自信のない新入社員は斜に構えてみて / 新卒1年目のつらみ話
今回は私が新卒入社してから味わった「自信をなくしてしまう」ことと、その解決までにフォーカスした話を書きます。
働いていると自信が無くなってしまう
恐る恐る仕事をしている感じで楽しくない
どうにかしたいけど、時間が解決してくれると放置している
これは私の経験ですが、気にしいな人・人見知りな人・大人がちょっぴり苦手な人なんかは入社してから前述のようなつらい状態に陥りがちなのではないかと考えています。
どうしてつらい状態に陥ってしまうのか、その中で働けば何が起きるのか、どのように解消したのかを体験談ベースに書いていきます。
00 私について
本編に入る前に、私の入社までの経緯やどのようにデザインと関わってきたのかを軽く示しておきます。
デザインは大学から学びはじめた(工業大学のデザイン科)
空間、プロダクト、グラフィックなど幅広い分野を浅く学ぶ
課題や研究では成果を残してきた
しかし「これやってきました!」と言えるようなものがなかった
デザイナーとして入社した会社は自分にとってレベルが高いと感じていた
確信はないですが、デザイナーやエンジニアといった専門職においてこのような背景を持つ人は少なくないのではないかと思います。
01 つらくなる人間性
まず、自信を失う原因に繋がったと考える私の人間性を洗い出していきます。
他人の顔色を伺う
他人と比べがち
大人に怒られるのが怖い
人見知り
初歩的なことが聞けない
これに限った話ではないと思いますが、このような人間性を持った人はつらい状態に陥る確率が高いと考えています。
根本にあるのは「できないこと・知らないことは恥ずかしい・良くないことだ」という思い込みで、普段はできない・知らないことを秘匿して生きています。
秘匿しているということは、当人が何か大きな問題を起こさない限り、このような人間性は他者から見えづらい、見えるようなきっかけがないということでもあります。
02 つらくなる環境
そして、人間性とともに自信を失う原因として大きいものは環境です。
つらくなる環境として、私が体験したのは「同職種の同期が少ない・すぐに現場に入る・上の人間がいない」です。
具体的に言うと
デザイナーの同期 → 1人
現場に入るまで → 研修2週間
いなくなった上の人間 → デザイナーほとんど全員
3つめはレアケースですが、「入社してすぐに先輩・メンター・マネージャーが転職する」みたいに小さなスケールでも起こることなので、このような環境は珍しくないということです。
人間性と環境、2つが良くない噛み合い方をした結果、私がどうなってしまったか。
03 触れづらい、つらそうな新人
いろいろ気にしがちな人間が、ひとりでいきなり現場に入るとどうなるか。
仕事で出てくる知らない言葉を聞けず、時間をかけて調べてしまったり、結局答えが出ずにドメインの知識が一向に身につかない。
失敗を恐れて消極的なアウトプットに終始し、相談できないので間違いに気づけない。
開発目標や施策の意図が理解できないまま進み、黙って言われたことだけやるようになる。
このような状況が良くないとわかっているが改善できず、何も貢献できていないと落ち込む。
「聞けないこと」「言えないこと」「気にすること」が自然に解消されないような環境にいると、このようなつらい状況に陥り、時間とともにどんどん抜け出せなくなっていきます。
当時の私は触れづらい、つらそうな新人になっていたのだと思います。
04 新卒バイアス
できないこと・わからないことを開示できないことが非常に大きな問題となっているわけですが、なぜここまでつらくなってしまったのでしょうか。
私はここまで追い詰められたことがなかったので、原因は今と今までの違いを比べることでハッキリするのではないかと考えました。
今までになく新卒1年目の今しかないこと。
そのときの私が考えたのは3つの差でした。
知識の差
経験の差
技術の差
今は「こんな差はあって当たり前だし、何を気にしているんだ」と思いますが、当時の私の行動と思考を支配していたのはこれらの差が生み出す「否定的な自己認識」です。
これを私は個人的に「新卒バイアス」と呼んでいます。
いろいろ気にしがちな人間が、自分より知識・経験・技術が優れていると感じる人に囲まれると実態とは乖離した強い劣等感や、自己否定が生まれる。
渦中の私が「これは強いバイアスがかかっている」などと考えられるわけがなく、無意識に自分を追い込み、周りは「なぜこの人が追い込まれているのかがわからない」という状況が作られます。
どうにかしたいと思う気持ちが強いほど、どんどん沼にハマっていくような感覚がありました。
