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平野啓一郎
2016年1月20日 10:00
コンサート会場に洋子がいることに気がついたのは、第一部の最後の曲を弾き終わった時だった。予期せぬ喝采に、立ち上がって一礼しようとした時、彼は、一階席の奥の暗がりに彼女が座っているのを目にしたのだった。一瞬、時が止まったかのようにその場に立ち尽くしてしまった。そして、再び舞台に立った時、彼は最初に、彼女がそこいることを確かめたのだった。 新しいバッハは、誰よりも彼女に聴いてほしかった。その喜び
2015年12月9日 10:00
自分の音楽を待っていてくれた人々には、強く心を動かされた。そして、自分の音楽の場所を、もう少しで見出せそうな気がしていた。復帰後は、まだ一度もリサイタルを行っておらず、コンサートでも決してソロでは演奏しなかった。 彼自身も武知の存在を支えとしていた。自分のそうした心境の変化には感慨を抱いたが、それも、武知の実直な演奏家としての姿勢に影響を受けているように感じた。 公演のプログラムは、ジュ
2015年9月16日 18:00
『マチネの終わりに』小説内では、クラシックの名曲からポップスまでさまざまな楽曲が登場します。物語と一緒に、お楽しみいただければ幸いです。(スタッフ)◆アランフェス協奏曲(ロドリーゴ)◆セイス・ポル・デレーチョ(ラウロ)◆間奏曲第2番イ長調Op.118-2(ブラームス)◆武満 徹編曲「ギターのための12の歌」より《イエスタデイ》(レノン&マッカートニー)◆明日に架ける橋(サイモン