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08いびきで眠れなくても大丈夫

入院すると、家では聞こえなかったさまざまな音が聞こえてきます。医療機器のノイズ、他人のいびき、引き出しの音、看護師と患者さんが話す声。もしも、自宅で嫌な音が聞こえたら、なんとかして欲しいと家族に言えますが、入院中はなかなかそうもいきません。

音の中でも、いびきがうるさくて眠れないという訴えは多く、廊下まで響きわたるくらい音が大きな音を立てる人もいます。病院によっては、大いびきをかく人と難聴の人が同じ部屋になるように配慮することもありますが、そのような対応も完璧ではありません。

病気になって、いろいろなストレスを感じていると、ふだん以上にまわりの音に敏感になることがあります。看護師として働く中で「同じ部屋の人のいびきで眠れない」という相談は数え切れないほど受けてきました。そして、入院中は自分でも体験しました。

これからとっておきの対策を紹介しますので、どうぞ安心な夜を迎えてください。

部屋を移してほしいと頼む

誰がどの部屋になるかは「足が悪い人はトイレから近い部屋」「手術の後で観察が行き届くようにナースステーションから近い部屋」など、療養や治療の必要から決まります。そのため、部屋を移してほしいと頼んでも移れない場合があります。また、病室が空いていなかったり、人手がたりなかったりすることもあります。

ただそのような場合でも、有料の個室が空いていれば、部屋を移動できるかもしれません。苦痛が大きいときは、担当の看護師などに聞いてみる価値はあります。個室の使用料は病院によって違いますが、おおむね1日あたり1万円から2万円くらいの追加料金が相場です。やはり有料の個室も、療養や治療上の理由で大部屋に入れない人が優先になります。

さらに、病院によっては、特別室が設けられている場合もあります。こちらは、一日あたり数万円から30万円ほどの追加料金がかかります。なかには高額なスイートルームを設けている病院もありますが、いびきだけの理由でそこまでゴージャスな病室を希望する人は見たことがありません。

なお、これらの個室の料金は「差額ベッド代」と呼ばれていて、公的な医療保険の適用外になります。音に敏感だったり、周りが気になったり、自分が神経質だと感じている人は、あらかじめ民間の医療保険に加入し、入院給付金の日額の設定を多めにしておくことをおすすめします。

参考までに「差額ベット代」は、個室の場合だけでなく、大部屋でも設定されていたり、同じ大部屋のなかでも窓側には設定されていたりすることがあります。

睡眠薬を出してほしいと頼む

いびきが原因で眠れないときに、医療者の側から積極的に睡眠薬を勧められることはあまりないと思います。もちろん、患者さんからの希望があれば、処方されることはあります。

睡眠薬の中には依存を起こしてしまうものがあり、服用にあたっては注意が必要です。入院中に睡眠薬を飲み始め、それ以来やめられなくなる人を、私はたびたび目にしてきました。

依存症になると、退院して自宅に帰り、快適な睡眠環境を取り戻したにもかかわらず、薬なしには眠れなくなってしまいます。だからといって、自分の判断で急に飲むのをやめてしまうと、離脱症状が起こって、ますます睡眠薬がやめられなくなることがあります。離脱症状は、眠れないだけでなく、不安や緊張、手の震え、吐き気、頭痛などさまざまで、その症状が長引くこともあります。もし、服用をやめたい場合は、かならず医師に相談しましょう。

また、夜間にトイレに起きることがある人は、薬の作用でフラフラして転んでしまうこともあります。私が看ていた患者さんの中には、尿意に気づかずに失禁してしまう人もいました。

こういった話は、実際に眠れない状況になってから聞いても、なかなか納得できません。なぜなら、不眠から抜け出したいという気持ちが強くなっていることで「医療者がいろいろな理由をつけて潰しにかかってくる」と感じてしまうからです。

将来、入院して睡眠薬を飲みたいと思ったり、医療者から似たような説明を受けたりした場合は、我に返ってこの話を思い出してください。そして、次の章で書く対策も併せて試してみてください。

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