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【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】⑱

巡礼11日目

ベロラド(Belorado)  ~  アヘス(Ages)

■霧の中を歩く

早朝、まだ薄暗い中を歩き出す。

街は濃い霧に覆われ、少し先が見えないほどだった。スペインの朝は、まだ少し肌寒い。

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のんびり歩いていると、後ろから二人組の男の子が追い抜いていった。

彼らは、ロスアルコスで向かいのベッドに寝ていた子達か。二人とも歩くのが速く、あっという間に霧の中へ消えていく。彼らが歌っていたビートルズだけが僕達の耳にいつまでも残っていた。

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モンテス・デ・オカ(Montes de Oca)を過ぎると登り坂が始まる。一時間ほど登るだろうか。

さほど時間も疲れも感じなかったのは、妻のペース配分もあるからかもしれない。本当に、辛い顔一つせずけろっと登るようになってしまったのだから末恐ろしい。(絶対ヒマラヤも歩けると思うんだけど…笑)

先日リオハワインをくれたお姉ちゃんや、オーストラリアから来た母娘と会って挨拶をする。

「Buen Camino!!」

どちらともなしに掛けるこの言葉は本当に魔法の言葉だ。国が違えど、言葉が違えどこの合言葉があれば僕達はお互い励まし合い、繋がることができるのだから。

余談だが、オーストラリアの母娘はお母さんも美人だし、娘さんはまるで天使のように可愛らしい。多分、お母さんと一緒でなければ争奪戦が起きるくらい。僕達は敬意を込めて彼女たちを天使と呼んでいた。

■そう言えば、何でホタテ貝?

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「今さらだな!」と言われれば本当にその通りなのだけど、何で巡礼のシンボルがホタテ貝なのか頑張って説明しようと思う。

ホタテ貝は、この巡礼の道の象徴であり、イエス・キリストの十二使徒の【聖ヤコブ】に由来している。

この聖ヤコブの遺骸が、エルサレムで殉教した後、ガリシアまで船で運ばれて埋葬された伝説がある。この時に、遺骸を乗せた船の底にはホタテ貝がびっしりと付いていたと言うのが、ホタテ貝がヤコブを象徴する逸話の一つ。

そして、伝説かと思われた聖ヤコブの遺骸は、9世紀に奇跡的にサンティアゴ・デ・コンポステーラで発見された。天使のお告げによって、羊飼いが星の光に導かれて墓を発見し、それを記念して墓の上に大聖堂が建った。と言う流れのようだ。

そのためローマ、エルサレムと並ぶキリスト教の三大聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago・de・Compostela)は、Santiago=聖ヤコブ、compostela=諸説あるけど、ふさわしい場所、墓の意をもって、【聖ヤコブにとってのふさわしい場所】と解釈するらしい。

これについては色々な議論と解釈があるから、信じたい説を信じればいいと思う。

僕は、ラテン語のCampus stellae(星の平原)の派生語とする説が一番ロマンを感じて好きだ。

聖ヤコブが守護聖人として崇拝されるのは、この後の歴史に起こるレコンキスタの影響が色濃い。こうした聖人崇拝の文化と、そのヤコブを象徴するものがホタテ貝だと言うことで、聖地サンティアゴを目指す巡礼は、ホタテ貝の導きに従うようになった。と言うことらしい。

うーん、単純なような、複雑なような。

とにかく、宗教と歴史、文化への理解が必要だと言うことかもしれない。

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■アヘスまで歩こうか

サンファン・デ・オルテガへ着いたのは午後1時頃。この分なら問題なくアヘスまで行けそうだ。

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オルテガからアヘスまでは、牧草地帯を抜けていく。

放牧された牛たちを眺めながらゆっくり歩いた。どこまでも広がる畑と、のんびりした牛たち。思わず僕たちもここで昼寝してしまいたくなる。

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緩やかな坂を下れば、もうすぐにアヘスの街が見える。オルテガからアヘスまで4㎞ほどだが、もうこの頃になると4㎞なんて鼻歌混じりに歩けるようになる。

■アヘス到着

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アヘスはアルベルゲとレストラン位しかない、シンプルな街だ。

スーパーもないから自炊は無し。その代わり、レストランでメヌーを食べる。

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本当に美味しいし、お腹一杯だし、何より安い。日本でこれを出せと言われても、少なくとも僕には出来ない…

巡礼者ならではの特権だ。

■イースターと、アルベルゲ情報

昨日「ブルゴスの宿がないかも」という情報があったのだが、

改めて、妻がライアンから聞いた話だと、どうもイースター(復活祭)が関係しているらしい。

土日はほとんどのお店が休むスペインだが、祝日もまた同じ。ましてやイースターはキリスト教の祝日な訳だから、それはもう盛大に皆休んでお祝いをするわけだ。

そう言うことだから、アルベルゲも私営が休みになる。あるいは、予約が出来る私営アルベルゲやホステルは観光客の予約で一杯になるだろう。と言う事情のようだ。

そうなると僕達公営アルベルゲ大好き、節約大好き組は出来ることは一つ。

早く着いて宿を確保すること

以上。

もはや、ミッションだ。これは。

明日は大雨予想だけど、とにかく早出して昼には到着してしまおう。と言うこと。

こうして、僕達の明日の予定が決まった。12時までに、ブルゴスまで23㎞歩ききる。

だから、今日は早く寝よう。

※祝日のアルベルゲの確保には、事前に予約を入れておくのが一番効率的で早いと思う。

天気も悪いのに無理して歩いて体調を崩すのが一番良くない。僕達は歩いて間に合わせるもっとも原始的な方法だったけど、他に良いやり方があるならそちらが良いこともある。

とにかく大切なのは、土日祝祭日のスペインは宿と食料の確保が大変だと言うことを理解していただけたら、それでいいと思う。

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ベロラド(Belorado) ~ アヘス(Ages)

歩いた距離 28km

サンティアゴまで残り 518km(アヘス記載)

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