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人材ポートフォリオ、どう作る?

人的資本経営への注目や人的資本情報の開示義務化に伴い、人材ポートフォリオを構築しようとする企業が増えています。

しかし、この課題に取り組む際にはさまざまな難しさに直面することがあります。

構築ステップを概観しながら、各ステップで直面する課題を確認していきましょう。

人材ポートフォリオの構築は「軸を定める」「見える化する」「分類する」の3ステップ


人材ポートフォリオの構築ステップにはさまざまなアプローチが存在します。

ここでは、それぞれの最大公約数化したアプローチである「軸を定める」「見える化する」「分類する」の3ステップをご紹介します。

【ステップ1 軸を定める】

最初に取り組むのは、自社の経営戦略や事業計画に照らして、必要な人材要件や業務などを明確にし、人材タイプを分類する軸を定めることです。その際、活用する枠組みとして代表的なものは以下3つです。


① 人的資源アーキテクチャモデル
Lepak&Snell(1999)で示されたモデルです。「人材の希少性」「人材の価値」という軸を用いて、4つのグループに分類していきます。

David P. Lepak and Scott A. Snell(1999)"The Human Resource Architecture: Toward a Theory of Human Capital Allocation and Development" The Academy of Management Review Vol. 24, No. 1 , pp. 31-48


② 志向性と業務特性(得意分野)
リクルートワークス研究所と守島基博氏によって開発された枠組みです。その人材の志向性(個人/組織)、得意分野(創造/運用)によって分類していきます。


③ タスクモデル
Autor, Levy and Murnane(2003)による枠組みです。「ルーティン(定型的)かノンルーティン(非定型)か」、「マニュアル(手仕事的)かコグニティブ(分析的・対話的)か」で分類していきます。

Autor, D. H., Levy, F., & Murnane, R. J. (2003). The skill content of recent technological change: An empirical exploration. The Quarterly Journal of Economics, 118(4), 1279-1333.


このステップでの難しさは、適切な軸の設定でしょう。既存のモデルや枠組みをそのまま自社に適用するのは難しく、どういった軸を設定するのが良いのかに頭を悩まします。

ヒントになるのは、事業理解です。改めて自社はどういう性質の事業を手掛けているのか、その事業成長に貢献しているのはどういった人材か、などを考えることで、軸のヒントが見つかることでしょう。


【ステップ2 見える化する】

軸が定まったら、次は人材の見える化です。これまでの経験や実績、アセスメント、取得資格などを用いて、人材の特性や能力などを可視化していきます。組織にどのタイプの人材がどの程度いるのかを明確にすることで、人材のバランスなどが把握でき、その後の適材適所の配置に役立てることができます。

このとき、難しさとしてあるのが、とにかくデータを収集することに目が行ってしまい、肝心のデータの種類と運用方法を見落としてしまうことです。「客観的なデータを用いること」、そして「運用イメージを決めておくこと」を意識しましょう。

データを収集する際、人材の特性や能力などについて、どれだけ多くの情報を収集しようとしても、それを完璧に把握することは難しい現実があります。常に情報が不完全であることを認識し、なるべく多くの側面を考慮に入れる努力を行うべきです。

また、人材の可視化は一度実行すれば終わりというものではありません。人は永遠に成長する生き物であり、その状態も刻々と変化していきます。理想は常にその状態を把握することですが、その時間も手間も割き続けるのは現実的ではありません。従い、年に数回など、定期的にデータを更新する頻度を決め、そのときの手順もしっかり決めておくことが大切です。


【ステップ3 分類する】

人材のタイプが定義でき、そのために必要な人材データも手元に揃えば、いよいよ自社の人材を分類していきます。このとき注意したいのが、客観的なデータだけに頼り過ぎないということです。

膨大な人材をタイプ別に分ける作業のため、最初は機械的かつ客観的に分類することになります。しかし、先述の通り、もともとのデータはあくまで人材の一側面を切り取ったものです。こうした不完全さも踏まえながら、最後は人の目で見ることが大切です。

もちろん、この作業にどれだけ時間をかけるのかは企業ごとの状況によるでしょう。ですのであくまで理想論にはなりますが、出来る限り、現場マネジャーとも擦り合わせ、データでは取得できなかった情報も含めて最終化していくことが大事です。


上記のステップを踏んで、理想的な人材ポートフォリオと現状を比較し、適切なバランスが取れているかどうかを分析します。この分析により、具体的な問題点が浮かび上がる可能性があります。たとえば、「ルーティーン業務を得意とする人材が過剰である一方、マネジメント職の人材が不足している」などです。

人材ポートフォリオを構築することで、戦略的な配置や採用を検討するだけでなく、既存の人材を踏まえた戦略の実現可能性を逆算的に評価することもできるでしょう。

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