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【書評】大きな何かに自分の運命をぶつけたくなるお年頃

人は見た目が9割という本がありましたが、こと本に関してはこれが全く当てはまらない。今どきの本は派手な装丁に軽い文章が載っていたりしていて楽しめなかったり、昔の本は地味な表紙で中身は宝物だったりする。

この本は1962年に、日本人初のヨットで単独無寄港太平洋横断をなした人物「堀江謙一」の日記形式・冒険譚です。結果として堀江は大阪→サンフランシスコ目指して密出国し、太平洋横断をなしてしまう。

オチが分かっていても、おもしろい本はおもしろいw


堀江は「絶対に日本政府やアメリカ政府に見つかって、途中で捕まってしまってなるものか!」と、パスポートを持たず、強制送還覚悟で日本をヨットで飛び出した。

読んでもわからない。

ヨットの上では、洋服も毛布も寝袋もビショビショ濡れて寒く、ひどい船酔いで、胃から血を吐くほどの思いをし、そして、見渡す限りポツンと海に一人だけ・・・

そんな苦しい思いをしてまでなぜ?
なぜ?
どうして?
動機は?
理由?
目的は?

プロの評論家や新聞記者に聞かれたそうで答えている。

「わたりたかったから、わたったんですよ」
正直、本音を吐いた。これで全部なんだ。

と、答えているので、一気に惹かれた。

世間では理屈みたいなことを言わせようとしてくるが、一生懸命に納得してもらうと勤めたかった無駄だった。
我々ヨット仲間では当たり前の事なんだ。
こんな当たり前のことが・・・。
誰だって一度は太平洋をセーリング搬送して。 わたりたいと本気で読む夢を見るんだ。

堀江謙一が太平洋横断を達成する前の1962年では、日本のヨットマン等が海外へ渡航しようとしてもパスポートを手に入れることはできなかったが、
太平洋横断後は驚くべきことに、窓口の手続きを踏むと、手のひらを返したようにヨットマン達にパスポートが出るようになったそうだ。

日本の政府が取り続けた1600年代以降、思えば吉田松陰が密出国をくわだてて打首になった幕末から100年間も徳川時代と同じことだったが、扉が開いたとも言える。

その後の彼の略歴を見るとすごかったので紹介。

1974年
小型ヨットによる西回り単独無寄港世界一周
1982年
4年間にわたる朝鮮の末。 初の縦周り世界一周
1985年
世界初太陽電池によるソーラーボートにて単独太平洋横断
1989年
全長2.8メートル の超小型ヨットにて単独太平洋横断
1993年
世界初人力足こぎボートでホノルルから沖縄まで単独太平洋横断 1996年
アルミ缶などのリサイクル素材のソーラーポートで、南米エクアドルから東京まで単独太平洋横断
1999年
ビール樽528個とペットボトルのリサイクル素材で、 作られたヨットで単独太平洋横断
2002年
ウイスキー樽やアルミ缶のリサイクル素材で建造したヨットで単独太平洋横断

会社の経営だろうが、人生だろうが、一つのことをしようとしたら、自分で大きな筋を通して、それに責任を持ち、行動していくしかない。細かい点はいくつか間違いかもしれないが最善と決めた道で とにかくやり抜くしかない。
そんなことを教えてくれる。

視界が広がる良書でした。
彼はただ好きなことにまっすぐ進んだだけだった。


おわり


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