カバ

ピラミッドナイト 15

リカから、「アダムとカレの友人達とピラミッドに行くから、来ない?」とお誘いがきた。

外が、だいぶ寒くなって来て、家ですでにぬくぬくしていた私は、家を出る直前になって、今日の約束した事を後悔したけれど、もっとこれから、寒くなるニューヨークの冬を想像して、巣穴から、おもいきって出た。

ピラミッドは、イーストビレッジにあり、入り口には大きい黒人のバウンサーがいて、入り口を通過すると、右側にあるバーカウンターが奥に向かって延びていて、奥のフロアではDJがプレイしていて、踊れる、

昔からある小さいクラブで、常に80年代〜90年代の曲がかかっている、
シンディーローパーや、リック アストリー、デュランデュラン、の懐かしい曲が流れて、リクエストもできる。

私は遅刻魔で、いつも、なんとか多めにみてくれている親友達には、本当に感謝している。(この場を借りて。)

約束の時間をかなり過ぎて、お店に入って行くと、最初に、カウンターにもたれるながらビールを飲むノアとウィル、2人の前には楽しそうに話すアダムが見えた、3人は談笑している。

アダムに、最初に「久しぶりー元気?」と挨拶して、横からノアが、カオリ!久しぶりって!ハイしてきて、ウィルは入り口から入って来た私を見ていたのに、さっきまで見ていなかったはずの携帯をチェックしている。わざとだ、
ウィルは、こちらから挨拶しないとな男で、いつもカッコつけている。だから、大人な私は、にっこりしながら自分から挨拶した、ウィルとハグが終わって、彼が「最後に会ったのいつだっけ?」と言うから、「半年前かな?」と答えた、

3人とも弁護士。ニューヨークには様々なタイプの弁護士がいる。

ノア、39歳、見た目は、ちょっと勝新太郎みたいな顔、ブラウンヘア、ぎょろっとした目で、話しやすくて、犬みたいに人懐っこい。

以前、みんなで訪問した彼の部屋は、自分テイストに改装済みでブラウンや黒を基調とした家具や壁紙で揃えられていた。プロのパーソナル インテリアデザイナーを雇いつつも、随所に彼のテイストが見える、独身貴族をまだ貫きますよという姿勢がうかがえるエロい部屋で、セクシーな気分の夜には向いているけど、朝のさわやかな朝日には不向きな、少しtackyタッキー(ケバい)な部屋だった。

彼は、会う度に、(たまにしか会わないけど)
毎回、違う女性を連れてくるタイプで、モデルみたいなガールフレンドを探しているらしい。一度、道で、足が痛くなった私とエリザベスに、すごい短い距離なのにタクシーに乗せてくれた、彼は、そいうい所がモテるんだろうなと思う。今日もピラミッドに来る前に、最近出会った女の子との1回目ディナーデートを済ませて、一緒にきたらしい。


ウィルは、40歳、ハーバード卒、身長も高く、Marky Mark(Calvin Kleinのボクサーパンツが大流行していた時のモデル、最近では映画テッドに出演のマーク ウォールバーグ)系の顔立ちで、Sohoに住んでいる、色々かね揃えたイケメンだ、その上ものすごくカッコつけていて、ナルシスト。私個人としては、話しが盛り上がった事が一度も無いけど外見でモテて来たタイプだから努力がいらないんだろう。口数はすくない。以前、New year's eveのパーティーで、列ができてるんじゃないかってほど、女性達が次から次へと彼に話しかけていた。女性関係や私生活が見えないミステリアスセクシー男。彼は、確かにこちらから一度お願いしたいレベルHOTだ。笑


アダムは、38歳、色んな事を知っていて、面白くて、ダンスフロアでも、もの凄く楽しそうに、長めの髪を振り乱し一心不乱に歌いながら、踊る、エンターテイナータイプだ。アメリカ映画のスクール オブ ロックのジャック ブラックと、The Breakfast Clubに出てくる、ジョン ベンダー(長髪で手袋の不良役)を彷彿させる。彼は、私が発案した、PMSキャップ(生理前のイラついている時期に会社で被りたい「私は、今PMS期間中ですので話しかけないでください。」というメッセージがPMSの三文字に込められた帽子)のアイデアをえらく気に入ってくれいる。たまに会うと、村上春樹の話しができて嬉しい。

