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人的資本管理、いつから言われ始めた?

近年、「人的資本」という言葉を耳にする機会が増えました。

人的資本経営という考え方も注目を浴び、各社とも力を入れ始めています。

ただ、以前より人的資本管理(Human Capital Management、通称HCM)という概念もあり、いったい何が違うのかと疑問に思うことでしょう。

人的資本の歴史を見ながら、両者の違いを見てみましょう。



人的資本という考え方は、意外に古くからある?


人的資本管理とは、組織や企業が人材を重要な資源として捉え、その能力や知識を最大限に活用して経営成果を上げるためのアプローチです。

人的資本管理は、人事管理の戦略的な側面を強調する言葉として、2020年代に入ってから広く使われるようになりました。

しかし、人的資本という考え方自体は、18世紀の経済学者アダム・スミスが『国富論』で言及したと言われています。

アダム・スミスは、生産性の高い労働者とそうでない労働者、高い賃金をもらっている労働者とそうでない労働者の違いは、教育や仕事の経験などから生まれていると主張しました。彼は、人間の能力は価値があり、適切な投資で強化できると考えました。これが人的資本の原型となりました。


人的資本の概念は、20世紀になって確立された


人的資本の概念は、20世紀に入ってからさらに発展しました。

1960年代には、ノーベル経済学賞を受賞したゲイリー・ベッカーをはじめとする労働経済学者が、人的資本の理論を展開しました。

彼らは、人的資本は教育や訓練などの形で獲得され、将来の所得や雇用に影響を与えると分析しました。また、人的資本は、個人だけでなく、社会や経済にも貢献すると指摘しました。

人的資本の考え方が経営学や経営実務の分野にも取り入れらたのは1970年代です。

最初に人的資源という概念が生まれました。人的資源とは、人的資本を組織や企業の視点から捉えたもので、従業員の能力や知識を経営資源として認識し、管理や開発を行うことを意味します。人的資源管理は、人事管理の分野で重要なテーマとなりました。

人的資本管理は、人的資源管理の発展形とも言えます。人的資本管理は、人的資源管理と同様に、従業員の能力や知識を経営資源として捉えますが、その目的は、単に人材を管理することではなく、人材を活かすことです。人的資本管理は、従業員のパフォーマンスやエンゲージメントを高めるために、人事制度や組織文化などを戦略的に設計し、実行し、評価することを目指します。人的資本管理は、人事管理の実践的な側面を強調する言葉として、2020年代に入ってから広く使われるようになりました。

人的資本管理と人的資本経営、何が違う?

では、人的資本経営と人的資本管理は何が違うのでしょうか?

人的資本経営は、企業全体の経営戦略と人材戦略の連動を重視し、人材の価値を最大限に引き出すことで、持続的な企業価値の向上を目指す経営手法です。

一方で、人的資本管理は、組織や部門のレベルで、人材の能力や知識を経営資源として認識し、管理や開発を行うことを意味します。

例えば、人的資本経営の一環として、女性管理職比率30%を目指している会社を見かけるでしょう。女性のキャリア構築支援策を多数用意し、女性管理職の比率を高めるなどです。このように、人的資本経営は、中長期的な目標を設定し、経営戦略と連動させて人材の価値を高めることを目指します。

一方、人的資本管理の一環として、新入社員のエンゲージメント向上のため、コース別の採用や通年採用を導入する会社もあります。新入社員がやりたいことにチャレンジできるように配属先を選べる制度や、就学状況に応じて柔軟に対応できる制度を提供するなどです。このように、人的資本管理は、組織や部門のレベルで、人材の能力や知識を経営資源として捉え、管理や開発を行うことを目指します。

以上のように、人的資本経営と人的資本管理の違いは、主に対象となる範囲や視点にあります。人的資本経営は、人的資本管理の発展形とも言えますが、より戦略的で包括的な視点を持つことが特徴です。

人的資本管理は、新しい言葉ではありますが、古い概念ではありません。人的資本管理は、200年以上の歴史と背景を持つ人的資本の考え方を、現代の経営環境に合わせて進化させたものです。人的資本管理は、人事管理の分野で今後も注目されるでしょう。

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