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伝説のつるぎ 大熊健司
2021年6月27日 00:04
「清志、今日の見たか?」「今日の。何をですか?」「何をって、今場所の千秋楽だよ。」「今場所の千秋楽……あ、相撲ですか。」「そうだよ。」「すいません、見てないです。」「はあ、これだから最近の若いもんは。」 竜さんは深いため息を漏らしながらそう言った。「すいません。」「いいか、相撲ってのは日本の国技だ。」「はい。」「昔はな、神事、まあつまり神前での祈りだったり、神様にお伺いを立て
2021年6月20日 00:07
「いやあ結構歌ったなあ。」「そうだな。」 俊作と俺は久しぶりにカラオケに来ていた。「お腹減ったし、飯でも食うか。」「もうそんな時間なんだ。」 スマホを見て驚く。結構長いこと歌っていたみたいだ。フリータイムで入るとついつい時間間隔を失ってしまう。「やっぱり、ラーメンか?」「まあそうだね。」 大学生男子が二人集まれば飯がラーメンになってしまうのは、最早自然の摂理である。「あれ、今川焼
2021年6月13日 04:37
「松野くん、一緒に帰らないか?」そう声をかけてきたのは、クラスメイトの九十九英一(つくも)だった。「ああ、もちろん。」俺は当然のように了承した。彼と知り合ったのは、高校の入学式の日だった。彼は、俺と陽介が廊下で話しているのを見て、話しかけてきたのだった。「はじめまして。」声のする方を見ると、そこには、身長は平均よりやや高いくらいだが、とても恰幅のいい眼鏡をかけた男が立っていた。「僕
2021年6月6日 03:39
「勇作さん、おかえりなさい。」 母さんは涙ぐみながらそう言った。「ただいま。亜寿美さん、勇樹。」 父さんも涙ぐんでいる。 先に言っておくが、別に父さんはどこか遠くに行っていたわけではない。会社帰りではあるが、さすがに毎日こんな風に出迎えるほど、変わり者な夫婦でもない。まあ確かに変わり者な夫婦ではあるのだが。「再検査の結果、何とか正常値に近づけることができたよ。これもひとえに、いつも献立を