
そうだね。
「トスリキ」で「トリ」ですか?
おそらく元々は「トリ」じゃなくて「トラ」だったんじゃないかな…
トラ!?
「その通り」って言ってる…
トーラー(モーセ五書)だからトラ。
『ヨハネによる福音書』でイエスは「トーラーは私のことである」と言っているからね。
だけど「カゴの中のトラ」では明らかに不自然だ。
だから「トラ」がいつの間にか「トリ」になってしまったんだと思う…
つまり「かごの中のトリは いついつ出やる」というのは…
「キリストはいつ復活して出てくる」という意味?
だね。とてもわかりやすいでしょ?
「夜明けの晩に ツルとカメがすべった」は?
ペトロとヨハネじゃない?
夜明け前にマグダラのマリアが異変に気付き、二人を呼びに行った…
そして二人は駆け足で墓までやってきて、空っぽの石棺を見てビックリしたじゃん…
『空っぽの墓を見て驚くペテロとヨハネ』
ジョヴァンニ・フランチェスコ・ロマネッリ
なぜ「ペトロとヨハネ」が「鶴と亀」なのかな?
それは… えーと…
「鶴と亀」もイエス・キリストのことよ。
え? どうして?
千年万年だから?
鶴亀算じゃ。
つるかめざん?
鶴の足の数「2」と、亀の足の数「4」を使った数学問題だ。
『鶴と亀』イラストストック
なんだか、おめでたい感じ…
福が来そうな…
ツルとカメが合わせて8匹、足の数が合わせて26本であるとき、ツルとカメは何匹(何羽)いるか?
ただしツルの足は2本、カメの足は4本である。
さあ、解いてみよ。
え? ちょっと待って…
日能研の電車広告じゃないんだから…
答えはこちら。
しかしなぜ「つるかめ算」がイエス・キリストと関係あるのですか?
足の数だよ。
亀の「4」と鶴の「2」はイエス・キリストの数字…
あっ!42!
その通り。
新約聖書の冒頭は、アブラハムからイエスまでの系図が語られる。
3ⅹ14で42だ。
『マタイによる福音書』
1:1 アブラハムの子であるダビデの子、イエス・キリストの系図。
1:2 アブラハムはイサクの父であり、イサクはヤコブの父、ヤコブはユダとその兄弟たちとの父
(中略)
1:17 だから、アブラハムからダビデまでの代は合わせて十四代、ダビデからバビロンへ移されるまでは十四代、そして、バビロンへ移されてからキリストまでは十四代である。
3ⅹ14=42は、生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え…
『銀河ヒッチハイク・ガイド』でも、そう言ってたわ。
ん?「3ⅹ14」って「3.14」に似てませんか?
かもね、かもね、そうかもね(笑)
ところで「夜明けの晩」と「すべった」は?
イエスはすべってないでしょ?
「すべった」は「統べった」だね。
統べった? 統治したってこと?
イエスの罪状「INRI」だよ。
「ナザレのイエス、ユダヤ人の王」でしょ?
あ、そっか…
ということは…
「夜明けの晩に」とは「昼なのか夜なのかわからない」ってことですね。
イエスが十字架に掛けられていた間、太陽が隠れて夜みたいに暗くなってしまいました。
「夜明けの晩に」は「一日の始まりであり、終わりでもある」とも読める…
つまり「アルファでありオメガである」ね。
そして最後が「うしろの正面だあれ」…
もうわかったよね?
復活したイエスの登場…
マグダラのマリアの後ろの正面から現れました…
20:14 そう言って、うしろをふり向くと、そこにイエスが立っておられるのを見た。しかし、それがイエスであることに気がつかなかった。
何なのコレ…
コジツケも飛躍もせずに、普通に読み解けたじゃん…
だから言っただろう。難しく考える必要はないって。
「かごめかごめ」はシンプルなキリスト歌だったんだ。
歌川広重の浮世絵といい「かごめかごめ」といい、太宰・芥川・志賀の小説といい、こんなことが隠されていたなんて…
信じられない…
これが日本文化の神髄なのかもね…
「秘すれば花なり 秘せずは花なるべからず」って言うくらいだから…
では『小僧の神様』に戻るとしよう。
いよいよ、Aによる小僧仙吉への「洗礼」の場面だ…
つづく
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