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10映画を見ながらいびきにイライラする

リラックスできる音を聴く

私たちは同時に二つのことはできません。たとえば感動の涙を流すほど映画に熱中しながら、となりで寝ている人のいびきにイライラすることはないはずです。もちろん、エピソードが一段落したところで、それまでに気にならなかったいびきが突然、聞こえてくることもあります。けれども、クライマックスのシーンが来れば、自然と映画に集中するようになります。

ただし「それならば、眠れないときには映画を観ればいい!」と考えるのは早計です。なぜならば、明るい画面を2時間ものあいだ見続けたり、映画の内容に興奮したりすると、眠れなくなることがあるからです。

そこで私がおすすめしたいのは、目を使わず別のことに集中できる「音」を聴くことです。好きな音楽や、お笑い芸人のコント、ラジオ番組など、リラックスできるものならなんでも構いません。聴きたい音に注意が向くことで、周囲の騒音から気がそれて、次第に気持ちも落ち着いてきます。

イヤホンを使うときは、音が漏れていないかを確認しておいてください。私は消灯したあとに、お笑い芸人のコントを一人で聞いていたつもりが、ワイヤレスイヤホンとスマートフォンが接続されておらず、部屋中に大きな音を響かせてしまったことがありました。

さいわい、すぐに音が漏れていることに気づき、他の人を起こす前に再生を止めることができました。イヤホンだからといって油断は禁物です。身につける前に必ず小さな音で音楽などを流してみて、スマートフォンの本体からではなくイヤホンから聞こえているかどうかを確認してください。

ラジオ体操くらい気軽な瞑想

眠れないときには、ぜひ瞑想にもチャレンジしてみてください。

厚生労働省の『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』のウェブページには

「瞑想は一般的に、健康的な人には安全であるとされています」
「不安感や抑うつ感の症状を和らげ、不眠症患者にも効果がある場合があります」

と書かれており、瞑想は医療の現場でも治療法として活用されるようになってきています。

私がおすすめするのは、寝床についた状態で「鼻から大きく息を吸ってください」「手をぎゅっと握って、すっと力を抜いてください」などの音声のとおりに、呼吸をしたり、体に力を入れたり抜いたりする方法です。ラジオ体操のように、言われたことをやるだけで、特別な技術を身につけたり、覚えたりする必要はまったくありません。

ユーチューブなどの動画サイトで、「瞑想」「誘導」「睡眠」の3つのキーワードを入れて探してみてください。たとえば10分から20分ほどの長さで再生数の多いものを選んで、事前に一度、見ておきます。抵抗がなく、安心して取り組めそうな動画が見つかったら、夜に試してみましょう。

ラジオ番組のようにただ音を聴くよりも、呼吸をしたり、力を入れたり抜いたりして、体も使うほうが、自然と集中できて、まわりの音が気にならなくなることがわかります。私の場合はたいてい、瞑想の途中でリラックスして眠りについてしまいます。ただ、寝るために瞑想を使うのはの本来の目的とは違うかもしれません。そのあたりの説明は、専門の本にゆずります。

ひとつ注意してほしいのは、サービスによっては無料の会員の場合、途中で広告が入ることがある点です。なかには、見ている動画よりもはるかに大音量のものもあります。瞑想ですっかりリラックスして眠りにつきそうなときに、突然、そんなものが流れてきたらびっくりして目が覚めてしまうでしょう。
もし、眠れないときはこの瞑想法を試してみたいと思ったら、入院中だけでも有料会員になることをおすすめします。もちろん、私もそんなピンチに備えて月額1180円のユーチューブプレミアムに加入しています。


がまんするにもコツがある

いろいろな策を練っても眠れずに、がまんをすることになってしまっても、大きないびきを、まるで滝行のように耐えながら聞き続ける必要はありません。

「今日はなんか眠れないな」
「そういえば、となりの人のいびきがうるさい気がする」
「そうか、私はそのせいで眠れないのか」
「大部屋なのに、こんなに大きないびきをかくとは、なんて迷惑な人だ」
「まわりに迷惑をかけながら、自分だけぐっすり眠っているのは納得がいかない。なんで私はこんな目に遭わなければならないんだ」

ここまで気持ちがエスカレートすると、となりの人のいびきに自分の考えまでがプラスされ、まるで轟音が自分に襲いかかってくるように感じます。そして最後には、音の問題を離れて、今の状況に納得できるかどうかの問題になっていきます。大げさだと思うかもしれませんが、これくらい思い詰める人も少なくないのです。

このように、いつもはすぐに眠れているのに、他人のいびきで邪魔されてしまったと感じるのはつらいことです。そんな悩みを聞くと「心も体も疲れているのだから、そんなときくらい悩みと正面から戦わずに、ときには自分を逃がしてあげてもいいのに」と思うことがあります。

たとえば、昼間に聞こえてくる会話の中で、いびきをかく人がもうすぐ退院だとわかったとします。そうすれば「うるさいのもあと数日だし、まあいいか」と思えます。いびきの主に手術があったりして部屋が変わることもあります。先が見えていると思うだけで、気持ちもかなり楽になるはずです。

あるいは、消灯後すぐにいびきが聞こえてきたとします。そこで、無理に寝ようとせず、自然と目を閉じてしまうまでスマートフォンを使ったり、読書灯をつけて本を読んだりしてみると、意外とすぐに眠れることもあります。

隣の方へ光が漏れないように配慮してもらえれば、つけっぱなしも気にしなくて大丈夫です。看護師が巡回に来たときに、そっと電気を消してくれます。

また、夜の9時に電気が消える病院がほとんどですが、これは「9時になったら眠りましょう」というわけではありません。明かりや音などで他の人に迷惑をかけなければ、起きていてもいいのです。

目の前の現実を真正面から受け止めて、自分の中ですべて消化する必要はありません。目先の考え方を少し変えたり、気持ちをそらせたりすることで「がまん」できる程度の問題にしてしまうのです。

一人で悩まずに相談してみる

眠れずに辛いときには、一人で悩まずに看護師に相談することも考えてみてください。いびきの問題は解決しないかもしれませんが、誰かに話を聞いてもらうだけでも、心は落ち着くものです。

看護師は一日中あなたを看てくれています。なかには、なぜ眠れないのかの原因に気づいている人がいるかもしれないし、私も、できるかぎり患者さんと一緒に、どうすれば快適に過ごせるか考えたいと思っているひとりです。

私が出会った患者さんの中には、コーヒーを1日に1リットルくらい飲む人もいました。本人としてはすっかり習慣になっていて、それが不眠につながっているとは思っていなかったようです。

このように、眠れない原因は人によってさまざまで、自分や家族では気づけないこともあります。また、歳を重ねると、そもそも眠りが浅くなったり、睡眠時間が短くなったりもします。

他人に相談することは、自分を客観的に見直すきっかけにもなります。ベテラン看護師なら、なんらかの知恵をもっていて、適切なアドバイスをくれるかもしれません。ぜひ、ひとりで悩まずに私たちと一緒に考えてみましょう!


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