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    ベテラン看護師が入院生活を快適に送る方法を伝えます

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    ベテラン看護師のメモ・タスク管理の方法を紹介します

最近の記事

01 ワークシートは第二の頭脳

ワークシートをA4クリップボードに挟むことの限界これまで一緒に働いてきた同僚はみな、患者さんの年齢や性別が印刷されたA4のワークシートをクリップボードに挟んで、患者さんの予定や検査の値など、その日の業務に必要な情報を書き込んでいました。またポケットに入るサイズのメモ帳に、業務のやり方や、疾患について勉強した観察ポイントなどの、何度も見返す内容をまとめてありました。 クリップボードは、情報収集やミーティングのときには下敷きとして使えるだけでなく、 業務マニュアルや検査前の処置

    • はじめに

      先輩「●●くん!ちょっとナースステーションにもどってきて」 私「はい、なんでしょうか」 先輩「Aさんの洗髪はどうなってる?」 私「忘れてました。すぐやります」 先輩「そのまえに採血やらなきゃだめでしょ」 私「そっちからやります。まだ自立になってないんで一緒に来てもらえますか?」 先輩「え?まだ自立じゃないの?そういうことは朝の打ち合わせのときに言ってくれないと、こっちだって時間作れないんだけど」 新人の私は、先輩から言われるがまま動くことに精一杯で、何をしたらいいのかを考え

      • 12元気な人は必ずといっていいほど散歩を続けている

        厚生労働省の『健康日本21』によると、運動をしている人は、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、結腸がんなどになる確率が低くなるそうです。そして「運動の強さ✗運動した時間」が大きければ大きいほど、病気を予防する効果が強くなり、こころの健康が保たれ生活の質も上がります。 また、体を動かす習慣がある人には不眠が少ないことが分かっています。「習慣」と書いたように一回かぎりではなく続けることが大切です。これだけで寝付きがよくなったり、より深く眠れるようになったりします。 入院中も例外ではあり

        • 11 昼寝をしないためには、食事はゆっくり、野菜を先に。

          「昼寝をしてしまったせいか、夜に眠れない」 「どうしても昼に眠ってしまう」 そんな体験をしたことがありませんか。夜以外で眠気が強くなるのは、なんといっても食後です。とくに昼食を摂ったあとはほとんどの人が、眠っていたり横になったりしています。むしろ、患者さんが身体を起こしているのを見ると、看護師が驚いてしまうくらいです。 食後に眠くなる理由には諸説ありますが、その中でも私が実際にやって効果を感じた「がまんしない昼寝の防止対策」について書いてみようと思います。 食事は野菜

        01 ワークシートは第二の頭脳

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        記事

          10映画を見ながらいびきにイライラする

          リラックスできる音を聴く私たちは同時に二つのことはできません。たとえば感動の涙を流すほど映画に熱中しながら、となりで寝ている人のいびきにイライラすることはないはずです。もちろん、エピソードが一段落したところで、それまでに気にならなかったいびきが突然、聞こえてくることもあります。けれども、クライマックスのシーンが来れば、自然と映画に集中するようになります。 ただし「それならば、眠れないときには映画を観ればいい!」と考えるのは早計です。なぜならば、明るい画面を2時間ものあいだ見

          10映画を見ながらいびきにイライラする

          09お気に入りの耳せんをつけてみる

          耳せんをつけるのは抵抗があるすでに書いたように、希望に反して、部屋の移動や睡眠薬の服用ができないこともあるでしょう。そんなときにおすすめしたいのが、耳せんです。ただし、注意点があります。それは「入院する前に試しておく」ことです。 「同じ部屋の人のいびきで眠れない」と相談を受けて、私が耳せんを勧めても、ほとんどの患者さんはつけようとしません。理由を聞くと「つけたことがないから」「いびきをかいているのは向こうなのになぜ私が」「違和感がいや」などと言います。 耳せんをつけようと

          09お気に入りの耳せんをつけてみる

          08いびきで眠れなくても大丈夫

          入院すると、家では聞こえなかったさまざまな音が聞こえてきます。医療機器のノイズ、他人のいびき、引き出しの音、看護師と患者さんが話す声。もしも、自宅で嫌な音が聞こえたら、なんとかして欲しいと家族に言えますが、入院中はなかなかそうもいきません。 音の中でも、いびきがうるさくて眠れないという訴えは多く、廊下まで響きわたるくらい音が大きな音を立てる人もいます。病院によっては、大いびきをかく人と難聴の人が同じ部屋になるように配慮することもありますが、そのような対応も完璧ではありません