加えて私の場合、大学時代に専攻していた領域と少し違った(空間→アプリケーション)こともあり、「知識がない」「技術がない」といった認識がより強くなっていました。
「知識もないし、技術もない」と口にすることが多々ありましたが、その度に先輩からは「知識はないのが当たり前だし、技術はある」と言われていたことを覚えています。
振り返って思うのは、そのような助言をもらっても全く揺るがないほどに「新卒バイアス」は強いものだということです。
05 時間が解決するけど
どのように「新卒バイアス」を解消し、自信を取り戻せば良いのか。
今の私が言えるのは2つの方法で、ひとつは時間が解決するのを待つというもの。
時間をかけて「聞けなかったことが聞けるようになる」ような人間関係を構築するだとか、「周りの人と知識や経験の差を感じなくなる」まで仕事をすることで「新卒バイアス」は自然と、いつの間にか消えていくと思います。
じゃあ時間が解決するのを待てばいいじゃないか、というわけにもいかない場合があります。
例えば「早くから現場で仕事を回すことを期待されてる」とか「そのうち仕事をやめたくなってしまう」とか、時間が経つのを待てないという状況は多々あります。
また、「人間性」や「環境」が引き起こす問題には高い再現性があると考えています。
「よく話す人とは上手くいかない」「緩い雰囲気では仕事が進まない」「距離感が近すぎると思ったことを言えない」など、何回か経験するうちに避けるようになった「人間性」や「環境」が誰しもあると思います。
何回か経験し、傾向が掴めるようになっているということは、その問題には再現性があるということでしょう。
だから、時間が解決したとして「気づいたらなんともなくなってた、あのときの自分は本当の自分じゃなかったんだ」というふうに「なんとなく」ものごとを捉えていては次も似たような問題に苦しめられてしまいます。
06 会社の外に居場所を作る
私が実践したのはふたつ目の方法で、とにかく会社の外の人と関わり、会社の外に居場所を作るというものです。
強い目的意識があったわけではなく、「ずっと会社にいると息苦しい」くらいの理由で地元の友達と会ったり、他社のデザイナーが集まる場に参加したり、大学に行ってゼミを受けたりしていました。
これが思いの外、状況を好転させるきっかけになりました。
前述のような行動を続けていると、徐々に「考えすぎてたな」という思考に変化していき、「なぜこんなにつらい状態なのだろう」と冷静に原因を探り始めました。
変化の要因として
友達にならできないことを言えた
同じ問題を抱えている人がいた
このような「会社にはいなかった人」と「会社ではできなかったコミュニケーション」ができたことで、自分が困っている原因が言葉にできたり、誰かがそれを明らかにしてくれたりします。
バイアスというのは「偏った見方」であるため、他の見方を知ることができれば解消されていくわけです。
しかし、会社の中にいる人からの視点というのは「この人が上手く働けるようになってほしい」「早く成果が出るようにしたい」という目的がある前提だと思います。
その視点からの言葉が助けになることもあれば、逆に「話を聞いてもらっているのだから、早くなんとかしなければ」と焦ってしまうことも。
私に対して「上手くいかなくても良い」「別にどうなっても良い」「何も思っていない」くらいの心持ちでいる人からの意見ほど、バイアスを解消するのには効果的です。
07 斜に構える
会社の外に居場所を作ることで、さまざまな人の視点から自身に起きている問題を明らかにする中で徐々に「新卒バイアス」は薄れていきます。
このように「意識が変わって楽になった」ときは、それをどのように再現性あるものにするか、維持できるものにするかを考えなくてはいけません。
そうすることで、ようやく本来の力を発揮して自信を取り戻すに至る。
「意識を変えるのは行動で、行動を引き起こすのは仕組みである」というのは私の経験則ですが、会社の中でも「聞きたいことが聞きる」「言いたいことが言える」「自信を持って働ける」ための仕組みが必要です。
私なりに自身の行動や、起きた変化を抽象的にみることで「これから何をすれば良いか」を書いていきます。
しかし、ここからの手法的な話はあくまで私に最適化されたものだというこは言うまでもなく、個々人がこれをヒントに「じゃあ自分はどうするか」を考えるきっかけになればと思っています。
さて、「会社の外に居場所を作る」ことで「他者の視点をもらう」というのは、自身が正面から向き合っている物事に対して「正面ではない角度からの視点」を獲得するということです。
