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「新人3カ月・6カ月問題」ーーなぜ、大切なのか?

新卒・中途に関わらず、新人にとって最初の3カ月と6カ月の過ごし方は極めて重要です。今回は「組織社会化」から、その背景を見てみましょう。

最初の3カ月と6カ月で、新人のその後が決まる?


組織社会化とは、個人が組織の一員になるために、必要な態度や行動、知識を習得するプロセスのことを言います。

組織社会化研究は、古くは1950年代からスタートし、20世紀半ばには広く研究が行われ、様々な知見が蓄積されました。近年、人事の分野で注目を集める「オンボーディング」は、これら研究から得られた知識が活用されたものです。

さて、この組織社会化研究では、新人が組織に馴染むには周囲との関係を築くことが鍵だと言われています。この考えを支持する研究として、Feldman(1977)の研究があります。

この研究によれば、新人が職場の仲間に受け入れられる感覚(受容感)を得るのに平均で2.7ヶ月かかり、仕事ができるようになったとの感覚(有能感)を得るのには約6ヶ月かかると報告されています。

この研究から分かることは、新人の適応プロセスが受容感からスタートし、次第に重要な情報を得ていくことで有能感が芽生えるということです。逆に言えば、受容感が得られない状態では、有能感を感じることも難しいということです。

つまり、職場において、新人が同僚たちに仲間として受け入れられなければ、仕事ができるようになったとの感覚が得にくいということなのです。


「新人3カ月・6カ月問題」の盲点とは?


この「新人3カ月・6カ月問題」において注目すべきは、受容感3カ月→有能感6カ月の枠だけでなく、その中身への理解です。

というのも、Feldman(1977)が特に興味深いのは、社会化における加入儀礼(イニシエーション)を2つに分けて考えている点です。具体的には、一定の成果を上げることで周囲に認められる「タスク・イニシエーション」と、組織に対する忠誠心や協調性を示すことで周囲から受け入れられる「グループ・イニシエーション」とで、この組織適応を捉えています。

どんな仕事も、うまくこなすためのコツが存在します。そのコツは組織内で長く働く人々の間で共有されている一方、新しく組織に入ってきた新人にとっては手に入りにくいものです。同僚と親密な信頼関係を築くまで、そのコツを知ることは出来ないでしょう。

新人が同僚と親密な関係性を築くには、一定の成果を上げる必要があり(タスク・イニシエーション)、組織に対して忠誠心や協調性を示す必要があります(グループ・イニシエーション)

ここでふと、「それは古い考えだ!なぜ、わざわざそんなことをする必要があるんだ!」と感じる方がいるかもしれません。たしかに旧時代的な考え方にも見えますが、これが"組織"というものなのです。

逆に、このことを理解していれば、新人は自ら積極的に努力し成果を出そうとすればよいのです。その姿勢を認めた同僚たちも新人を歓迎し、関係性を築こうと動きます。結果、新人は有能感を獲得し、信頼も築かれ、良いサイクルが回り始めます。

人事が今後オンボーディングの仕組みを構築するとき、こうした考え方を押さえておくことが何より重要でしょう。

(参考文献)
Feldman, D. C. (1977), “The Role of Initiation Activities in Socialization,” Human Relations, Vol. 30, pp. 977990.

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