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【目印を見つけるノート】523. クリムゾンを明晰に聴いていたのかな

水曜日です。

今日は小説の更新日ですので、あまり本をパラパラめくっている余裕がないのですが、少しずつ読んでいる本を開いたりします。ありがちな息抜きといえるでしょう。

この本は三木清さんの『教養論集』(講談社文芸文庫)です。ひとつひとつの節は短いのでパラパラ読んでもさほど時間はかかりません。この方のご著書は高校のときに初めて読んだのですが、それぞれの内容がいまだに古くなっていないことに驚きます。

もし、自分が「知識人」、「教養人」をイメージするとしたらその原型はこの方ですね。アリストテレスと言ってもいいのでしょうが、ギリシア語は読めないので😅
やっぱり、その人となりに触れるのに、多少は原典の言語で理解できたほうがいいように思います。

三木清さんは戦争の、本当に末期に人を匿ったということで検挙・拘禁されて、いわゆる終戦の後に拘禁先で亡くなりました。西田幾多郎さんの弟子だった彼は、マルクス主義者であったという背景はありますが、アリストテレスやパスカル、カント、ヘーゲルからニーチェに至るドイツ哲学を紹介するなど、広く大きい流れを会得されていた。同じことかもしれませんが、狭い枠にとらわれてはいませんでした。
岩波新書の発刊にも関わっていたそうです。
「教養を持つこと」はこの時代でも禁止されていなかったようですが、あまねく広めるお仕事をされていたといえるでしょう。

どのご著書でしたか、高校の頃に読んだ本に『明晰に考えなければならない』と冒頭部分に書かれているものがあって、そのフレーズだけ今も覚えています。時々頭の中で繰り返します。「明晰」とは何か、から始まって、「このテーマを明晰に考えるとどのような手順になるだろう」と考えたりします。
まぁ、そうそう上手くいくものではないですけれど😱

もし、自分が大学の初年度にいて、三木さんが先生だったらとても面白いだろうなと想像することがあります。時期は相当離れていますが、三木さんが教授をされていた大学にいましたので、当時も何気に岩波新書を持って歩いたり……誰も気づきませんよね。はい。
絶対質問しちゃうなあ。それで、粗忽な質問だったりして「出直してこい」って叱られちゃうかなあ。

(しばし想像……)
「先生、好奇心はよくないとおっしゃいますが、どのような事象にも関心を持つことが好奇心だとするならば、それは決して悪いことだとは思えないのです。ひとつのことに凝り固まって他を見ないほうが問題ではないですか」
「うん、それは好奇心というものをどう捉えているかに拠るだろう。ただの浅薄で上辺だけかすめ取って知ったつもりになってしまうのならば、望ましくないのではないか。どこに着地点を定めるかということだろう」
(以下略)
この本を読んでいると、そのような「一人受講&問答」ができたりします。
ああ、たった今それをしていると他のことができませんね(苦笑)。

一文だけ引用します。

現代におけるヒューマニズムの根本問題は人間再生の問題である。そのことに就いては私はこれまで縷々繰り返して述べてきた。新しい社会が作られるためには新しい人間が生れねばならず、新しい人間が生れるためには新しい社会が作られねばならぬ。このことは何等遠い将来の問題ではない。人間の再生は今日において、我々自身にとって根源的な欲求である。
『三木清 教養論集』大澤聡編(講談社文芸文庫)より『ヒューマニズムの現代的意義』を一部引用

これは1936年11月に発表されたものですね。ニ・ニ六事件のあった年で、スペイン内戦の年です。ヘミングウェイは義勇兵になろうと赴いて、翌年にはドイツによる空爆の悲惨をピカソが『ゲルニカ』に描いた……脱線しましたが、世の空気が息苦しくなってきた時期です。その頃にこのような文を発表したのは著者の危機感の表れだったように思います。

そして、今これを読んでも通底する部分は同じであるように考えます。世界的な戦争やファシズムの台頭ではないですが、ヒューマニズムというものがどこかしらこぼれ落ちてしまっている例はたやすく見つけられるのではないでしょうか。この頃のように、どの政治体制がいい悪いとも言えなくなりましたので、前例のない、ただし前例をよくよく検証した上で新しい社会を創る必要があるのだろうと思います。

あれ、話がまた大きくなっちゃった。

⚫今日の1曲

ということで、なぜか今日はこの曲を。
KING CRIMSON『Elephant Talk』

私がクリムゾン出すと意外ですか?
いえ、お尋ねしたわけではありません。
この曲が入っている『Discipline』というアルバムが好きで、かけ流し(温泉?)でいっとき過ごしていました。グルーヴもあって、言葉遊びの裏にこう、何かうねうねするものを感じたり、まあ理屈ではなくて好きです。

この曲も言葉遊びがあるのです。
一部引用します。

Talk, it's only talk
Arguments agreements advice answers,
Articulate announcements
It's only talk ...

Talk, it's only talk
Babble burble banter bicker bicker bicker
Brouhaha balderdash ballyhoo
It's only talk, backtalk...

Talk, talk, talk, it's only talk
Comments cliches, commentary controversy
Chatter chitchat chitchat chitchat
Conversation contradiction criticism
It's only talk, cheap talk
(紹介のための一部引用)

単語がA、B、Cと続いています。
Eまで続いてElephant Talkというわけです。
楽しいですね、と終わらせたいところですが、それだけでは足りないでしょう。このアルバム全体のテーマ、私はディストピアかなって思っていました。インタビューも何も見ていませんので、本当かは怪しいです。その意味でABCの意味なしトーク(いや、統一性はある)も私には示唆的に思えたのですが、当時の評価は今一つでした。ぐすん。

えーと、書きすぎました。
本編に戻ります。

お読みくださってありがとうございます。

尾方佐羽

追伸 こんな調子です。

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