私はこの「正面ではない角度からの視点」を「斜に構えた視点」と捉えています。
「物事に正対しない」は前述までの通りですが、「皮肉やからかい」というのは何にどう役立つのか。
世間的にはよく思われない「斜に構える」姿勢こそが、自信なく言われたままに働く私を「自ら問い、自走できる人」に変えた最大の要因です。
08 Why so?
「斜に構える」ことが何にどう影響したのか。
入社して「新卒バイアス」に陥った私が抱えていた問題は、「質問が出てこない」「わからないことを流してしまう」「仕事の理解度が低いまま」と連鎖的なものでした。
なんとかそのバイアスを解消しつつある私ですが「質問はできそうなんだけど、そもそも質問が出てこない」という状態にありました。
わからないことを自覚していない、もしくはわからないことを自覚しながらそれを気に留めていない状態ですね。
「自分だけ知らないかも」とか「知らないことばかりで聞きづらい」といった気持ちがあるため、知らないことは当たり前なのにそれを表に出せないでいました。
このような「そうなのは当たり前なのに、言い出せない自分」に対して斜に構えてみるとどう見えてくるでしょう。
私がわからなかったことの多くはITやエンジニアリングなどの専門用語や概念、ビジネス用語や会社独自の言葉など。
正面から向き合っていたときは「わからない自分が悪い」「恥ずかしい」と思っていたのですが、斜に構えてみると「そんなもの知るわけがない」「カタカナ言葉ばかり使いやがって」と気持ちが変化してきました。
ここで起きた変化は「専門用語を全然知らない私」という見方が「知るわけもない言葉を使うみんな」になったこと。
つまり、自分が陥っている状態の原因を少し多視点的に捉えることができるようになっているのです。
もちろん、みんなが自分とだけ仕事をしているわけじゃないので知らない専門用語が出てくるのは当たり前で、それも聞かなきゃいちいち教えてくれるわけがないのは当然のことです。
しかし、大事なのはそのような当然のことに苦しめられているのは「なぜ」なのか、どうすれば解決できるのかを考えることであり、そのきっかけを作るのが「斜に構える」ことによる強制的な視点の切り替えなのです。
表に出してはいけませんが、自己否定的な新入社員においては「皮肉やからかい」という態度が視点を切り替えるにはちょうど良いスパイスになります。
わからない・知らないことがたくさんあり、聞くことが知るための近道で、知らないことが当たり前なのだからどんどん聞いて良い。
これが斜に構えることでたどり着いた「当然の答え」です。
なぜそんな言い方をするかというと、最初から「聞ける人」は何も考えずともこのような論理で動いているからです。
私と同じような気にしいで、人見知りで、聞きたいことが聞けないような人はこの現実に絶望するしれませんが、遠回りでも本質的に物事がわかるようになるにはこのようにしつこく考える必要もあるのです。
正面から向き合うだけでは気づけないことを、斜に構えることで「なぜ→Why so?」と問い、浮かび上がった問題を多視点で解決する。
これ、私はデザイナーなので「デザイナーに必要」と言い切りたいところですが、どんな人にも必要な能力ではないでしょうか。
09 感覚的に斜に構える
斜に構えるのが大事と言っても日々の生活の中でこのような「意識の目標」はすぐに抜けてしまいがちで、達成できているかも曖昧なものです。
理想は「気づいたときには意識せずともできるようになっていて、周りの人に言われて自覚する」みたいな状況ですが、私が感覚的に斜に構えることができるようになるまでにやったことを紹介します。
ひとつは、頭に残り、唱えたくなるフレーズを作ること。
「所詮は言葉」という人もいますが私は言葉ひとつで人の意識や行動は大きく変わると思っています。
「斜に構えよう」とか「斜に構えた視点を持つ」みたいな言葉では一般的すぎて頭に残らないし、いつまでも自分のものになった気がしない。
そこで私は「斜に構えてWhy so?」というフレーズを作りました。
ふたつ目に、紙に書いて常に目に触れるところ→デスクに置いて、生きているだけで刷り込まれるような状況を作りました。
他の人の目に触れたことで「斜に構えてWhy so?」を周りから日々言われて意識できたり、自身の思考プロセスについて話し合うこともできました。
このような刷り込みが功を奏し、今では自身のアイデンティティとなるような多視点的な思考に繋がったと考えています。
10 おわりに、仕事に集中しないこと
今回の話は私の一例で、読んだ人が少しでも活かせるようなところがあれば是非参考にしてもらえると嬉しいです。
しかし、私の一例とは言っても、これだけは割と普遍的に言えることなのではないかと思うことがあります。
それは、仕事を含め自分が向き合っている物事を成功させるには、それだけに集中していては難しいのではないかということ。
うまくいかないからもっと仕事に集中しなくては、というのは仕事がうまくいかない理由を閉鎖的に捉えすぎだし、どれだけ時間をかけて考えてもうまくいかないことはあります。
良いアイデアが他のことをしているときに思い浮かぶ、というのはほとんどの人が経験しているだろうし、これには一定の再現性があります。
特に、研究のような長い時間同じことを考え続けなければいけない環境を経験した人には実感として伝わりやすいのではないでしょうか。
私の場合、斜に構えるという考え方はネットサーフィン中に偶然見つけた記事を参考にしたものであり、これは仕事に活かそうとか、自分の抱える問題を解決しようと探していたものではありません。
新入社員という時期は、強迫的に仕事に集中してしまうような環境にもなってしまうため、今一度自分の仕事との向き合い方、今抱えている問題を斜に構えて見てはいかがでしょうか。
参考にした著書や記事はこちら
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