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愛おしいホームドラマ『最後から二番目の恋』をおススメする理由(ネタバレあり)

古都鎌倉を舞台とした日常ドラマ

三十年以上活躍なさっている岡田恵和さんの脚本です。古い作品だとイグアナの娘ビーチボーイズなどで有名です。近年だとひよっこが有名ですかね。個人的にはそれらのドラマを凌ぐ代表作だと思っています。

古都鎌倉を舞台に(最寄り駅は極楽寺)都会の生活に疲れた吉野千明が古民家で暮らし始めます。隣人である長倉家と親交を始め、それをきっかけに連鎖反応のように小さなできごとが起きていきます。

いま、再放送をやっている最中

この記事を投稿した現在、最後から二番目の恋と、続・最後から二番目の恋を立て続けに再放送しているところです。

ちょうど、大河ドラマで鎌倉殿の十三人を放送中なので鎌倉にスポットがあたっているからか、中井貴一主演の映画大河への道が五月二十日から公開されているからなのか、いずれにせよラッキーです。

中年男女の口喧嘩を楽しむドラマ

小泉今日子中井貴一のダブル主演といっていいドラマなんですが、中井演じる長倉和平さん(五十才)と小泉演じる千明(四十五才)は顔を合わせるたびに口喧嘩みたくなります。この二人、別に付き合っているわけではないし甘酸っぱい雰囲気を醸し出しているわけでもない(それどころか、千明は和平の弟である真平とつきあっています)ただの隣人のはずです。

なのに駅でばったり会い、家までの帰り道のあいだ、話は盛り上がり、やがて言い合いになります。この会話がコミカルで楽しみポイントになっていました。その言い合いも険悪な感じにまではならず(私たち、いつもこうなっちゃいますよね、と二人とも自覚はしている)ちょっと楽し気ですらあるので、視聴者的にも顔がほっこりし、もっとやれやれと期待してしまいます。

他の脚本家の作品ですが、私は『結婚できない男』も好きです。こちらもまた阿部寛夏川結衣の口喧嘩を楽しむドラマです。思うに私は未交際の中年男女の口喧嘩が好きなんだろう。傍から見て、じゃれあいに見えるようなやつ。若者の男女だと些細なことから修復不可な喧嘩に発展しそうなので、大人の男女がいいんです。最終的には「ちょっとお互い、言いすぎましたよね」と収まるようなやつね。

日常ドラマにおける重い設定の扱い方

ドラマの合間合間に映る鎌倉の海は、荒れ狂う激しい海ではなく、いつも穏やかな波です。ドラマの展開もまた穏やかなものです。サスペンスやミステリー要素はおろか、タイトルに恋とついてはいるものの、燃え上がるような激しい恋情もありません。軽快な会話ややりとりを楽しむ日常ドラマといった内容なのですが、登場人物たちみんなが能天気に生きているわけではありません。

和平の妻は海で亡くなり、和平は海岸でゴミ拾いに携わるときに妻が好きだった桜貝を集めています。死因も気になりますし、和平の後悔などもじゅうぶんにドラマになりうりますが、そこはこの最後から二番目の恋というドラマの主題ではありません。

さらに和平の弟である真平(坂口憲二)は、体に爆弾を抱えています。少年時代に脳腫瘍を発症し、手術で切除したものの、もし再発をしたら助からないといわれています。それからはいつ死んでもいいように自分よりも他人のために生きるという人生観になってしまいます。

死亡フラグが存分に立っている……。

さて、死亡フラグがびんびんに立っている真平ですが、ネタバレになるのですが最後から二番目の恋では彼は死にません。病気の再発すらしません。

小泉今日子演じる千明はドラマのプロデューサーをやっているのですが、その制作会議でメタ的なやりとりがあります。こんな感じです。

脚本家のハルカ「殺しときますか。二番目の彼を。やっぱ泣きたいですからね。このあたりで」

千明「やめようよ。そういうの。好きじゃないんだ」

ハルカ「盛り上がると思うんですけどね。そうしないとなかなかメインの彼と結ばれないじゃないですか」

千明がかかわるドラマではそういうのがないと、周りのスタッフが説明する。

千明「ドラマでさ、病気とか死とかやろうとするとそれだけになっちゃうじゃん。重い病気だと誰だってつらく見えちゃうし。人の死はどうやったって悲しくなっちゃうでしょ。それ以外に描きようがなくなっちゃう。過去には人の死をテーマにした名作はいっぱいあるけど、私はいろんな人のいろんな気持ちをドラマにしたいわけ。だから恋愛ドラマをつくっている。恋愛っておかしいでしょ。恥ずかしいし、みっともないし、人間っぽいでしょ。滑稽で切なかったりするし。私はそういうのが好き。だから私のドラマでは安易に人を殺さないの

↑このくだり、脚本家としての岡田氏の理念があらわれていて、とても好きな箇所です。過去に原作付きの脚本を担当して、たくさんの人物を殺してきたと思います。原作なしのオリジナル作品でも、周りから殺せ殺せと煽られたこともあるんじゃないでしょうか。でもね、人が死ぬと悲しいんですよ。そんなのわかりきっていますよ。親しい人が亡くなったときを想像するだけで、そりゃ悲しくて泣きそうになります。

このドラマ、連続ドラマに珍しく、1シーズンまるまるの続編が作られた稀有な例です(けして単発の2時間SPなどではなく)

私はリアルタイム視聴ではなく友人に薦められてレンタルで借りたですが、好評だったのでしょう。もし視聴率や評判が悪ければ、真平が死ぬ展開もありえたのだろうか? そんなことも考えてしまいます。

続編では

これだけ感想を書いておきながら、恥ずかしながら私、続・最後から二番目の恋は未視聴です。なので今、毎日楽しみながら見ています。

続編では二年経過し、和平さんも千明も少し出世していて、お仕事要素が増えた感じがありますね。新キャラである千明の元カレ(加瀬亮)や和平の娘の彼氏のお色気母親(長谷川京子)などがどう絡むのか、気になるところです。


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