          08いびきで眠れなくても大丈夫

          07入院生活には独特のルールがある

          ここまでは、おもに入院するにあたっての心がまえについて書いてきました。ここからは、実際に入院してからのルールと、そのつき合い方を見ていきましょう。 もちろん、ルールなど知らなくても安心して過ごせるのが病院です。しかし、自宅での生活とは違うところも多く、事前に準備を行なっておくに越したことはありません。それにもかかわらず、これらについて詳しく説明してもらえるタイミングは、たいてい入院する当日になります。 たとえば、入院中にインターネットを使いたいと思い、モバイルWi-Fiル

          07入院生活には独特のルールがある

          06医療は助け合い

          2007年に公開されたマイケル・ムーア監督の『シッコ』という映画では、事故で2本の指を切断してしまった男性が、手術費用として薬指は12000ドル、中指は60000ドルが、それぞれかかると言われ、中指をあきらめて薬指だけを手術した話が出てきます。 日本に住んでいれば、もっと少ない負担で両方の指を治療してしてもらえます。なぜならば、この国には国民皆保険制度という、みんなで出し合ったお金で、医療者が雇われたり、薬代や手術代が払われたりする制度があるからです。これは、健康な人が、病

          06医療は助け合い

          05セルフケアは家族のケア

          「たばこをやめるように、看護師さんからもよーく言って下さい」 心筋梗塞の治療後に、患者さんのパートナーからこのように頼まれることがあります。私は患者さんに、たばこを吸っている期間や本数、たばこに対する思いなどについてひとしきり話を聞いたあと、決まってこうたずねます。 「たばこを吸うことは、将来面倒を見てくれる方とお話して決めていますか」 すると、患者さんは視線をそらし、力なく「いいえ」と、パートナーは前のめりになって、語気を強めて「ほら、だからやめないとって言ってるのに

          05セルフケアは家族のケア

          04余裕があるときは家族に協力する

          「余裕があるときは家族に協力する」というのは、単に困っている人を助けましょうという自己犠牲のススメではありません。たとえば、いつもは家族がやってくれる洗濯などの、ふだん自分はやらないことも、余裕があるときに協力することで、さまざまなことがうまく回りだすということです。 洗濯を手伝いたいときは、まず相手と「今日は体調が良いし時間もあるから、ぜひ洗濯を協力させてほしい」などとコミュニケーションを取ると思います。これによって、互いに自分の体調を伝え合えたり、洗濯の仕方を教えてくえ

          04余裕があるときは家族に協力する

          03病気が怖いときは助けを求める

          先に病気は怖くないと書きましたが、「病気のまっただ中にいるとき」には、怖くないという説明ではとうてい納得できないし、いま目の前にある辛さをどうにかしてほしいと思うものです。 目の前にある辛さがどのようなものかを見ていくと、まず、私たちはショックな出来事に遭遇したときには、「衝撃」を受けて混乱し、状況をすぐには理解できません。そして、その状況が受け入れ難いことだとわかると、「そんなことがあるはずない」などと「否定」したり、周囲に当たり散らしたりする人もいます。次に、現実に直面

          03病気が怖いときは助けを求める

          01 はじめに

          あなたは入院が怖いですか? この質問に「まったく怖くない」と答えられる人は、そう多くないと思います。看護師の私でさえ自分が入院したときには、仕事が続けられなくなり、将来が閉ざされるのではないかという怖さを味わいました。でもこれだけは自信をもって言えます。 「入院にまつわる不安や恐怖を和らげる方法はあります!」 日本人は、生涯のあいだで10回くらい入院します。これは、患者調査の概況(厚生労働省、平成26年)のデータなどから計算できます。ところが、現場で入院する患者さんを見

          01 はじめに

          02病気は怖くない

          病気になると「仕事ができなくなるのではないかと不安」「手足が動かなくなるのではないかと思うと怖い」など、いろいろ悪いことを考えてしまいがちです。 でも、いまはとても恵まれた時代で、 ・病気になった → 病院で治療が受けられます。 ・お金がない → 生活保護では医療費が無料です。 ・痛い → 痛み止めの薬があります。 驚くほどいろいろな制度があります。 そうはいっても、この説明だけで不安がすべて晴れることはないでしょう。そこで、20代で交通事故によって首から下が動かなく

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