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チョコレート・チョコレート
七度目の失恋をした。
三十二歳の私にとって、それが多いのか少ないのかは、正直なところ解らない。ただ私は、誰かを好きになる度にいつもこんなふうに思ってきた。これが私の運命の恋で、最後の恋になるのだと。私はこの人と結ばれて未来永劫末長く幸せになるんだと。
けれど何故か、気がついたら恋は終わってしまっている。
理由はそのときどきで違う。単なる片想いで終わったこともある。付き合い始めたのはいいけれ
見送りなんてしないけど。
普段ほとんど接点もなくて、喋る機会さえまるでないあのひとに、片想いを始めて三年。何とか連絡先を交換してLINE友だちになって半年とちょっと。まだ告白する勇気も持てないままの三月の始めに、辞令が出た。異動。しかも他県の支店勤務だって。どんだけ離れてるのかGoogleマップで調べてみて、思わず笑ってしまった。
* * *
「いつ引っ越すの?」
『二十九日の朝九時半の予定』
「準備進んでる?」
『
まちわびるのは、うましはる。
昨今の小学四年生は、思った以上に忙しい、らしい。
琴音もまた、ご多分に漏れずなかなかに多忙な小学四年生だ。学校以外にピアノと英会話の教室にも通っているから、なおさら。だから今日――三月三日のこんな時間に家でぶらぶらしてるなんて、奇跡だ。僕はむりやり仕事に一段落つけて、リビングでDVDを観ようとしていた琴音に声をかけた。
「パパとデートしようよ?」
琴音が訝しげに眉をひそめる。ママと同じ癖だ
ありがとう、たくさん。
私のキャリアにとって、結婚やら妊娠やら出産なんて、はっきり言って余計な回り道でしかないと思ってた。
* * *
ルームシェアしていた郁生となんとなくそういう関係になって、妊娠が発覚したときには、しまった、としか思えず。やっぱりピルを飲んでおくべきだったと後悔しても遅かった。
だけど郁生が泣きながら喜んで、すぐに籍入れようなんて言い出すから、堕ろしたいって言えなくなってしまった。本当は子ど
花束なんてガラじゃない(笑)
バレンタイン・デー、ねえ。
本命、義理、の他にも今は、友チョコなんてのもあるんだってね。
女子って大変だよな。
なになに?
チョコやらクッキーやら配る男も、居んの?
へぇ……そりゃまたなんつうか……。
バレンタイン。
一筋縄では、いかねぇのな。
* * *
女子が好きな男子にチョコあげて告白するのは日本だけで、どこだかの国では、男が好きな女子に花束をあげ