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仕事の「適性」、どう測る?ーー 適性検査で測る2つの項目とは

皆さんは今のお仕事に適性を感じていますか?

「適性がある」と答えた方々に質問です。何がその適性を感じさせたのでしょうか?

一方で「ない」と答えた方々にも質問です。何が適性がないと感じさせてのでしょうか?

仕事の適性について、その根拠を示すことは簡単ではありません。

では、適性検査を使えば、その答えを導き出すことができるのでしょうか?




職業適合性(Vocational Fitness):仕事の適性は「能力」「パーソナリティ」で見る


「適性」の捉え方は専門家によってさまざまですが、その中でも職業適合性(Vocational Fitness)は参考になる考え方でしょう。

アメリカの心理学者、ドナルド・E・スーパー(Donald E. Super)氏が唱えた理論で、人と職業の適合性を「能力(Ability)」と「パーソナリティ(Pesonality)」の2つの要素で説明しようと試みました*1。

スーパー氏は、「能力」とは「狭義の適性:aptitudes(将来何ができるか?)」と「技量:proficiency(現在何ができるか?)」で構成されるとしています。たとえば、「狭義の適性」は論理思考や問題解決力など、「技量」は語学力や会計の知識などです。

一方で、「パーソナリティ」とは「適用」「価値」「興味」「態度」の4つで構成されるとしています。たとえば、仕事を何とか成し遂げようとする達成意欲や、約束を必ず守ろうとする誠実性などです。

要するに、「職業適合性」は人と職業との関係のふさわしさを規定する条件として「能力」「パーソナリティ」があるとしているのです。


適性三側面理論:「職務適応」「職場適応」「自己適応」の三側面から分類


さて、ここに対して新たな視点を提案したのが「適性三側面理論」です。この理論を唱えた大沢武志氏は、現在、企業の採用選考で広く利用される適性検査「SPI」の開発者としても有名です。

大沢氏曰く、適性は能力だけでなく、人格全体も入れながら見るべきだという立場を取り、職務適応、職場適応、自己適応の三側面を唱えました*2。具体的には、仕事をこなせるかという「職務適応」、職場になじめるかという「職場適応」、仕事に興味を持ち続けられるかという「自己適応」の3つです。

大沢氏はこの3つのうち、どれが欠ければ仕事は長続きしないとし、採用においてはこの三側面を満たした人材である必要があると説いたのです。


適性検査で測定するのは「性格」と「能力」


さて、ここまで二つの理論を見てきましたが、果たして今の適性検査はどんな項目を見ているのでしょうか?

結論から言えば、その多くは「能力」と「性格」を対象にしています。これはスーパー氏の「職業適合性」が基本になっているためでしょう。すなわち、対象者の知識や思考力などを測定する「能力検査」、対象者の人物特性を測定する「性格検査」の2つから構成されているものが多く見かけます。もちろん、ツールによっては他の項目も対象にしているものも多くあるため、適性検査を利用する際は「何を測るものなのか?」をしっかり確認しておく必要があるでしょう。

最後に、適性検査の限界についても触れておきましょう。室山(2008)では、その限界として大きく3つの点を述べています。すなわち、① 適性検査では個人の特徴まではうまく測定できないものがある、② 適性検査は常に一定の誤差がある、③ 一回限りの検査では長期的に見た将来予測の妥当性には限界がある、という点です。

あえて振り切って言えば、「適性検査は万能ではない」と言ってもいいでしょう。もちろん一定の確からしさはあるでしょうが、それでもその人のすべてを網羅できることはなく、ある視点からの評価に過ぎないことは理解しておくべきです。その上で、結果は参考程度に受け止めながら、それを媒介にしながらよりその人を知ろうとする努力が大事であると考えています。

(参考文献)
*1 D.E.スーパー,M.J.ボーン/著,藤本喜八,大沢武志/訳(1973)『職業の心理』ダイヤモンド社
*2 大沢武志(1989)『採用と人事測定』朝日出版社
*3 室山晴美(2008)「適性検査を活用する有効性について」日本労働研究雑誌 50 (4), 58-61

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