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06医療は助け合い

2007年に公開されたマイケル・ムーア監督の『シッコ』という映画では、事故で2本の指を切断してしまった男性が、手術費用として薬指は12000ドル、中指は60000ドルが、それぞれかかると言われ、中指をあきらめて薬指だけを手術した話が出てきます。

日本に住んでいれば、もっと少ない負担で両方の指を治療してしてもらえます。なぜならば、この国には国民皆保険制度という、みんなで出し合ったお金で、医療者が雇われたり、薬代や手術代が払われたりする制度があるからです。これは、健康な人が、病気やけがで困っている人を助ける仕組みと見ることもできます。

この「助け合いのつながり」を忘れないようにしていると、自然と感謝の気持ちが生まれてきます。少々のことがあっても、人や自分や目の前の状況を許せる余裕も出てきます。実際に、感謝の言葉を発している患者さんのほうが、楽に入院生活を送っているように見えます。たとえ症状が重かったとしてもです。

入院中、何かにイライラすることもあるでしょう。医療者が失礼な対応をしたように感じたり、治療がうまくいっていないように感じたりと、いろいろな理由があると思います。病気を抱えているうえに、いら立ちまで感じるのはとても辛いことです。それを医療者にぶつけてもらってもいいと、私は思っています。穏やかに相談したり、怒ってみたり、自分なりの伝え方でやってみてください。

ただ、何かに不満を感じても我慢してしまうタイプの人は、先ほどの「助け合いのつながり」を意識してみてください。医療者が失礼な対応をしたように感じ、怒りを覚えたら「みんなの助け合いのお金でこんな人を雇ったのか。でも、よく考えてみると、この人は私の治療を手伝ってくれている。たまたま今回だけなのかもしれない。それに、この人だって税金を払っていて、私の治療費を支えてくれている」と思えるかもしれません。

治療がうまくいっていないように思えて、焦りや不安を感じていたら「みんなの助けのおかげで、わたしは見捨てられることなく治療を受けられているんだ。医療者がそばにいて支えてくれているんだ」と思えるかもしれません。

入院中に希望をもてなくなったら「誰かが自分のためにがんばってくれている。私は助けてもらう価値のある人間なんだ」と思ってみてください。これは大きな救いになります。医療者はけっしてあきらめることはありません。入院とは、あらゆる病気やけがの知識を持ち、なんとしてもあなたを助けようとする人に見守られながら、ゆっくりと休息できる機会です。

「こんなにありがたいことがあるだろうか」自分が入院したとき、私は心からそう思いました。

一人で病気に立ち向かっていると、心が折れてしまいそうになることもあると思います。そんなときは、医療者の提案を受け入れて、怠けたい気持ちを少しだけ治療に向けて、食事を摂ったり薬を飲んだり、リハビリをしたりして、医療者とともに療養生活を歩んでいくのがオススメです。これさえできれば、病気のことを理解してくれている医療者が、自分の頑張りを見守ってくれていて、認めてくれていて、応援してくれていると思えるようになります。

この医療者による応援を、ぜひ一度、実感してみてください。それは、入院する人にいつでも開放されていて、非常にありがたくて、嬉しくて、幸せなものです。

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