それは本当に「強み」?ーー ポジティブ心理学における強みの定義を探る
日常生活でもビジネスにおいても、「強み」を活かすことは極めて重要です。
経営思想家のドラッカーも「強み」を活かすことの重要性を強調しています。実績を上げるには、弱みを克服するよりもむしろ、自身の強みを最大限に活かすことが効果的でしょう。
ただし、「強みとは何か?」という問いに対して、その定義の認識は一致していないことがしばしば。皆さんは、「強み」をどう定義しますか?
「強み」の中身を定義しないままに、その重要性ばかりが強調される時代
個人から企業までさまざまな場面で、「強み」を活かす重要性が説かれています。一方、意外にもその定義は曖昧なままであり、それゆえに議論が空中戦になっていることもあります。強みとはそれほど実態が掴めない概念でもあるのです。
この点について、冒頭に触れたドラッカーは自著『プロフェッショナルの条件』で強みについて次のように述べています。
このように、分かるようでわからない概念に対して、特に個人レベルの強みに関する研究を積極的に行っている分野があります。それは"ポジティブ心理学"です。
ポジティブ心理学における強みの研究が本格的に始まったのは1990年代後半のこと。それ以来、強みの発見と活用に関する研究が進行してきました。
こうした「強み」を真っ向から研究する分野で、しばしば引用される強みの定義として有名なのが、Wood et al.(2011)によるものです。これによれば、強みは「人が活躍したり最善を尽くすことを可能にさせる特性」と定義されています。この定義は広範な強みを対象とし、個人的、身体的、心理的な強みを包括しています。
また、ポジティブ心理学では、強みの中でも性格特性的強み(Character Strengths)に焦点を当てて研究も進められています。その際、定義として用いられるのはPark et al.(2004)のものが有名でしょう。「思考、感情、行動に反映されるポジティブな特性」と定義しています。
要するに、「強み」とは、その人だけが持つポジティブな特性であり、これらの特性は個人の思考、感情、行動に影響を与えるものと言えます。
自身の「強み」を見出すための診断ツール2選
さて、「強み」に対する理解を深めた上で、最後にご紹介したいのが強みを見出すための診断ツールです。
代表的なのが、米ギャラップ社の「ストレングス・ファインダー」と、故クリストファー・ピーターソン博士とマーティン・セリグマン博士が開発した「VIA-IS(Values in Action Inventory of Strength)」です。いずれも強みを見出したいときに使える診断ツールですが、特徴が異なります。
「ストレングス・ファインダー」は主に仕事の側面に焦点を当て、個人の強みを特定するために使用されます。このツールで見出した強みは、特に個人の才能やスキルの向上に寄与するとされます。有料のツールです。
一方、「VIA-IS」は仕事ではなくその人の人生全般の強みを評価し、個人の人格形成に役立つとされます。特に徳性(virtues)に焦点を当てているツールで、無料で利用できます。
どちらも開発経緯や根本の思想を見ると、全く異なるツールであることがわかります。したがって、個人的なオススメは、両方のツールを併用することで自身の強みを多面的に評価することです。そうすることで、より深く自己理解を深めることができるでしょう。
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