04余裕があるときは家族に協力する
「余裕があるときは家族に協力する」というのは、単に困っている人を助けましょうという自己犠牲のススメではありません。たとえば、いつもは家族がやってくれる洗濯などの、ふだん自分はやらないことも、余裕があるときに協力することで、さまざまなことがうまく回りだすということです。
洗濯を手伝いたいときは、まず相手と「今日は体調が良いし時間もあるから、ぜひ洗濯を協力させてほしい」などとコミュニケーションを取ると思います。これによって、互いに自分の体調を伝え合えたり、洗濯の仕方を教えてくえてもらったりできます。
このように、家族が協力することは、それぞれの心身の状態や予定、そして生活がどう回っているかを知る手がかりになります。そして、相手についてわかりあうことは、お互いを思う気持ちが生まれるきっかけになります。
けっして、いい人になる必要はありません。身近な人が目の回るような忙しさで、朝から晩まで座る暇もないということを知れば、自然と手伝ってあげたくなるでしょう。
ところが、そういう状況に無関心でいると「料理や洗濯は家族の仕事だ」などと思ってしまい「らくだ色のシャツはまだ乾いてないのか」とか「ちょっと味付けが薄いな」などの文句が出てくることもあるのではないでしょうか。
看護師の私がこんなことを言うのには理由があります。
私が看護師としていつも願っているのは「病気に邪魔されることなく、みんなに幸せに暮らしてほしい」ということです。
ところが、患者さんを見ていると、病気や入院をきっかけに家族関係が悪くなってしまうことが少なくありません。話をよく聞いてみると、もともと家族の仲が良いとはいえず、病気や入院をきっかけに不満が噴出してしまっているようなのです。
感謝や協力は、家族の緊張をほぐしてくれて、自分だけでなくみんなに肩肘を張らない楽な生活をもたらしてくれます。
高齢の夫婦で二人暮らしをしていて、妻が入院してしまい、夫には時間も体力もあるのに家事ができず、家族を呼んで世話をもらっているケースをときどき目にします。これはこれで素晴らしい家族愛だと思います。
ただし、家族の誰かに頼ろうとすると、その人だけに負担が集中してしまうこともあります。サポートしてくれる人が遠方に住んでいたり、仕事で忙しかったりする場合、思うように協力が得られずに、生活が立ち行かなくなることもあるでしょう。
しかし、ふだんから協力し合って暮らしていれば、家事は一人でもできるようになります。たとえ家事を担当していたパートナーが病気で入院しても「家のことは心配しなくていいよ」と声をかけて安心させることができるのです。
じぶんで料理をするようになれば、いつもパートナーに任せていた買い物にも一緒に行って食材を選びたくなるかもしれません。自分で洗濯をするようになれば、脱ぎっぱなしだった衣類を、自然とかたづけられるようになるかもしれません。自分で掃除をするようになれば、トイレは座って使ってほしいと言われていた意味が理解できるかもしれません。
自分が独身のときはあたりまえにやっていたことも、結婚して長いあいだ他人に頼り切っていると、いつのまにか一人では手に負えなくなったり、相手の気持ちがわかりづらくなったりします。先に述べた「心の底からの感謝を述べる」ことが難しく感じる場合は、他人任せにしてしまっていることはないか、自分にできそうなことはないか考えてみてください。そして、思い当たるものが見つかったら協力してやってみてください。自然と「ありがとう」と言いたい気持ちが生まれると思います。
新しいことをやるときには誰もが抵抗を感じるものです。でも、そのチャレンジによって自分や家族が楽になれるとしたらどうでしょう。生き方や考え方を変える必要はありません。表面的な行動を変えるだけでいいのです。
そして、これにはひとつのコツがあります。「自分から始める」ということです。
少しずつでも、身近な人に「協力」することができるようになれば、家族の病気や入院に動揺することが少なくなるだけでなく、ずいぶんと楽に生きられるようになります。「いまさら、そんなふうには変われない」と思うかもしれませんが、少なくとも看護師としての私には、家族と協力し合える人は、とても穏やかで幸せそうに見えるのです。
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