そして、いつもリカの自慢を私にしてくる。それなら、2人は戻れば良いのにー。じれったい。彼は、リカの事を未だに好きなのに、その決断を先延ばしにしている様にしか思えない。


私は、奥のフロアに行く前に、ロングアイランドアイスティーを買って、リカを探した、フロアは狭いからすぐにみつかる、普段、ロングアイランドアイスティーなんて、めったに飲まないけど、リカがもう先に酔っぱらっているので、強いお酒を飲んで、追いつこうと思った。

ここに集まる人々は独特で、フロアには、ゲイのカップル、インド人のグループ、パンクっぽい女の子、大きいハレーが似合うバイカー、どんなクラウドか一概には説明出来ない。 

私の目の前にいる、アーノルド シュワルツェネッガー似の白地に黒いヴェルサーチ風の柄のロングTシャツを着た、ムキムキで、いかつい男性が。一緒に踊ろうとかわいらしく手招きしてくる。この人と私、ケンシロウとしずかちゃんの共演と想像して頂けるとわかりやすい。でも基本的に一緒に踊ってもみんなしつこくないからいい。アーハの『Take on Me』で少しシュワちゃんと踊り、くるくる回っていると、 

リカが、「ね、横で密着して踊ってるカップルの女の子、ノアが連れて来た子なんだけど、、」 

そのモデルみたいな体形の、光沢のある白っぽいスリップドレスを着たかわいい子は、彼女より20cmくらい小さい真っ黒の服の男性とぴったり密着し、腰をふりふり、ノリノリで踊っている、 

背後からノアが現れて、まずいと思ったリカが、その子の腕を引っ張ったが離れない、ノアが引っ張っても離れない。さすがにその子と一緒に踊っている、黒服男性が怒り始め、3人は外に出た。

ウィルと、アダムが 「3人が外で言い合いになってるよ〜」と言いながら、フロアに、来て踊り始めた。 

ウィルは明日、自分の40歳の誕生日会を盛大に開く、全部自費で友人達を招待するらしい。リカが「1名600ドルだって!」と言って、

私は 「Ha! 何人招待するんだろう?」と、なんかニューヨークっぽいバブリーさで、少し笑った。

リカが 「アダムが、ウィルの明日の誕生日会の為に、プレゼントを用意したらしいんだけど、アジア女性が好きなウィルの為に、アジア人のエロ本を探したんだけど、なかなか見つからなくて、でも、他の友達に聞いたら、俺どこで手に入るか知ってるよ、って言われて、その友達に売ってもらったらしい。あと、もう一つのプレゼントは、ナルシストだから手鏡を買ってあげたんだって。」笑

少し酔って来て、2杯目を買いにバーに行くと、目が合ったテキサスから来たという革ジャンのバイカー風の男性が突然「俺の事好きか?」って聞いてきて、「は!今、会ったからわからないよ、」って答えてるのに、勝手に私の髪の毛を触ってきた、毛先の方だし、ま、またシャンプーすればいっか、と30秒くらい触らせてあげたら、サザンカンフォートを1杯おごってくれた。そして、そんな私とバイカーの様子を、アダムとウィルが向こうの方から見て笑っている。

ポリスの『Every Breath You Take』が聞こえてきて、バーにいたアダムが 「リカが奥で、一人で踊っているとレイピストやweirdo(変態)に口説かれていないか心配だから、」と言って、フロアに酔っぱらっているリカの様子を見に行った、(あぁー、アダムの行動が、『Every Breath You Take 』に合いすぎてて、スティングの声が切なくフロアに響いて、私は、キューンとジーンの真ん中あたりのフィーリングを味合わせてもらった。)

アダムは、リカが好きなら戻ればいいのに。。男と女って、、、複雑だな。

“切ない”っていう気分も乙な物だけどね。

Erasureの 『A little respect』 が流れて、ウィルと私も踊った、かっこつけウィルも今日は少し踊っている。私もアジア人だけど、ウィルのアジア専門センサーに私は引っかかっていない様だ、タイプじゃないんだろうな。ま、いいけどさ。

ノアとモデルみたいなあの女の子、アダムとリカ、ウィルと私。男3人、女3人、いたけれど。誰もハマらないピラミッドの夜だった。


*物語中に掲載されたお店

The Pyramid Club 101 Avenue A, New York, NY 10009 アメリカ合衆国


ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?